話題:気になること


                 
日傘男子など無縁の私でも、流石に近年の夏の暑さはチト厳しい。6月末の今でさえ昼間の日差しはかなり強烈で7月8月が思いやられる。

そんな或る日のお昼過ぎ。駅前の繁華街を歩いていると、前方から歩いて来たひとりのお婆ちゃんが急に立ち止まった。何気なく視線をやると彼女は手提げ袋から歯みがき粉のようなチューブを取り出した。勿論こんなところで歯を磨く訳はない。化粧品のクリーム、恐らくは日焼け止めのクリームだろう。すると案の定、彼女はチューブから絞り出したクリームを手に取ると顔に塗り始めた。

人通りのかなり多い駅前のど真ん中でクリームを塗り始めるのは決して上品とは言えないが、しかしまあ、この日差しの強さ、一刻も早く塗りたくなったとしても不思議はない。

彼女は顔一面にクリームを塗った後、次は両手にも丹念に塗布し始めた。これは日焼け止めというより保湿か。まあ、ここまでは普通の夏の光景だ。が、この直後事態は急転する。

これでもかというほど入念にクリームを塗りたくった両手を、カメレオンのような舌でペロンペロンと舐め回し始めたのである。

日焼け止めクリームではなかったのか?或いは、最近の日焼け止めクリームは食べても美味しいように作られているのか?

もし日焼け止めでないのなら、ホイップクリームとかカスタードクリームなのか?そして、最近のホイップクリームは顔に塗っても良いように作られているのだろうか?

目が合う。私の中のJアラートが鳴り響く。すぐに目を反らし、その場から退散した。

夏の始まりの炎天下に突如として開いた扉。そう、異次元へと続く扉は貴方のすぐ隣にあるのかも知らない……。


〜おしまひ〜。