※舞台は現代日本です
※流行りの?転生ものを読んで書きたくなったふわっとしたネタ





ーー突然、記憶が戻ってきた。
戻ってきた、というより思い出したの方が正しいのか。
今でいう、幕末と呼ばれていたころに生きていた男の記憶が。

…何で今思い出したのか分からないけれど、思い出してしまったらこの平和な世の中がずいぶんとつまらないものに見えてくる。
前はよかったなあ。
人斬りと呼ばれ、向かってくる敵は容赦なく切り捨てて。
まあ切り捨てたあと色々文句も言われたけど…今同じことしようとしたら一発でアウトだ。
そもそも刀なんて手に入らないし。
…まあ、別に今の自分に人斬り願望があるわけではないけれど。
昔の記憶の自分はそんな中でも確かに楽しく生きていたわけで。
ああ、何だかつまらない。

はあ、とひとつため息をついたときだった。
「あの、大石さん私の話聞いてます?」
声をかけられて隣を歩く人物の存在を思い出した。
そういえば通学途中だった。
ふ、と隣を見やると。
「…さくらば。」
「はい?」
かつて俺に偽善を言い続けた女がそこにいた。
唯一俺に真っ直ぐ向かってきた、女。
ああ本当にいつもいつも邪魔をして、うるさい小言を聞かされてうんざりしていたのに、今の時代にもお前は俺の傍にいるのか。
…つまらない、はずだったのに。
同じくらい面白く感じ始めた。
「…え、何ですかその笑顔、怖いんですけど!」
無意識に笑みが浮かんでいたのだろう。
桜庭は、いつか見たように大きな瞳を零れそうなほど見開いて驚いたようだった。

その真っ直ぐな瞳を、綺麗な意思を、今度こそ俺と同じところまで落としてやる。
そんな未来を考えて、俺はもう一度笑うのだった。




鈴花さんはずっと前から記憶があって、記憶ない大石さんをまっとうにしようと傍で努力してたとかなら萌えるなと。