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大雪

朝起きたら一面の銀世界――って喜べるかあああっ!!
やめてくんない月曜日の朝っぱらから積雪とかやめてくんない!?
小学生なんかは走り回って喜んでましたが、どうしてやつらはすっ転ばないでいられるんだ?チャリで疾走してる強者もいたし……俺のバランス感覚が悪いだけ?雪の日にはいい思い出がありません。
今日も30分以上かけて延々駅まで歩きました。死ねよおおおおっ!!





『背徳の十字架〜罪の後先〜G』



「爆処理班を手配しろ。怪我人はいねえな?」
「はい、大丈夫です!」
「それじゃあ、六番隊はさっき渡したリストの家当たって、爆弾届いてないか確認しとけ」
「はい!」
テキパキと指示を出して現場の収集をつける土方をぼんやりと見つめながら、銀時はズルズルとその場に座り込んだ。目まぐるしい展開に思考がついて来ない。
不意に土方がこちらに戻って来た。目の前にしゃがみ込み、擦り傷や切り傷だらけの頬にそっと触れる。
「…………また怪我ぁしやがって、馬鹿」
「…………」
口唇が寄せられ、傷に舌が這った。ピリピリとした痛みが走る。
「神楽が目を覚ましたぜ」
「そうか……良かった。どうしてここが?」
爆発が起こってからにしては余りにも早い対応だ。土方は少し苦笑してから、
「決闘は昔から崖の上か波止場って相場が決まってんだよ。危ない刑事コロンボさんが言ってた」
「馬鹿……」
下らない話をしてこちらの気を紛らわせようとする土方に、銀時はゆるゆると緊張感が溶けて行くのを自覚した。田中にああ言ったものの、長引けば自分を保てていたかどうか自信がなかったのである。
「間に合って良かった……」
土方が銀時の両手を取り、そっと口付ける。そのまま引き寄せられてギュッと抱き締められた。
「お前が……復讐のために――自分のために田中を斬っちまってたら、帰らないつもりだったろ?……帰れない可能性もあったんだろうが」
「………………」
「そんなのは鬼の副長の俺の仕事だ。お前は……もう白夜叉じゃない」
「…………うん」
――こんなに優しい鬼がいるかよ……
そうは思っても、抱えた想いまで包み込んでくれる土方に甘える。過去の延長線上にある現在を、受け入れてくれるこの恋人の度量を改めて有り難いと思った。
「帰るぞ」
「うん」
手を引いて、立ち上がらせてくれる。
銀時はゆっくりと田中を見遣った。胴体と首とが離れ、四肢も満足にない。そうなってでも、現在に安寧を見つけられなかった彼をほんの少しだけ憐れに思った。
今もまだ――こうして闘い続ける彼らを見ると、銀時は哀しくなる。あの頃の焦燥を燻らせ続ける彼らに、どうして今を見つめることが出来ないのか、と叫びたくなる。
そんなことをしても、死んだ仲間が戻って来る訳ではない。失った何かが元通りになる訳ではない。ただ己の魂を疲弊させるだけなのに。
――きっと……あの人はそんなことを望んじゃいない……
そう気付くまでに随分遠回りして時間もかかってしまったけれど、自分はこの街に来たことで独りでなかったから良かったのだ、と銀時は思う。
今成していることが罪滅ぼしになるとは思っていない。けれど、誰かの何かの足しになればあの世で師と再会した時に笑って逢える気がしていた。
「…………」
不意にグッと肩を抱き寄せられた。見遣ると苦い表情の土方の顔。
「お前はああなるな」
「土方君……」
「俺はお前を斬るのはゴメン被る」
「…………うん」
大切にしよう。
今傍にいるみんなを。かけがえのない存在を。
そうすれば明日に繋がる何かが――あの頃とは違う光景が見えるはずだから。
願わくば、今も闘い続ける同朋たちがそんな何かを見つけることが出来ればいい。世界を変えるのは憎しみや怒りではない。それを罪だと言うのなら、甘んじて受ける。
市井に埋没したからこそ解る日常の尊さを、笑って過ごせる平穏の愛しさを、これからも大事に守って行きたい。
ゆっくりと踵を返し、恋人の背中に続く。いつもの世界に帰るのは『白夜叉』ではなく『万事屋坂田銀時』の笑みだった。



以上、完。



何て言うか、俺は所謂戦争を知らない世代なんで今更それをどうこう語るつもりはありませんが、途中棄権した形の銀ちゃんと、未だに幕府転覆を目論む高杉たちと、何が違うかを考えた時にやっぱり周りの人かなあ、と思いました。
高杉なんかは担ぎ上げられたまんまで、本人がそれを良しとしてるからいいんでしょうが、やっぱり銀ちゃんは江戸のかぶき街で出逢った人のおかげで自分の立ち位置とか今の自分が守りたいもの、ってものを見つけたんじゃないかと思います。
勿論、怒りや哀しみややるせなさやいろんなものが消えた訳ではないけど、昔のように『勝利のために何かを奪う』ことが今の選択肢にはないんじゃないかと思う。
田中の最期も散々な扱いで、神楽ちゃんにも痛い思いさせといて、この『白夜叉』から『万事屋』への移行と言うテーマが上手く表現出来たかは甚だ疑問ですが、駄文ながらも皆様の心に何か残せればいいなあと思います。

何とw(☆o◎)w

九州限定のお酒で『金しろ』と『銀しろ』と言うのが出来たらしくて、店頭に並んでポスターが貼ってありました。
…………買わなきゃ!!
いや、お酒飲めないんですが。
何かこう――誘われた気分です。貴方ならどうする〜♪って古いCMの歌が聞こえそうです。
だって金ちゃんと銀ちゃんだよ?しかも、下についてるのが「しろ」って、双子の息子かああああああっ!?って狂喜しましたからね、店頭で(お前馬鹿だろ)




『背徳の十字架〜罪の後先〜F』


※グロ表現あります。


「は……そりゃ残念だったな」
熱い空気が肌を舐める。
夜闇にも紅く炎が上がる様が映えた。すぐに真選組が駆け付けるだろう。それまでに、始末を着けねばならない。
「俺とヅラはな……高杉に『今度会ったら全力でぶった斬る』って宣言してあんだよ。アイツがこの世界を全てぶっ壊すつもりでいる以上、共に闘う日なんざ永久に来ねえ」
「どうかな……?」
「何?」
「アンタは――『坂田銀時』はそのつもりでも、『白夜叉』はそうじゃないかもしれない」
逆袈裟に斬り上げられる切っ先。弾いて、踏み込む。
かちっ!
――ここもか……!?
瞬間、上がる爆発。
田中は自ら埋めただけあって、地雷の位置を正確に把握していた。銀時が踏み込むその場所に起動スイッチが来るように、誘い、立ち回る。
しかし、銀時は後退せずにさらに踏み込んだ。
「………………っ!?」
それは恰も炎の中に自らを投ずるような無謀な動きだ。予定調和を崩された田中が小さく息を飲む。
「いつまでも後ろばっかり見てんじゃねえよ」
進め進め進め。
それが架された使命だ。
生き残った者の責務だ。
「昔と同じものを作ろうったってなあ、かつての面影をなぞろうったってなあ、一度失敗したものは次だって上手くは行かねえんだよ!ましてや、それがあの頃よりも歪なものなら尚更だ!!」
「アンタは……忘れちまったなんて言わせないぜ!あの時の絶望を、あの時の怒りを……堪えられるなんてのは嘘だ!」
日に日に減って行く仲間とは裏腹に、増え続ける墓標を。
飢えと瀬戸際に立たされた命の危機感を、抱え続ける緊張感を、やるせなさと無力感を、血の滾りと暴力的な衝動を、怒りと憎しみを、全てを失い踏み躙られた哀しみを。
「忘れてなんかいない。忘れる……はずがない」
今この瞬間にも、昨日のことのように記憶が蘇る。日常のふとした瞬間に、何でもない光景に魂が揺さぶられる。
硝煙、火薬の匂いが悲鳴や怒号を連れて来る。一人一人の仲間の顔を覚えている、なんてことはないけれど、それでもあの時あの場所に立っていた記憶は色褪せない。
例え時が経ち、それが過去の出来事として忘れられて行こうとも、自分だけは、自分の罪だけは忘れてはならない、と銀時は思っている。
同朋たちと同じだけ――いや、それ以上に奪った命を忘れてはならないと思う。
「は……アンタにとっては、あの闘いは罪だってことかい」
「違う!だけど、俺にはもう剣を向けるべき相手がいない。もしいるとするなら……それは俺たちの世界を壊そうとするやつだけだ」
大切なものがたくさんある今は、単身で無茶も効いたあの頃とは違う。不満しかなかった昔とは、圧倒的に立場が違う。
やるせなさや怒りや哀しみやその他諸々の感情よりも、目の前にある幸せを大切にしたいと思う。
それは実に都合のいいことだとは思うけれど。
もう世界を変えようとするには余りにも時間が経ち過ぎていて、銀時にはそれだけの気力がない。終わってしまったものを今更覆すだけの感情がない。
「俺は今を生きてんだよ」
だから、これ以上邪魔をしないで。そっとしておいて欲しい。何度も何度もかつての話を聞いたと言う攘夷志士が自分の元を訪れるたびに、銀時は叫びそうだった。
「俺はもう白夜叉じゃない!!」
あの時、土方が『斬って』くれたから、白夜叉は死んだのだ。今、ここにいるのは『万事屋の坂田銀時』なのだ。
例え田中を斬ることになろうと、それだけは変わるつもりはない。夜叉の心意気は持てども、白夜叉に戻るつもりはない。
「だから俺はお前らとつるまない。それでも連れて行こうってんなら、全力で抵抗するぜ」
「……残念だよ」
田中が大きく愛刀を振り上げたその時、一発の銃声が夜闇を斬り裂いた。それに導かれるように爆発が起こり、田中の刀を持った手がクルクルと宙を舞った。鮮血が噴き出す。袂に隠していた爆弾を撃ち抜かれたのだ。
「な……っ!?」
「真選組だ!!ご用改めである、神妙にしろ!!」
聞き慣れた低くよく通る恋人の声が波止場に響いた。
辺りはいつの間にか灯光機で照らし出され、グルリと隊士に取り囲まれている。全員がバズーカや小銃を構えていた。
「土方……」
「土方あああああっ!!」
落ちていた腕から刀を取り、田中が正面の土方に飛び掛かる。
ギッ、と銀時の双眸が一際鋭くなった。土方を背後に庇い、落ちて来る刃を受け止めようと迎撃体勢を取る。
が――
ドンっ!!ドン、ドン……っ!
次々と放たれた弾丸が田中の身体を穿った。空中で避けたり弾いたりなど――それこそ銀時や高杉クラスの化け物じみた反射神経でなければ出来ようはずもない。
自らの服に仕込んでいた爆弾が仇となり、田中はボロ屑のようになって受け身も取れずに地面に叩き付けられた。
土方は、ユラリと紫煙をくゆらせたままだ。
呆気に取られたような銀時の視線も意に介さず、冷たい眼差しで攘夷浪士を見下ろす。
「卑怯者、が……」
「何とでも言え」
「土方……」
「女子供を平気で標的に出来るテメーらみたいなクソヤローに何言われたって、どうってこたあねえよ。卑怯者で結構。俺たちの仕事は刀で斬り合うだけじゃねえ」
「お前らみたいなのがいるからだ……お前らみたいな似非侍がいるから……っ!!」
「テメーは生まれ変わったってこいつのことを理解なんて出来ねえよ。地獄で閻魔相手にほざいてろ」
ぶしゃあっ!
翻った土方の刀が、寸分違わずに田中の首を落とした。




→続く



副長は目的達成に手段を選ばない。

引き出しから

土銀愛が溢れて止まらないので、ダブってた同人誌とかを処分してみました。
…………あれ?おかしいな、あんまり嵩が減ってるように見えないんだけど。って、その分買い足したら寧ろ増量だろうがあああああ!




『背徳の十字架〜罪の後先〜E』



「そんなアンタを見たら、松陽先生はさぞお嘆きになるだろうなあ」
「…………黙れ」
「ましてや、白夜叉……アンタの男、幕府の犬だろう?師匠を殺したも同然の相手によく平気な面して股開けたもんだ」
「黙れっつってんだろうがっ!!」
ガキいいいいいんっ!!
刹那で間合いを詰めて振り下ろした木刀を、田中は待ち侘びていたかのように受け止めた。その眼差しが剣呑に光る。
「ふふ……やっぱりアンタはそうでなくっちゃ」
「テメーは……何も知らないくせに……っ!!」
田中は攘夷志士の中でも異質だ。皆何らかの自らの意思が思想があって立ち上がるものだが、彼にはそれがない。その点では並び称された岡田似蔵とよく似ている。しかし、存在そのものが刀であろうとした岡田とは違い、田中はただひたすら高杉のためだけに剣を取った男である。
高杉の言葉が全てであり、高杉の存在が世界そのものだった。その純粋無垢な想いは、かつて師を慕っていた自分たちのそれに通じる。
故に――
鬼兵隊の壊滅と、高杉の思想が加速度的に破滅へ向かった現実が、彼を打ちのめしたことは想像に難くない。
幼い頃天人に家族を皆殺しにされた田中に取って、例え奥底にどんな真意を秘めていようと、宇宙海賊春雨と手を組んだ高杉の行動は、これ以上ないほどの裏切りだったろう。
「アンタこそ何も解ってない……」
く、と力の方向を変えて、田中は銀時の攻撃を捌く。体格差から鍔競り合いをしても無駄なことをよく知っているのだ。
返す腕で抜刀。
空気を裂かんばかりの鋭い一撃も、読んで後退していた銀時には届かない。今度は田中が一歩踏み込んで、切っ先を突き出した。かろうじて紙一重で躱すと、まるで蛇の鎌首のように軌跡を変化させて追撃が来た。
堪らずに木刀で弾く。
「アンタこそ何も解ってない!あの時……晋助様が絶望の淵に叩き落とされた時、アンタたちがちゃんとあの人を支えてくれていれば、こんなことにはならなかったんだ!!」
「田中……」
「ハッキリ言って今のあの人の部下は無能ばっかりだ……俺たちの組織の名を継ぐのもおこがましい!せいぜい河上万斎が使えるくらいだが、それでも晋助様を支えるには及ばないね」
かち……っ
後退した地面が微かに音を立てたのに気付いて、銀時は大きく距離を取った。
瞬間、
ドオオオ……ンっ!!
派手な火柱が上がって、コンクリートの大地が砕け散った。地雷だ。
「くそっ、テメー……!」
「だからあの人は天人に頼らなきゃならない……それが誇り高い晋助様に取って、どれほどの屈辱か……!」
ヒュンッ!
投げ付けられる手榴弾。
前方に身を投げ出して、転がった背後でまた爆発が起こる。
――畜生……
田中が身を隠さなかったのは、剣での勝負をするためではない。至る所爆発物で占められたこのフィールドで、銀時を狙い撃ちにするつもりなのだ。
「だから俺は是が非でも、白夜叉と狂乱の貴公子を連れて鬼兵隊に帰還する。一度は国を憂いて発った身――否とは言わせないぜ!」



→続く




真っ白だ……orz

死ぬ……プライベートでもいろいろ用事があるのに、休日出勤と合わせて3週間ぶっ通し勤務とか……有り得ない。




『背徳の十字架〜罪の後先〜D』



銀時が思い当たる節に全て連絡をつけ終え、見覚えのない不審な荷物に注意するようにと伝え終わった頃には夕刻になってしまっていた。勿論、同じ手を使って来るとは限らないが、出来る予防線は張って置いた方がいい。
ともあれ、テリトリーであるかぶき街を外れ、銀時は寂れた方へ寂れた方へと歩いて行く。
『郊外の廃工場にて待つ』
メッセージカードはそんな言葉で締め括られていた。
「………………」
いつも腰に佩く木刀――洞爺湖。歩調に合わせて揺れるそれが、今は酷く心許無いような気がした。
どこかで犬の遠吠えが聞こえる。
血を流したような夕焼けの空は、既に夕闇の紫暗に変わりかけており、その廃工場を尚更不気味なものに仕立て上げていた。ここは――田中の独壇場だ。身を隠す場所にも困らないし、何より奴の大好きな爆弾の材料が豊富に備えてある。
指定はなかったが、子供たちを、ましてや土方を連れて来ることは出来なかった。
今から夜叉になる自分を知られたくない。現実のものとして認識されたくない。彼らの前では「ちょっと煌めいた時は馬鹿強い万事屋銀ちゃん」でありたいのだ。
別に過去を恥じている訳でも後ろめたい訳でもなかったが、この手を自分の罪がために血で汚すところを見せてはならないと思った。
――神楽、ゴメン……
もしあの時父親と帰っていたなら、こんな目に遭わなくてすんだはずだ。
――新八、ゴメン……
せっかくついて来てくれているのに、お前の目指す立派なサムライなんかじゃなくて。
――土方……バイバイ……
いくら彼でももう庇えないだろう。訣別の時は存外早く来てしまった。
――みんな、ありがとう……
心はあの時と寸分違わない。大切なものを守るために自分は刀を取る。例えそれが彼らとの永遠の別れを意味するのだとしても、これからの彼らの世界に自分がいないのだとしても、
――俺はお前らが笑顔で過ごしてくれればいい……
ざ…………っぁ!
風が啼く。
雲が晴れ、夜空に月が姿を現わし始める。
田中は波止場の防波堤に腰掛けて、銀時が近付いて来るのを見守っていた。脚をぶらつかせて、酷くリラックスしている。
童顔のせいで、記憶にある容貌と大差はないように見えた。ニヤニヤと楽しそうな笑み。腰にはあの頃と同じ朱鞘の獲物。刃渡りは三尺と大技物の中でも長い部類に入るため、小柄な田中はいつも引き摺るようにして持っていた。
「やあ、白夜叉。久しいね。元気だった?俺からのプレゼント気に入って貰えたかなあ?」
ブンッ!
ずっと持っていた彼岸花の花束を投げ付ける。怒りを湛えた銀時の双眸に、田中は軽く肩を竦めた。
「気に入らなかった?やっぱり椿とかの方が華やかだったかな?」
「今すぐそのベラベラうるせえ口を閉じろ」
「やだなー、ジョークじゃんあんなの。何でそんなにマジになってんの?」
ぴょん、と身軽に地に降りて、田中は相変わらず軽い口調で笑う。
「そんなにあのガキ大事だった?」
「………………っテメー!!」
「俺たちの憎き敵である天人のガキがそれほど大切だった?俺には解らないよ」
「最初から……神楽を狙ってやがったのか!アイツは……アイツらは俺の大事な家族だぞ!!」
「下らない」
鼻で嘲笑い、田中は薄い笑みを浮かべて見せた。それは今までのハイテンションな作り物の笑みではない。刃を思わせる鋭い笑み――それが本来の田中古兵衛と言う男だ。




→続く



インフルエンザが

スゴいですよねー。
予防注射とかしてないんだけど。会社でも幼稚園でも猛威を振るってますが、予防注射してないんだけど。もう駄目だろうなあ……ウイルス・ミスが訪ねて来た時は大人しく両手を上げよう。




『背徳の十字架〜罪の後先〜C』



『……と言う訳で、緻密な計算に基づいて作られた爆弾らしいんでさぁ。素人は勿論、玄人でも目標物や対象物のみを爆破するってのは、かなり高度な技術になるらしいですぜぃ』
「…………そうか、解った。ご苦労さん」
総悟からの報告を受けて、土方は溜息混じりに新しい煙草をくわえた。
「とにかく中に散弾なんかが入ってなくて何よりだった」
『ええ……』
「引き続き厳戒態勢を取る。お前が腕の立つ奴選んで、下のスナックを中心に半径3キロ包囲、警備しろ。少しでも怪しいのがいたら引っ立てて構わねえ」
『…………』
「……すぐに原田を寄越すから、それまで取りあえず指揮を頼む」
『解りやした』
神楽の容態が気になるのだろう。それを押し殺して仕事を成した、たかが18の少年を土方は心底感心した。
自分が総悟の立場だったなら――傍で聞いただけでこれほど焦燥に駆られ、堪らない気持ちになるのに、きっと全てを投げうって駆け付けるだろう。
『土方さん』
「何だ」
『心当たりがありそうな口振りですねぃ』
「…………まあな」
チラリと窓の外を見遣る。巡回途中でこんな日に限って余計な呼び出しを食らってしまった。苛立ちを混ぜて紫煙を吐き出す。
「ただ……俺の予想が当たっているとすると、犯行は亡霊の仕業ってことになる」
『怖がりな土方さんが大嫌いなやつですかぃ?』
「怖くねえよっ!!」
『一体……どこのどいつでぃ?』
コホン、と咳払いをしてから土方は言葉を続ける。
「高杉晋助配下の初代鬼兵隊幹部にして、無類の爆弾魔――かつて攘夷戦争時代は『歩く火薬庫』の名で恐れられた、田中古兵衛だ」
『あの、今は亡き岡田似蔵と並べ称された人斬りですかぃ?』
「ああ……その日の天候、気温、湿度、風向き、障害物の位置まで完全に把握して、ピンポイントで対象物を爆破出来る奴は、他に思い浮かばねえ」
『でも、奴ぁ……』
「死んだ、はずだ。少なくとも、記録ではそうなっている」
攘夷戦争末期から終戦のゴタゴタにかけて、鬼兵隊は残党狩りの槍玉に上げられた。総督だった高杉を始め、幹部は名だたる剣豪で占められ、彼らのせいで戦争終結は1年遅れたと言われている。
しかし、天人連合軍隊による徹底掃討方針のため、軒並み捕縛され残虐極まりない方法で処刑されたか討ち死にした、と言うのが専らの話だった。
その頃の資料がどれほど信憑性があるか解らないが、実際真選組は結成前だったためそこに記された以上のことを追究することは出来ない。
田中は追跡の包囲網を潜り抜け、当時各星との条約を締結した外交大臣を暗殺しようとするも失敗。捕縛された後、獄内で自決したとされている。
「奴ぁ剣の腕もさることながら、『火事と喧嘩は江戸の華』って自ら謳うほど爆破が大好きっつー変態だ。桂なんかも爆弾を持ってるが、全く別物だよ」
『成程……しかし、攘夷浪士以外にもそんな輩ぁいるでしょうに』
「いや、何つーかな……傾向ってのか思想ってのか、とにかく違うんだよ。まあ、俺も直にお目にかかった訳じゃないがな。それに攘夷浪士じゃないとしたら、銀時との繋がりがねえ」
『またお得意の勘ですかぃ?真選組の頭脳も大概動物的ですねぃ』
「最近やたらと自爆テロが多発したのにも、一枚奴が絡んでるかもしれねえ」
『……調べさせやす』
言って、ふつりと電話は切れた。
長くなった灰をトントンと落として、一度深く肺の奥まで紫煙を巡らせる。外の景色はまだかぶき街に程遠い。
――もし……
田中が生きていたとするならば、心酔していた高杉の元へ戻らない理由が解らない。現在名を連ねる幹部の中に田中はいないのだ。
高杉は様々に暗躍をする策士ではあるがそう言うことを秘匿するような性格ではないから、その存在が今まで隠されていたと言うようなことはないだろう。
しかし、単独で密命を受けているにしては動きが小さ過ぎる。派手なことを好む高杉と同様、田中もチマチマした作戦は嫌ったと言う。今は市井に埋没した一個人を狙う理由も今一つ不明だ。
「おい、ちんたら走ってんじゃねえ!もっと飛ばせ」
「は、はい!」
後部から運転席のシートを蹴りつけて、新参隊士を急かせる。
銀時は――犯人の正体に気付いたはずだ。恐らくその真の理由にも。
そしてそれならば、大人しく黙っているような奴ではない。自分の大切なものに手出しした落とし前をつけさせに向かうはずだ。
その激しい怒りを初めて目の当たりにした時、土方は正直ゾッとした。別に銀時は木刀を持っているからと言って「不殺」の精神を貫く聖人君子ではない。どこまでも刃には刃で返すサムライである。
普段の怠惰ぶり、無関心ぶりからは想像も出来ないほど、徹底的に容赦をしない。それは彼の中に眠り続けている幕府や天人への憎悪なのか。
――俺はお前にあんな眼ぇして欲しくねえよ……
白夜叉に戻す訳には行かない。
――お前の場所はそこじゃねえ……
だからただ、急ぐ。
銀時がその手を汚してしまう前に。




→続く




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