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脱色物語2



白雪と言う名字が、鈴は嫌いだった。


童話の白雪姫≠ニからかわれるから。

だから自己紹介の時も、名字を名乗らない。それでよかった。
友人も先輩も後輩も、それを知ると、決まってこう言った。


綺麗な名字なのに勿体無い


皮肉にしか、聞こえなかった。お前にそんな名字は似合わない。
そう言われているような感じがして、益々嫌いになった



「…確かに、白雪姫じゃないですよね」


吉良ははっきりそう言った。


「お姉さんでお母さんで、でも誰よりも子供で、無邪気で邪気で怖くてお人好しで強くて弱い。
矛盾だらけの鈴さんは白雪姫なんて言葉じゃ、表すことなんて出来ない」

「…何が言いたいわけ」

「童話のお姫様如きで収まるほど、鈴さんは小さくないですよ」

「…誉め言葉?」

「勿論。付け加えるなら、年齢と容姿の反比例と実力と階級のズレもです」


――…僕よりずっと年上なのに容姿は僕より若くて、確実に隊長クラスなのに十一番隊の四席。



「……」

「でもそれが嬉しいんです」

「は?」

「他隊とは言え、副隊長命令が出来ますし」

「お前…私に何させたいんだ」

「何、と言われましても…」


鈴を抱き上げ、自分の膝の上に乗せた


「…ちょっ、!?」

「非番の日にこうやって2人きりでのんびりできますし…」

「うっ…」


それは否定出来なかった。
のんびりなんてあまり出来ない日々の中で、吉良との時間は少なからず安息の時となっていたのだから。


「鈴さん、名字を名乗らないのは…悲しくありませんか?」

「慣れた。どうも思わないよ」

「…僕は名乗ってほしいです、白雪でなければ良いんですよね」

「は…?」

「吉良鈴、と言うのはどうでしょう?」

「へ…?」

「ずっと、僕の傍に…いてくださいませんか?」

「……っ!」

「ダメ、ですか?」


ただでさえ垂れている目尻をさらに下げて。


(そ、そんな顔で私を見るな…!!滅茶苦茶可愛いじゃんか!!)



「……下流とは言え、立派な貴族。それに流魂街80地区出身の私の血をいれるのは、どうかと思う」

「理屈を並べて、逃げる気ですか…?」

「ダメか?」

「そんな理由なら、絶対逃がしませんよ」


そう言って抱きしめる力を強くした、意思の強い目はあたしを射止めて離さない


「…」

「どんなに遠くへ逃げたって絶対探しだして捕まえてみせます」


……あたし、この目に弱いんだよなぁ。


「………イヅル、」

「!!」

「こう言う場合はイヅル様とお呼びするべきなのかな」

「鈴、さ…!」

「ふつつかものですが、宜しくお願い致します」












「…………き。」

「き?」

「聞いとるこっちが恥ずかしいわ、ボケ!!」


平子はそう言ってテーブルを叩いた


――現世のファーストフード店。
休暇を貰って、親友の平子のところへ来た。唐突に吉良に口説かれた時のことを聞かれたから、喋っただけなんだけど。



「やぁ、吉良はマジかわええよ!」

「誰がのろけ話せぇ言うた!」

「未だに独り身だからって妬むな!」

「うっさいわ、余計なお世話や!!」

「好きな子の一人や二人いないの?」

「………や」

「え?」

「せやから………お前や」

「……うっそ」






い、今物凄いカミングアウト受けたんだけど。











*****



続く、…?


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プロフィール
キサさんのプロフィール
性 別 女性
誕生日 8月11日
血液型 B型