話題:短文



中学時代の友人に誘われ久々の帰省、地元のボウリング場に集合する。来るのは4、5人だろうと思っていたが、蓋を開ければ私を含めて13人。ちょっとした同窓会だ。年相応に老けた奴もいれば若々しい奴もいる。三浦、和田、比企、北条……懐かしい顔ぶれ。皆、元気そうで良かった。

それにしても【竜宮ボウル】がまだ存在していたのには驚いた。子供の頃にちょっとしたボウリングブームがあり、その頃よく通っていたボウリング場だ。久しぶりの【竜宮ボウル】は建物も内装もくすんで、随分とくたびれた感じに映るが、考えてみれば昔からこんな感じだったような気もする。壁には未だ[さわやか律子さん]のポスターが貼られている。

とにかく久しぶりのボウリング。30年ぶりぐらいか。まったく感覚が掴めない。どうやら既にボウル選びからして大きく間違えたようだ。手の大きさに対してボウルが小さ過ぎたのだ。勢いよく投げた迄は良かったが、穴から指が抜けず、投げたボウルと共に体ごとピンに突っ込んでしまった。

ストライク!と同時に体はボウルごとレーン奥の奈落の底へ。

……まさか、レーンの奥底にあのような世界が広がっていようとは!

楽園?桃源郷?エデンの園?おやま遊園地?──適切な言葉が見つからない。とにかく驚きの世界がそこには広がっていた。残念ながら、これ以上話す事は出来ない。乙姫さまに固く口止めされているので。

浦島太郎の話が頭にチラつくも、あまりの楽しさに3日ほど滞在した後、お暇(いとま)を告げる。ま、なるようになれ、だ。

投げたボウルが戻ってくるトンネルみたいな所からお土産に渡された玉手箱と共に帰還を果たす。浦島的に考えれば少なくとも30年ぐらいは経っているはず。そう覚悟していた。が、そこに広がっていたのは3日前と同じ、12人の友人たちがボウリングに興じている風景だった。もしや、元の時間に戻って来たのか?

それも違っていた。こちらはこちらでちゃんと3日経っていたのである。浦島太郎でも猿の惑星でもなく普通にレーンの向こうに行って帰って来ただけの話。

と言うか……お前ら、家にも帰らず3日もボウリングし続けているとは、どうかしている。久しぶりに旧友と再開し、楽しくて帰りたくない気持ちは解るが、仕事はどうした?家族はどうした?いったい料金は幾らになっているのだ?

……と言いたい所だが、あちらの世界を知った今、そんな些細な事などどうでも良い。私の帰還祝いも兼ねて更に2日ほどプレイして帰る。恐れていたお会計は1人630円。5日間ぶっ通しでプレイしてこの金額。安い!安すぎる!よし、また来よう。

帰りに皆でファミレスに行き食事をとる。お土産に貰った玉手箱を開けると……『こ、これは!』。一同が思わず絶句する。

そこには、とてもとても、この世の物とは思えないダサいボウリングシューズが入っていた。



〜おしまひ〜。