話題:弁当


夜(PM7時半)の食料品売り場でお弁当とお惣菜のコーナーを見ていたのです。すると、其所にヨーダ仙人(スターウォーズ)によく似たお爺さんがゆらゆらと揺れながらやって来ました。揺れながら──と言っても酔っ払っているの ではなく、年齢(推定92才)故にナチュラルに揺れている感じです。 

人生の先輩でもあるジェダイの騎士に敬意を表して少し横にずれると、センターポジションを得たマスター・ヨーダは[助六いなり寿司セット]に手を伸ばしました。ふむ。スターウォーズ・エピソード0【ジェダイの夕飯】これにて完結。……と思いきや、ヨーダ老は手に取った[助六寿司セット]を戻したのです。そして今度は[幕の内弁当]を手に。翁と幕の内弁当、納得の組合せです。……と思ったのも束の間、[幕の内弁当]も棚に戻します。助六か幕の内か?鋭い目付きで二つのお弁当を見つめるヨーダ老人。かなり悩んでいるようです。

十秒……二十秒……速差し将棋なら崖っぷちです。ヨーダ名人、戦わずして敗北か!?

が、投了寸前、その右手がスッと降りたのです!果たして名人が選ぶのは[助六寿司セット]か[幕の内弁当]か!?

元横綱・輪島を、彷彿とさせる黄金の右手は[助六寿司セット]に向かって真っ直ぐに伸びています。やはり初志貫徹……ところが、その手は[助六寿司セット]を越え[幕の内弁当]に……やはり決め手は品目数と栄養バランス……と思わせて、そこから更にググーーーっと大きく左にカーブし、“まったく違う弁当”をむんずと掴んだのです。

その名は[ガパオライス]!

(おい!)と心の中でツッコミを入れるも、お年寄りがガパオライスを食べてはいけないという法もないので当然口には出しません。

その後の様子から推察するに、どうやら好奇心が安定感に優ったようです。ガパオライスはどんな味なのか、それが気になり、その気持ちを押さえきれなくなったのでしょう。

人を見かけで判断してはいけない。改めてそんな事を思い知らされた一件でした。もしかしたら、そこの腰の曲がったお婆さんの耳に見えているイヤーピースも補聴器(集音器)ではなく最新のワイヤレスイヤホンで、そこにはYOASOBIか何かが流れているのかも知れません。


〜おしまひ〜。