※名前は「乃璃」で固定
※トミーでシリアス、学パロ
※トミー→ヒロイン、最後の最後で報われる予定
ボクだけが、乱れていた。
去年は同じクラスだったけど、席も出席番号も遠くてろくに話す機会が無かった。
3年間同じクラスだからと言って、これじゃまずい。そう思った2年の4月半ば、ボクは席替えで乃璃の後ろをゲットした。
「よろしくね、トミー君」なんて言う乃璃に「ああ、うん」なんて生返事。気付かれちゃまずい、ボクだけが乱されてるなんて。
ボクは必死の思いで距離を縮めた。授業の話からファッションの話、時には蟲をつかまえて乃璃をいじり倒してみたり、弁当をつまんでみたり、長い髪をだっさい髪型にしてみたり。
周りは大爆笑で、乃璃は涙目。ボクは少しでも乃璃と過ごすためありとあらゆる方法をとった。いじめに近かったかもしれないが、ボクにそんな余裕は無いし、1対1なんだから文句なんか言わせない。
「トミー君…いい加減にしてよ」
「は?」
ある日の放課後、雨の振りそうな空が見えるベランダで乃璃が言った。
「クラスの子は笑うし、学年の子たちには妬まれる。彼氏には浮気疑われて振られるし…トミー君は、あたしに何がしたいわけ?
いい加減にしてよ!!」
「……」
「去年はこんなこと無かったじゃん、破天荒でも自由奔放でも…トミー君、こんな酷いことしなかった!
なんで…なんで、あたしばっかり…!!」
予想外だった。
乃璃には、何も伝わって無かった。
手をのばして触れようとすると、乃璃は身を引いて拒絶する。
雨の音が聞こえ始めた。6時前だ、生徒は残っちゃいない。
「あたしは、あなたの都合の良いおもちゃじゃない…あたしだって生きてる、一人の人間なの!
イヤなものはイヤだし、傷だってつく!
…もう、やめてよ」
……彼女は、クラスのリーダーと言うわけでもなければ、特別運動が出来たり頭が良いわけでもない。
ボクが惹かれる要素なんて無いはずで、ボクはこんな彼女を初めて見て、ああ、ダメだ動揺してる。意味わかんない。
「嫌がらせばっかりして、キライなら関わらなきゃ良いじゃない!
トミー君のせいで、あたしの学校生活はめちゃくちゃなんだからっ!!」
ボクは目を見開く。
わけが分からなくなって、とにかく動いた。乃璃を低い手すりに押し付け、ボクらは雨に濡れる。
勢いを増すそれに、ボクは冷やされていった。
「……乃璃」
「…っ」
「…ボクは、乃璃が好きだよ」
「!!?」
言った。
言ってしまった。
「ずっと、乃璃を見てた。機会なんか全然なくて、やっと席が近くなって嬉しかった。
乃璃、乃璃、好きなんだ」
乃璃は目を見開いて、そしてぎゅっと唇を結んだあと言った。
「ふざけないでよ…」
「!」
「仮にそれが本当だとして…あたしには何も関係ない!!
散々嫌がらせして、追いかけ回して……離してよ、あたしは絶対…トミー君に応えたりしないんだからっ!!」
「! 乃璃っ!!」
乃璃はムリヤリボクから離れて、そして───この三階のベランダから、落ちた。
ボクが慌てて身を乗り出して手をのばしても、決して乃璃は、ボクに手をのばさなかった。
べしゃっと激しい雨が多少のクッションになったようで、でも三階だ、普通の女が耐えられる痛みじゃない。
ボクは慌てて教室から飛び出す。羽が濡れたら意味が無いし、二階くらいからなら余裕だ。
駆け寄ると、乃璃はにやっと笑った。
「おっそ、最低」
「じ、自分から落ちといてお前っ」
「そうよ、あなたと関わるなんて冗談じゃない──どっか行ってよ、もう」
後ろで、慌てた声と騒がしい足音がする。たぶん、音に気付いた教師どもだ。
ああそうか、ボクが居たらボクが落としたみたいになるからだ。最後まで、気ばっかつかって…バカじゃないの。
「乃璃」
「…」
「乃璃、好きだよ」
「…」
「カバン、ボクが預かってあげる。こんなことしでかしたんだから、しばらくは来れないだろ?
ボクは優しいから、復帰するまで返事は待ってやるよ」
「死ね、バカ」
「お互い様だろ」
ボクは足早に中庭に向かう。途中考えて、ボクは右手につけてる黒い指輪を外した。
教師どもの声が近くなる。つかうるせ。
「ボクを拒むなんて、生意気だよ」
本気だよ。
だから、お前も本気にさせてやる。
(もっとトミーを精神的にズタボロにするはずが…ヒロインちゃんが優しくて無理でしたorz.)