「奏」
「……鈴さん」
病室に顔を出したのは、隣の部屋に入院している鈴さんだった。
「具合、どう?」
「大丈夫では、ないかな。もう、俺は最期です」
「そんな弱気なこと言ったらあかんよ、奏」
「! 梓さんまで」
鈴さんの恋人、梓さん。
蜜柑ちゃんと同じ、関西弁だ。
2年前、アリス学園の生徒の中でトップになった。
つまり総代表を務めた人。
鈴さんは高等部3年生。殿達と同じ年齢だ。
「奏は、生きるんだから」
「…」
「病気なんかに、負けないんだよ」
「……ごめんなさい」
困ったように笑うと、鈴さんは不満気になる。
「絶対!死んだら怒るよ」
「相手がユーレイでも呪いそうな勢いやなあ、鈴」
「だって…!!」
「奏、僕らは回復するの待ってる、応援もする。せやから、こんなところで死んだらあかんよ」
「……うん」
―――…これが俺が会った最期の人。
のはずだった。
来ることのない明日が、
(きていた。)
(ほっとしたような梓さんが傍にいて、鈴さんが隣で寝ていた)
―――――――
奏が生きる話。
この2人が色々するんですが、まあそれはいつか機会があったら。