「うわ、今日4日じゃん。絶対、次の英語指されるよ」
「あんた、34番だもんね〜」
日常に紛れてる、幾つもの数字の中のたった一つ。
些か過剰なくらい、反応してしまう。
4、
あなたは、忘れろと言った。
『もう、傍に居てやることも出来ない奴に想いを捧げて何になる』
あなたらしい言葉で、最後でした。
あたしも、楽になりたいです。
あなたの全てを忘れて、またゼロから人を好きになって、満たされたい。
でも、あなた狡い。
忘れろと、あなた言ったけど。
もうあなたには、あたしが紡ぐ名前でしか会えないけど。
温もりなんて、忘れ始めてしまってただ虚しいのに。
「サブリミナル効果、」
あなたの、その左胸に刻まれたあの数字が。
絶えず、あなたを想い興させる。
4日、4時、4番、4つ…
4の数字を見る度に。
あなたの低い体温に包まれて、幸せに、切なさに、泣いたことを思い出す。
私が泣くと、あなたはお前は欲張りだと少し笑った、とか。
あたしはそんなことないですよーと、いつも小さく舌を出しましたよね。
その後、その舌から食べられてキス。
少ししか顔の筋肉を弛ませないのだけど、それがあなたの精一杯の笑顔だったと知ってる。
明度ゼロで光も弾かない不思議な黒髪は、あたしの顔に掛かる度愛しかった。
淡白そうに見えるんだけど、毎度あたしを腕に閉じ込めて情熱的なキスを降らすあなた。
ウルキオラさんのエッチと言ったら。
不満かと、狡い距離で囁かれたっけ。
眦を掠めてったあなたの唇は、やっぱり情熱と反比例に温度低め。
綺麗な鼻筋のその先っちょが、あたしの髪を流す。
細い腕と、実は逞しい肩に抱かれて。
あたしの肩に乗っかった、あなたの額と重み。
『お前以外、欲しいものが思いつかん』
泣きたいほど、嬉しかったんですよ。
分かってて言ったんですか、ウルキオラさん?
「織姫?」
「あ、目にゴミ入っちゃったみたい」
「擦っちゃダメだよ、織姫。洗ってきな」
「でも大丈夫だよ、たつきちゃ…」
「洗ってきな、顔」
お気に入りだと、この前言ってたスポーツタオルを渡されて。
「ありがと、」
心配かけてばかりで、ごめんね。
「はぁ」
失恋しても、人間は一週間もするばまた元気に生きていく。
大人な同級生がそう、大層な口振りで。
ウルキオラさん。
あれから、一週間どころか、春が過ぎて、夏が来て。
秋が繁って、冬も枯れました。
でも、あたしはあなたの言いつけに叛いて。
あなたに焦がれてます。
言いつけに叛くと、従わせようとしましたよね。
最初の方だけだったけど。
ね、あたし、あなたに逆らってるんですよ。
最初の冷たいだけのあなたでも良い。
「ゥルキ…オラ、さん…」
もう、二度と会えないのは何故ですか。
あなたが死んでしまったのというならば、心の整理くらいなら、ついたのかもしれません。
この前、黒崎くんにキス、されました。
優しい、優しいキスで。
あなたを重ねられない程、彼らしいキスでした。
あなたのキスも、優しい時だってあったけど。
いつも、何かを奪うようで。
また、奪われていくキスでした。
黒崎くんのキスを呆然とも言える態度で見ていたあたしに、彼は。
ごめん、と言ったのです。
別に大丈夫と返したら、だからごめんと。
彼が泣いて、
拒絶して欲しかった、心でダメだと言って欲しかったと。
あなたの優しいキスは、どうやらあたしの心を奪っていたようです。
キスされる度に奪っていったのだから、奪われてしまっていたのだから。
あたしの心全部、あなたが捕っちゃったんです。
忘れろと、あなたは言いました。
もう一度誰かを好きになる為には、心が必要です。
帰してくれないのだから、仕方ないですよね。
(永遠にあなたのもの)
2009-1-9 02:12