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【怪我ならぬ、インフルエンザの功名】15

【怪我ならぬ、インフルエンザの功名】15





【Side:N】

…さすがに大好きな人に【気持ち悪い】と言われるのはショックだ…俺は気を引き締め、はにかむ様に少しだけ笑いヒロさんを撫でる。

「そんなに変な顔してましたか…?」

少ししょんぼりしながらそう呟けばヒロさんはクスッと小さく笑ってくれた。
俺もつられ小さく笑えば……

“ぐうぅ〜…”

「…〜っ!!……の…野分…腹減った…」

また静かな空間を破った元気なヒロさんのお腹の虫に俺はたまらず声を上げて笑ってしまった。





ちゃんと昆布と鰹でダシをとったシンプルな鍋。
具材は白菜と葱と玉ねぎ、豚肉とそちらもいたってシンプル…これなら胃にそんなに負担にはならないだろう。
久々に使う卓上コンロを引っ張りだし、二人で鍋をつつく…
俺はポン酢、ヒロさんは俺が作ったゴマだれが気に入ったのかそれで食べている。

「ふー…ふー……うん…んまい…」

軽く冷まし、少し長めに煮た柔らかい野菜を頬張り美味しいと告げられ、鍋のせいではない暖かさに心が満たされる。

「良かったです、食欲が出て。…シメはおうどんで良いですか?冷凍庫にご飯残ってますから、お雑炊も出来ますよ」

ココ最近の忙しさが嘘のよう。
こうしてヒロさんとお鍋つついて、他愛ない話をして……ダメだけど、このまま時間が止まれば…とか…ずっと二人きりで居たい…とか考えてる俺がいる。

「…うどん……いや、野分の雑炊うまいからな…卵入りの雑炊が良い」

いろいろ考えながらぼんやりしていると…答えてくれたヒロさんに小さく笑いかけて頷いた。

「……なぁ野分…なんか悩みか?」

「…え?…いえ…」

ヒロさんは鋭い。
でもそれは嬉しくもある…他人には解ってもらえない、俺の些細な表情の変化を読みとってくれる。

「…うそつくな。顔に書いてる…話、きくくらいなら出来るからな」

―――なんて―――
なんて暖かな人なんだろうか…愛しい―――
…俺は結局、笑って下さい、と一言付け足しながらさっき考えてた事をぽつりと呟いた。

「…………」

呆れたのかな…ヒロさんは俺の話を聞いて黙って俺を見つめてくる。

「あ、はは…すみませんガキみたいな事い―――」

「―――野分っ!」

笑って誤魔化そうとした俺に、急にヒロさんが立ち上がり見下ろしてきた。
怒らせてしまったかな、と俯いた俺の頬に暖かな手が触れ、驚き顔を上げれば……

「……っ…ンッ…」(ちゅっ)

…ヒロさんからキスされた―――

「…ヒロさ…?」

呆けたまま彼を見つめれば…見る間に茹でタコになった。

「…っ…そ、そりゃ…ずっとは無理でも…これから先は、ずっと…先は…多分…二人でゆっくり出来るかもしんねーだろ…」

真っ赤な顔だけど、真剣な顔で…『ジジイになったらお前も俺も隠居するさ』と…
あぁ……やっぱり…あなたを好きになって良かった。
ヒロさんは、俺との未来を一緒に考えてくれるんだと思った瞬間、心と一緒に目頭が熱くなってしまった。

「…はい。…はい。…これから先も、一緒に居ましょう、いえ…一緒に居てください…」

俺はヒロさんと違って陳腐な言葉しか言えない…だから、ギュッと手を握るしかできないけど…ヒロさんがその俺の手を握り返してくれたのはきっと…俺の気持ちが伝わったと思って良いですよね?

「…ッ…馬鹿。もう…早く雑炊作れ、米食わないと腹いっぱいにならない…」

照れたヒロさんは握った俺の手を摘み、誤魔化すようにそう答えたので俺は彼に誤魔化されて大人しく雑炊を作る。

「…卵…固くしすぎるなよ」

ふわりと笑いながら雑炊を作る俺の手元を眺めるヒロさんに、可愛いですと告げて…臑を蹴られたけど、それすらも愛しいなんて…幸せボケしたかな―――





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【奥様は狼】9(※ヒロ×のわ)野分受!!

【嫌よ嫌よも好きの内!】4

※少々暴力表現があります。野分がヒロさんに手を上げるのが許せない方は閲覧を控えて下さい。



【嫌よ嫌よも好きの内!】4





頭が真っ白っつーのは、こう言う事かな…
なにも考えられない。
ただ…ドクドクと早鐘を打つ心臓が次第にゆっくりと変わっていくのが分かった。

「…のわ…が…?」

「…うん、そう。野分が、合コンに、行きたいって…」

とてつもない恐怖が心臓を抉る。
じっとりと、津森の言葉が耳から血管を巡り、ゆっくりと…まるで毒のように呼吸が止まる。
だって…有り得ないだろ?あの野分が…浮気だなんて…

「…上條さん?おーい、大丈夫?」

俺の目の前で手を振られ、のろのろと顔を上げる…おかしいな…津森の顔…見えない…

「………野分に……俺、要らないって…事?」

「え?ちょ、上條さん!?泣かないで……」

津森が何かを言ってる…だけどちゃんと聞き取れなくて、俺はただホロホロと涙を流すしかできなくて…
男同士なんだ、いつかはこんな日がくるかもとは…思って―――

「…――ヒロさんごめんなさい、着替え忘れました―――」

と…偶然にもその時に風呂場から野分が帰ってくる…あぁ…足音が近いのに…
その瞬間、俺は無意識に俺を掴む津森の腕に縋るように抱きついてしまった。
―――怖い怖い怖い!野分の顔が見れない…

「ヒロさん?すみませ―――」

ガチャっと扉が開いた途端…俺の涙腺は完璧に崩壊してしまった。
ボロボロと情けなく涙をこぼし、震える体を誤魔化すように津森の胸にすがりついてしまう。

「…着替え、持ってけば?」

俺は津森にしがみつきながら、低く、涙声でそんな事しか言えなくて。
浮気をしたんだ―――そう思えば耐えられず、捨てるなら捨てれば良い!…と…
何を考えてかは知らないが、今は静かに泣きじゃくる俺の背を撫でてくれる津森の手が温かく感じた。

「………………何を、してるんですか?」

低い…低い野分の声。
こいつでもこんな声出せるんだ…なんてぼんやり考える。

「…うるさい、……っ…」

野分の声にピクリと肩が揺れたのが津森に伝わったのか、まるで俺を守るように津森が俺を抱き寄せる。
俺は藁にも縋る思いで津森に抱きつき…香水臭い上着に涙を擦り付け拭った…瞬間―――

「…何をしてるんですと聞いてるんです!!ヒロさん!!」

野分の罵倒と共に肩を思いっきり掴まれ津森から引き離された…あまりの力強さに俺はソファから転げて床に体を打ち付け、強打した左肩に激しい痛みが走った。

「つっ!!…な…何すんだよボケ!いて―――」
(パシンッ!!)

―――何が…起こったのだろう?―――

「おまっ、野分!ちょっと待て、話を―――!!」

左の頬に鋭い痛みを覚え、ふと見上げた先の野分の表情と、手の角度で…頬をぶたれたのが解った。
尚も俺にズイッと足を踏み出した野分の前に津森が立ちはだかるが…。

「…先輩、やっぱりタクシーででも良いから帰って下さい。」

俯いたまま、まるで嫉妬の焔に灼かれたかの様な声音で野分は呟き、津森に自分のポケットから出した財布を投げつける。
…何でだよ…女の方が良いんだろ―――?

「だから話を聞け、これは―――」

「―――先輩。…俺、今あなたを殴りそうなんです。…殺しそうな程…だから、帰って下さい。」

…怖い…野分が…
見たこともない、つり上がった眉……いや、あの時…留学後の、宮城教授とのやり取りの日のような…
今、年齢を重ねた野分は幼さが抜け一人の男の顔をしている、嫉妬に狂った一人の男。

…俺は…不覚にも…この顔に、もう一度、惚れてしまった―――

「……はぁ…分かった、わかった…とりあえず後日でも話しよう。…ただし、ちゃんと上條さんとも話しろ、それから暴力はやめろ。」

「…あなたに言われるまでもないです。もう…手は挙げませんから…」

顔は合わせず、俺をぶった手を骨が軋みそうな程握り込んだ野分がそう答えれば、溜息まじりに津森がゆっくりと足を玄関に運ぶ。
去り際にもう一度…『大切なら絶対殴るな』と…うっすらと津森の声が聞こえた。
津森が扉を出てしばらくし、野分がゆっくり玄関へ鍵を閉めに部屋を出た瞬間…

俺は今更ながら…体が震え始めた―――





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【更新停滞お詫び】

こちらに足を運んで下さってる心優しいお客様方へ…

すみません。
今の時期は仕事がら多忙過ぎて…家に六時間しか居ない日とかありまして…
文字が今までの様に書けません。

本来は絵描きゆえに文字より絵はパパっと描けるんですが。
現在は文字を少しずつしか書いてないのでなかなか更新出来ません。
大変申し訳御座いません…

お詫びの品にもなりませんが落書きを一枚…
ヒロさんの九割裸体な絵で申し訳御座いません。

ではまたちまちまと…

本当に申し訳ありません。



夜来 烏哭 拝

【怪我ならぬ、インフルエンザの功名】14

【怪我ならぬ、インフルエンザの功名】14





【Side:H】

暖かい、野分が先程まで着ていたトレーナーをゲットし、大きさにダボついた首筋の生地を引っ張り上げた。
顔半分を布につつみあげた所で、フワリと香る野分の匂いに思わず顔が綻ぶ…さっきまで泣いてた気持ちとは裏腹に、野分に包まれるかのような安心感が俺の心を満たしてくれた。

「ヒロさん。さっきからクンクンにおってますが…俺の服、クサいですか…?」

あまりに野分の香りに夢中になり過ぎて近付いて来た奴に気付けず、ふいにかけられた言葉に慌てて否定した。
野分が臭いなんて思った事は今まで一度もない。
口先で『汗臭い』とか…言ったことはあるけど…頑張って働いて来たり、俺の為に走ってきてくれた証なんだ…本当は臭くなくて、一生懸命な野分の匂いだから好きだ…なんて言ってやれたらこんな事言わせずに済んだんだがな……

「―――だからクサくなんか…―――っ!!今のなし!」

そんな事を考えながら早口に喋れば…何やら俺はとんでもない事を言ってるらしい…見る間に野分がパアァーッ、と花が咲いた見てぇな面しやがったから俺は激しい羞恥に襲われ、顔にどんどん熱が集まり滲む涙を必死に誤魔化そうと『何もない何もない!』と首を振るしか出来なかった。

「…違うんですか…?俺の匂いって嫌いですか…?やっぱり変な臭いしますか…?」

そうすれば必死こいて否定してしまった俺にカウンターパンチ…俺の苦手な【必殺技・野分のしょんぼり顔】が炸裂した…しかも目前で…
見つめる黒い視線に耐えきれず、俺は弄ばれるかのように首をまた左右に振ってしまう。

「違うって!…う、ぁ…だから…その……野分の匂い…嫌いじゃない……落ち着くから…嗅いでた……変な事してて、ごめん…」

結局、誤魔化しようもなく白状させられ…俺は今穴があったら入りたい精神でボソボソと心境を語って…しまい…最終は聞き取れるか判らない声で謝るしか出来なくて。
これ以上なにが言えるのだろう?なんて悩んでる内に、無意識に手が伸び野分の少し固い髪を梳いて…気付けば頭ごと抱きしめていた―――

「っ!ひ…ヒロさん!?」

そうすれば照れてわたわた慌てる野分が目に映り、可愛さに更に抱きしめていた
…あ、野分のツムジ…普段は頭一つ上の位置にあるため見ることのない場所を目に…つい可愛いな…なんて思いキスをする。
そんな場所だけキスするってのもなんだな、と、あらゆる場所に口付け誤魔化しつつしっかり頭の渦巻きに俺は虜になった…面白ぇ…ぐるぐる渦巻いてる…

「…ごめん、拗ねるな。…クサくなんかない。野分は消毒液と陽向の匂いだ…」

可愛さに笑うのを耐えながら謝罪と、ほんの少し素直になってやろうと言葉を紡ぐ。
本当にこいつは暖かい匂いだから…消毒液の臭いなんか嫌いだったけど、野分から香ると…病院で小さな子を救う為に必死になってる野分が連想され愛しく感じるから。

「ヒロさん…有難うございます…大好き…大好きです。」

愛しさに包んでいた筈の温もりに、不意に愛の告白を受け抱きしめられて、次は俺が固まる番だった。
その愛しい男に顔を覗き込まれ、風呂に入ろうか?と問われ……素直に…離れたくないと思った、だって…俺はお前の匂いも体温も大好きなんだ―――
だから『側にいろよ』と言葉を紡いだ……瞬間、深く口付けられてしまった。

「ンッ、は……ヒロ、さ……んっ、はぁ…は…」

欲情を掻き立てるかのようなキスと、熱い野分の息遣いにゾクリと肌が粟立つ。
俺の弱い部分を知り尽くした熱い舌はどんどん欲を駆り立てるかのように俺の口腔内を蹂躙する……ヤバいっ、気持ち良い…
上がる息に休養中なのに下半身が熱くなり、慌てて野分を引き剥がし『急に何だ』と叱りつけた。

「…って、ごめんなさいヒロさん!苦しかったですよね……あんまりヒロさんが可愛くて…我慢出来ませんでした…」

乱れる呼吸に少し咳き込み、必死に謝る奴に、密かに笑みがこぼれてしまう。
俺の背中をさすりながら差し出された暖かな茶にゆっくり手を伸ばし口をつけ…同じ茶葉なのに、どうしてコイツが入れると甘く感じるんだろう…なんて思った。

「…ふぅ……お前は突発的すぎる……べ、別に嫌じゃ…無いけどよ…」

茶を啜り、ゆっくり息をついて赤くなったままの耳を撫でる……耳…熱い…。
…なのにコイツは…っ!

「…あんまり可愛い事言ってると俺我慢できなくてヒロさんを襲っちゃいますよ?」

だと!?
…信じらんねえ…なんつー事言うんだ…俺の顔は茹でダコだ。
いつもなら殴ってるけど、今日は特別。
ちょっとむっすりしながら『…変態……病人襲うなよ…』と告げたら……

「………………野分…顔、気持ち悪い…」

何とも言えない、笑顔とも泣き顔とも言えない…口の端をピクピク震わせ、必死にニヤついたエロい顔を誤魔化そうとしていた…
野分に身の危険を感じた俺は、青ざめながら身を引いた―――





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