久々に嫌われ復讐の夢小説を読んで再熱。
王道に復活と混合させてみた。
※戯言キャラ全員転生設定。戯言・人間シリーズ全員生まれ変わってから死んでません。
凄く長くなったので、嫌われだけ。
夢主設定。
井伊×××
2重人格者。女。
1人は戯言遣い、1人は
白雪鈴。
基本的に戯言遣いが主人格で鈴が副人格。
見た目は髪の長い、いーちゃんの女装版。
ツナたちと関わるようになって鈴が主人格として出てくることが多くなる。
ぶっちゃけ急に非公開にした紫苑の設定ですが、読んでいる人いないと思うので。
死んで――生まれ変わった。輪廻転生なんて本当にあるものなのかと感心した。
けれど。
生まれ変わって、女の子になったと言う衝撃と共に、ぼくにはもう1つの人格が存在した。
れい、と名乗ったもう1人の人格であるその子は前世であったことがあるらしいが、記憶力の乏しさには人一倍定評のあるこのぼくが覚えているわけがない。戯言だけどね。
あれから13年。れいと出会って、13年。
中学生になったぼくらは、ある意味現代の教育の場の問題とされているそれに直面していた。
「(……)」
『…ねえ、いーたん。代わって』
「(代わってどうするの)」
『もれなくタコ殴り』
「(……)」
さすがに13年もすれば2重人格と言うのも受け入れられるし、この世界で彼女が誰よりもぼくを理解していた。逆に、当たり前だが、この世界で彼女を1番理解しているのはぼく。
今…いや、生まれてからぼくがこの身体の主導権を握ることが多い。
だから、今この状態のれいを表に出すことは、誰よりも危険だと分かっている。
この、机上の殴り書きの中傷と机の中の生ゴミと虫の死骸。椅子の座る位置に、ボンドで完全にくっつけられた画鋲。足はねじ折られ、油性スプレーで綺麗に彩られたぼくが普段学校で使っている椅子は素晴らしい≠烽フになっていた。
俗に言う―――――イジメ。
その光景に、溜め息さえ出ない。勿論泣きもしない。
ただ、いつか子荻ちゃんが言った無為式≠ニはこの事なんだろうな、とぼんやり思った。戯言だけどね。
「(そんな力、ぼくにはないよ)」
『いーたんにないのは気力』
「(…)」
ズバッと図星を突かれる。ぼくだから仕方ない、なんて言い訳は通用しないのがれいだ。
「ねえ、井伊さん。俺、信じてた。信じたかったんだ」
…端から見れば百面相の時間はここで一端区切ろう。(無表情だから、周りから見れば特に変わりがないだろうけど)
悲劇のヒロイン――失礼。悲劇のヒーローを気取ったクラスメイト、沢田綱吉くんが悲哀と憎悪をごちゃごちゃにしたような表情でぼくを見据えた。
――――…どうやらぼくは無実の罪を着せられて、悪役になっているらしい。
同じクラスメイトの女の子を殴った、とか。名前は……何だったっけ。
「この状態で、ぼくを信じたいなんて言うのは、ホラはただの偽善か言い訳にしか過ぎない。だからと言って、自ら君たちの罵声や暴力を浴びに行く程、ぼくは変態に成り下がったつもりもないんだけどね」
「十代目に何て口聞いてんだ、くそ女!!」
教室内だと言うのに人目もはばからず、殴りかかろうとした獄寺隼人くんを綱吉くんが止める。
それよりも、そんなことよりもぼくの『中』でお経のように言葉を並べるれいを止めるのにいっぱいいっぱいだった。
『殺す殺す殺す殺す…可愛いいーたんにくそ女?まじ殺す獄寺隼人…!!』
「(落ち着いて、ぼくが可愛いのはきっと幻覚だから。疲れすぎだよ、れい)」
……戯言だけど。
「井伊、ツナが優しいからって彩香を殴ったっていう事実は変わらねーぜ?」
………えーっと。ああ、山本武くんだ。
爽やかだと言われているその笑顔は、どう見ても裏があるとってつけただけの笑顔。
ぼくがクラスメイトの女の子を殴ったと言う嘘を信じているからなのだろうけど。
「(女の子の名前、何だったっけ)」
『…平田彩花』
凄く不機嫌そうなれいの声。
基本的な主導権をぼくが握っていて良かったと思う。今、れいに身体を乗っ取られたら何を仕出かすか分からない。いや、大暴れするんだろう、それくらいは分かる。
「ぼくは彩花ちゃんを殴った覚えはない。と言っても君たちは信じてくれないのだろうけどね。戯言だよ」
そっと、4階の窓にもたれかかる。
見渡す限り、綱吉くんと隼人くん、武くんと彩花ちゃん。京子ちゃんに花ちゃん。
名前が分かるのはこれくらいか。
「死ね!お前のせいで彩花が傷ついて、十代目に迷惑かけてんだよ!!」
「井伊さん、それだけ『お仕置き』しても気付かない?」
お仕置き……何だか卑猥にしか聞こえないのは、ぼくの精神年齢が上だからなのか。いや、そもそもぼくは男だ。身体は女の子だけど。……あれ、出夢くんみたいだ。
ふと、自分の身体を見てみる。
殴られ、蹴られ。肌が紫に変色して、親に見つからないようにこの暑い夏でもレディースの薄手カーディガン。
指や手の甲は絆創膏で隠しているけど傷だらけ。
やはりストレスが溜まるのか、キューティクルがぼろぼろになった長い髪。
スカートに油性スプレーがかかった跡。
下駄箱に机同様、生ゴミや死骸が多いから上靴はそのままにして来客用スリッパ。
れいと冷静気取って話をしているが。
めちゃくちゃ痛い。泣き叫びたいくらいに、倒れたいくらいに、今すぐ意識を飛ばしたいくらいに。
……戯言だけど。
「死ね!」
「分かった」
「…え?」
綱吉くんのぽかんとした表情と声。
ぼくは窓を開けて足をかける。
「ただ、君たちがぼくを『殺した』と言う事実は変わらない。一生その罪を背負って生きていくことになる。それで君たちは後悔しないのか。彩花ちゃん、君はこれが続くと思っているのかな。いくら隠蔽したところで、いつかはバレてしまうものだ。政治家の裏金問題と一緒だよ、世界にはバレない人がいるかもしれないけど、たかが普通の中学生にそんな芸当持つ人なんて早々いるものじゃない。もし続いたとして、隠しきれたとして、君の心はきっと満たされない。断言してあげるよ、君の心を支配するのはきっと虚無だけ。君は愛されたいのかもしれないけど今の状況が進んでも、続いても君の心は嘘を吐いたと言う罪悪感と、嘘で愛されていると言う虚無感で潰されてしまう。人間、そんなに強くないんだよ」
『いーた、』
「長々とごめんね。君たちの『幸せ』が続くことを願ってるよ」
ぼくは笑わない。
『中』でれいの叫ぶ声が聞こえる。けど、もう良いんだ。
「ま、戯言だけどね」
玖渚がいない。あの玖渚機関もない。人類最強のあの人もいないし、人類最終の親友もいない。鏡の裏の人間失格もいない。
『前』の人たちが、1人もいない世界で、生きていくのは少し、ぼくには辛すぎた。
ゆっくり、身体を傾ける。宙に浮かぶ身体。れいが『中』で叫ぶ声。
景色のようにしか映らない、恐怖か驚愕か、そんな表情をしたクラスメイトたち。
その中に、ぼくを引き止める存在はいない。
4階の窓から、ぼくは
落ちた。
世界の終わり、世界の拒絶。
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