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あんたとわたしのふたりならV

「なぁ、ナミ…」
「迷ってくれてるだけで充分よ、だってあんたの未練になれたんですもの」


私は泣かないわよ、ゾロ。

だって今生の別れじゃないもの。

あんたはちゃんと、私のもとへ帰ってくるんでしょ?


「俺は、お前を一人にするのがイヤなんだ」

「ゾロ…」


みかんと風車の刺青に唇を寄せたゾロ。


あの時、ゾロはいつも以上に言葉少なく戦いに向かっていった。

その時のゾロの想いを、私は今、知ることになった。


「お前が仲間達(アイツラ)の前で泣くような女じゃないからこそ、イヤなんだよ、ナミ」


ゾロは、いつだって一番大切な言葉は口にしてくれる。

だから、私はますますゾロから離れられなかった。


「うん、だったら一人にしないで」


は?と、間抜けな声が聞こえてきて、可笑しかった。


好きよ、そんなところも。

そう心の中で呟いて、すっかりさっきの汗がひいたゾロの首に腕を回した。


「あんたの子供、私に頂戴?」


いつかの日に、ベルメールさんからもらったありったけの愛を、私はゾロとの子供に注ぎたいの。

そして、欲を言えば、


「男の子なら、」
「俺そっくりなはずだってか?」


ゾロがニヤリと笑った。

いつものゾロだわ。

久しぶりね、会いたかったわという気持ちを込めて頬にキスを贈る。


「そういうこと」
「お前は強いな」
「あら、今頃気づいたの?」
「いいや」


ゾロにしては柔らかいキスが一つ降ってきた。


「明日、行くな」
「早く帰ってきなさいよ」
「あぁ?」
「子供がサンジくんを父親だと思っても知らないわよ」

「なっ!?」


慌てた顔が、笑えた。

色んな顔を見せて。

毎晩くれたキスマークは消えてしまうけど、全部ぜんぶ、心に焼きつけて覚えておくから。


でも、キスマークも沢山つけてほしい。

私はゾロに愛されたって証拠を、刻みつけるように深く。


「ゾロ、沢山たくさん愛して」

「……言われなくても。覚悟しとけよ」


伝わったようで、首筋に痛いくらいのキスが降りてきた。





(また必ず会える、だから少しのお別れをしよう)

あんたとわたしのふたりならU※N視点

ゾロが悩んでるのは、ずっと前から分かってた。

だから、


「もういいのよ、行きたいんでしょ」


ここのとこ毎晩続く甘い時間の果て、ゾロがようやくほっとしたような顔を見せたから。

あんたって、本当隠し事が下手ね。

戦いの時は、敵の何手も先を読むんでしょ?

読ませないように、隙をつかれないように、平常心を保つんでしょ?


私にそれをしないのは、信頼されてるから?安心してるから?


やっぱり、愛してるから?


「ナミ…?」
「鷹の目のところ。今のあんたは敵なし。世界一の大剣豪を狙うには充分強くなった、そうでしょ?本当は追いかけて堪らないくせに、無理しちゃって」


我慢なんて言葉、あんたの辞書では=修行か鍛錬もしくは筋トレ、でしょうが。

似合わないことするから、眉間のしわがとれないのよバカね。


「お前は………お前は、どうするんだ」


後ろから、ゾロにしては珍しく、揺れた声だった。

ゾロが無理に振り向かせないと知ってて振り向かない私は、狡いと思う。


「行かないわ。私まで船降りちゃったら、誰が舵取るのよ」
「………」
「怒った?」


さすがに怖くて、ゾロの様子を窺う。

いやという言葉そのまま、いつも通りのゾロがいた。

きっと、ゾロだって分かっていたのね。

ルフィから、航海士としての私は奪えないって。


「あのね、私はあんたを信じてる。だからついていかないの」


右手で無駄のないゾロの頬を撫でた。

このラインが、とても好きだった。

それはもう、出逢った時からずっと。


それから、左耳のピアスに触れた。

アンタが羨ましいわ。

いつでもどこでもゾロと一緒なんだもの。


でも、チャリと鳴る音は嫌いじゃない。

だって、ゾロが切なげに私の名前を呼ぶ時、微かに混じって聞こえてくる音だから。


「たとえあんたが極度の方向音痴でも」
「おい」
「心配してないわ。あんたが世界一の大剣豪になるべきなら、迷っても必ず鷹の目のところへ辿り着けるはずだもの」


ゾロはちゃんと色んなこと考えてるくせに、無口で外にそれを表現をしない。

もったいないとも思ったし、そのことでよく喧嘩をした。

おまけに、自分は言ってくれないくせに、私には言いたいことがあるならはっきり言えと言うんだから頭にくる。


だから付き合い始めた頃は、本当喧嘩ばっかり。

でも、付き合いを続けていくうちに気づいたの。

ゾロの言いたいことがあるなら〜って言葉は、ゾロなりの愛情表現なんだって。


ほら、あの通り仲間以外には完全な無関心男でしょ?

だからあの言葉は、お前のことは知りたいっていうゾロ的熱烈な愛の言葉になるというわけよ。


そう思えるようになった頃には、ゾロと私の喧嘩も落ち着いて、フランキーとロビンみたいだってチョッパーに言われたっけ。


「帰り道だって、心配してない。あんたは帰ってくる、この船に。だって、この広い広い海で出逢えた私達だもの」


ねぇゾロ。


「あんたが悩んでたの知ってるわ。私を残して行きたくないのも、連れて行けないって思ってることも」


なかなか踏ん切りのつかない自分にイラついて、紛らわすように私を求めて。

チョッパーにも、ルフィにもぐらつくなと言ったくせに、とか思って自分を追い詰めたんでしょ、あんたのことだから。


本当、あんたってバカね。


「私は、あんたの野望も含めてあんたを愛したの。だからいいのよ、ゾロ。置いて行っていいの」
「でも俺は…」
「自分の野望で私を犠牲にしたくない、違う?」


黙ったってことは、図星ね。

まったく。


自分がどれほど犠牲になろうとも、知ったこっちゃないあんただから、すぐ分かったわ。


「犠牲だなんて思わない。言ったでしょ、野望も含めてあんたを愛したって」


野望に突っ走ってこそロロノア・ゾロ。


「野望のためなら自分の身体や命を省みない、大バカ野郎の筋肉マリモ。だからほっとけなかったし、ほっといたら早死にしそうなくらい生き急いでるように見えた。生きてりゃ…って思ってた私が気づいたら、あんたの未練になりたがってた」


失うものは何もないとばかりに戦いに明け暮れてたあんたの、生への執着になりたかった。

私を置いては逝けないって、剣の迷いになるかもしれないけど。

でも、その誰もがなり得なかったゾロの未練に、私はなりたかった。


それと、浮気の心配はしてないわ。

喧嘩ばっかりの私を見捨てず、傍にいて抱き締めてくれるゾロだもの。

それにゾロのルックスや懸賞金の額で寄ってくる女達は、言い寄ったはいいが、ゾロの無関心と無口さに閉口して、つまらない男と一方的に愛想を尽かして消えていくって分かってるから。


あんたとわたしのふたりなら(ZN/海賊)※Z視点

もういいのよ、行きたいんでしょ。


ここ数日毎夜続く甘い時間の果てに、ナミがそう呟いた。


「ナミ…?」
「鷹の目のところ。今のあんたは敵なし。世界一の大剣豪を狙うには充分強くなった、そうでしょ?本当は追いかけて堪らないくせに、無理しちゃって」


我慢なんてあんたらしくないじゃない。


「お前は………お前は、どうするんだ」


後ろから抱き締めているから、オレンジ色の頭しか俺には見えない。

腕に力を込めれば振り向かせるなんて容易い。

でも、ナミがそうしないのなら、俺がそうしてはいけない気がした。


「行かないわ。私まで船降りちゃったら、誰が舵取るのよ」
「………」
「怒った?」


やっと、こちらに顔を向けたナミ。


「いや」

「あのね、私はあんたを信じてる。だからついていかないの」


ナミの右手が、すっと頬を撫でて、左耳のピアスに触れた。

チャリと小さな音がして、ナミは右手を俺の心臓に重ねた。


「たとえあんたが極度の方向音痴でも」
「おい」
「心配してないわ。あんたが世界一の大剣豪になるべきなら、迷っても必ず鷹の目のところへ辿り着けるはずだもの」


だから私は、私がいなきゃダメな船に残るの。


「帰り道だって、心配してない。あんたは帰ってくる、この船に。だって、この広い広い海で出逢えた私達だもの」


ねぇゾロ、とナミが一層穏やかな声で。


「あんたが悩んでたの知ってるわ。私を残して行きたくないのも、連れて行けないって思ってることも」


悩んでも悩んでも踏ん切りのつかない自分にイラついて、酒も飲まずに、ただひたすら今の現実にしがみついていたナミを求めた。


チョッパーにデービーバックファイトの時、男ならガタガタ抜かすなと諫め。

ウソップの退団騒動の時には、ルフィにキャプテンとして腹をくくらせた。


そんな俺が、フラフラするわけにはいかなかった。


他の奴等には普段と変わりない態度で接していたつもりでいたのに。

やはりというべきか、ナミにはバレていたのか。


「私は、あんたの野望も含めてあんたを愛したの。だからいいのよ、ゾロ。置いて行っていいの」
「でも俺は…」
「自分の野望で私を犠牲にしたくない、違う?」


黙るしかなかった。


「犠牲だなんて思わない。言ったでしょ、野望も含めてあんたを愛したって」


野望がないあんただったなら、私達は出逢わなかったかもしれない。

出逢えたとしても、私はあんたに振り向きもしなかったと思うわ。


「野望のためなら自分の身体や命を省みない、大バカ野郎の筋肉マリモ。だからほっとけなかったし、ほっといたら早死にしそうなくらい生き急いでるように見えた。生きてりゃ…って思ってた私が気づいたら、あんたの未練になりたがってた」


それに、その野望があってこそゾロっていう男ができたわけで。

そんな男からの言葉で、ちょっと甘ったれだったチョッパーが成長して。

ウソップの事でバラバラになっちゃいそうだった私達を、繋ぎ止めてくれた。


「ゾロ、あの時ね、私惚れ直したのよ。知ってた?ああ私はなんていい男に愛されてるのかしらって」
「なぁ、ナミ…」
「迷ってくれてるだけで充分よ、だってあんたの未練になれたんですもの」


ルフィに、風車のオッサンに。

ナミを泣かすなと、言われた。


ナミは泣いてなどいないけど、


「俺は、お前を一人にするのがイヤなんだ」

「ゾロ…」


アーロンの時のように、いつ叶うか分からない日を待ち焦がれさせ。

隠れて、一人で泣かせるのがイヤなんだ。


助けて、とお前が涙を見せた時。

二人に言われるまでもなく、二度とこんな風に泣かせたりしないと誓いながら刀を握り締めた。


お前が仲間達(アイツラ)の前で泣くような女じゃないからこそ、イヤなんだよ、ナミ。


「うん、だったら一人にしないで」


は?と、間抜けな声がつい口から漏れた。

ナミは可笑しそうに笑って、それから俺の首に腕を回した。


「あんたの子供、私に頂戴?」


そしたら一人じゃないわと、ナミは。


「あんたがいないのはもちろん淋しいけど、子供がいたらそんなこと言ってらんないわ。あんたに恥ずかしくないように育てなきゃいけないし、それに」
「それに?」
「男の子なら、」
「俺そっくりなはずだってか?」


ニヤリと笑ったら、ナミの唇が左頬を掠めた。


「そういうこと」
「お前は強いな」
「あら、今頃気づいたの?」
「いいや」


これまで贈り続けた劣情しか含めなかったキスではなく、俺にできる精一杯の柔らかいキスを一つ。


「明日、行くな」
「早く帰ってきなさいよ」
「あぁ?」
「子供がサンジくんを父親だと思っても知らないわよ」

「なっ!?」

「ゾロ、沢山たくさん愛して」

「……言われなくても。覚悟しとけよ」


ナミはうんと笑った。

保証を頂戴、何処にも消えたりしないって!(Z←N/海賊)

「ねぇ」


「何だよ」


巨大なバーベルをブンブン振り回しているゾロ。

トレーニングバカね、本当に。


「大剣豪になった後は?」




ガチャガチャと足元にバーベルをおいたゾロは、船縁に掛けてあったタオルに手を伸ばした。




「考えたことねぇな」


そーいや、なんて海の向こうへ視線をやるゾロ。


夢だけを見つめるのに精一杯。

なわけないでしょ、自信満々大胆不敵なアンタだもの。


それに1日は24時間もあるのよ、少し位その先のこと考える時間だってあるでしょ?






「ルフィが海賊王になるより先かも知れないけど、後かも知れないじゃない」




先ならまだ良い。

ルフィの夢が叶うのを副船長のアンタは見届けるべきだわとか、それが麦わら海賊団の最初からいるあたし達の役目だわとか何とでも言える。






でも、もしその後だったら…






「そうだな…」
「やっぱり言わなくていい!」
「はぁ!?」


人が真面目に答えてやろうとしたらお前ってヤツはとか、何とか言ってるけど。


「いいって言ってんでしょ!ゾロのバカ!!」
「な!?」






どうせ。


どうせゾロは、






(そんなの出来やしないでしょ)

はじまりのいたずら(ZN/海賊)

世の女の子達が、恋にお洒落にと目まぐるしく毎日を送っている頃。

あたしは血の滲んだペンを握って、枯れ尽きた涙を一人流してた。


海図を書いて。
書き終えれば海へ出て。
荒稼ぎして、また海図を書く。

いや、書かされた、かな。


海へ出れない間にも稼げないかと、ある日新聞を開いた。




そして目に飛び込んできた、ロロノア・ゾロの記事。




気まぐれで開いたページだった。
たまたま目の前に記事があった。




海賊狩りのゾロ。




それが見出しで、その下に綴られた稀代の海賊狩りの武勇伝。

次々と名の知れた荒くれ共を斬り倒して行く、海賊狩り。

三本刀を携えて、ついでに助けられた女達の心も拐っていくとかいかないとか。


輝かしくも血生臭い活躍譚の横に、写真が一枚。


いかつそうな肩と背中、少し嫌味を含んで笑った口元。

骨ばった刀を掴む手と、左耳の三連ピアス。

肝心な目元はフレームの外。


だけどそれが、逆に素性を明かさない正義のヒーローのように思えて。


ロロノア・ゾロ。


奇しくも、同じイーストブルーで剣を名前を振るっているらしい。






もしかしたら、

なんてガラにもなく。






でも、アーロンの首に賭けられてる額も低くはないし。
それに強さだって、申し分ないはず。

たとえロロノア・ゾロが賞金稼ぎだけが目当ての最低な男だとしても、強いヤツを倒してさらなる強さを求める剣術バカでも。


いつか、もしかしたら。






「女一人に何人がかりだ」






少女漫画だって、こんなにうまくいかない。


夢見てた平凡な出会いより、ずっと突拍子なくて。

でも、密かに夢見てた出会いでもあったりして。




ボロボロになるまで肌身離さず持ち歩いて、辛い事がある度涙を落とした記事の写真。




白黒じゃ分からなかった、ロロノア・ゾロの髪の色。

だけど、自信ありげな嫌味な口元の笑いと左耳の三連ピアスが。

彼なのだと。





『いつか、もしかしたら。

でも、本当は信じてた。


彼は助けに来てくれるって!』






そう終わってたあたしの日記。

タイトルは、ロロノア・ゾロと出逢った日。


この日を忘れないように挟まれた新聞記事は、ボロボロで変色も酷くって字なんて読めたもんじゃない。

だけど、写真の縁にこっそり書かれた文字だけは鮮明で。






「He is my fate.」






彼は私の運命。






「まさか、よね」


クスクスと笑い出したら、止まらなくなって。




コンコン。




「はーい」
「俺だ、入るぞ」




本当、まさかよね。


傍にあった愛用のペンをするりと滑らせて、ほんの少しスペルを付け足した。






He is my fated lover.






(こんな出会いがあるのなら、運命だってあるかもしれない!)
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