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【君の笑顔が見たくて】3

【君の笑顔が見たくて】3



…あ、あからさまなプレゼントを渡してしまったが…ペアルックとか俺はバカじゃないのか。
夏場なんか無地のやっすいTシャツとかでペアに近いのに、今回買ってしまったパジャマは明らか過ぎて今更ながら異常に恥ずかしくなった。

「…やっぱり…もっと違う方が良かったかな…で、でもこのパジャマは俺が気に入ったから“ついで”に野分に買ってやっただけだしな!」

独り言なんて恥ずかしすぎる事を呟きながら買ってきたおかずを暖めなおす。
特に何も言わなかったと言うことは食欲は普通にあると言うことだと解釈し米を大盛にしてやった。
暖めなおしたおかずを並べ、冷蔵庫から漬け物でも出してやろうと覗けばケーキも見え、恥ずかしいがせっかく買ったのだからとテーブルにそれも置いた。

「……き、着てくれなかったらどうしよう…」

食事の用意を済ませ、ビールを一口飲み野分を待つ。
その間、たかだか30分足らずなのに妙に気恥ずかしくてソワソワしながらダイニングテーブルに突っ伏してしまった。

「…ヒロさん?眠いならベッドで寝て下さいね?」

溜息混じりにツンツンとケーキの箱をつつけばいつもより早く風呂から上がった野分が側に立っていて正直ビビった。
俺、風呂上がる音にすら気付かないくらい野分の事考えてたのか…。
ドキドキしながら現れた野分を見上げると―――柔らかなタオル地の、紺色…俺とお揃いのパジャマに身を包んでいてジンジンと顔が赤らんでしまった。

「…ね…眠く、ねぇよ。…ほら飯く…ッ!」

「ヒロさん…。ありがとう、好き。大好きです…暖かいです。」

のそのそ身を起こした途端に後ろから抱きしめられた――
ふわりと柔らかな感触が肩から首筋に伝わりゾワッと妙な気分が沸き立ってしまい硬直してしまう。

「う、うん。…いや、たまたま。たまたま見つけてな!俺が気にって、すげー触り心地良かったから…その…サイズ違いがあったから、たまたま偶然、野分に…やろーと思ったからであって――」

「たまたまでも偶然でも、ありがとうございますヒロさん。生地も気持ち良いですが、ヒロさんの気持ちが暖かいです。」

ゾクゾクと湧き上がる感覚に口早に喋りまくり、それを野分がやんわりと包むように答え…ギュッと強く抱きしめられ幸せに心が震えた。
なんだか…訳も分からず目頭が熱くなり回された腕に、そのパジャマに顔を押し付けた。

「…ん…気に入ったか、なら…良かったか………誕生日、おめでとう…生まれてきてくれて…ありがと、な…野分…」

「…俺、本当に嬉しい。ありがとございます…」

「…ったく…早く、飯食え。…その、ケーキもあるから…」

きっと野分は気付いてる、ほんのちょっと泣いてしまった俺に。
早く食えと言いつつ、俺が野分の腕を放すまで、涙が落ち着くまで髪にキスしてくれた――





「ごちそうさまです!」

「おう。腹膨れたか。」

ちょっと冷めてしまったご飯を平らげニッコリ笑う姿に俺までつられて笑ってしまう。
茶を啜りながら満足げに頷き、チラッとケーキの箱を見て、開けても良いかと問われ頷いた。

「女子供じゃねーし、別腹かは知らんが…入るなら食えよ。」

「あ。わぁすごい!可愛い…オレンジ…これカボチャのケーキですね?小さいし…ヒロさん一緒に食べませんか?入らない?」

ケーキの箱から取り出し、くるりと回して眺めつつキラキラした目で見つめられ…仕方なく『なら…食う』と答えてしまった。
嬉々としてフォークを二本持ってきて、はい、と手渡され直接食うのかと笑ってしまった。

「あ、ちょっと待ってヒロさん…これ写真撮りたいです!」

「…好きにしろ。」

目の前でカシャカシャと携帯で写真を撮る良い年したでっかい男…その姿に可愛い…と思ったのは内緒だ。

「よし。じゃあ頂きますね、……ヒーロさん…あーん…」

「………あ゛ぁ゛?…こら、自分で食えよ…」

「…ヒロさん………あーん……」

「…っ……うるさい!誕生日、おめでとう野分!!」

小さな攻防戦…それなりの野郎同士で馬鹿げてる。
でも…年に一回だし…と諦めて。

“Happy birthday”とかかれたチョコレートのプレートを野分の口に突っ込んでやった。



些細な事でも君となら…
一番の喜びなんだ―――


《Happy birthday to NOWAKI》

この世に生まれてきてくれて…
側にいてくれて…

ありがとう…愛してる―――









End.

【君の笑顔が見たくて】2

【君の笑顔が見たくて】2



俺は今仮眠室で待機中だ。
朝までに何もなければ帰れるんだが…
正直帰りたい、子供達の容態も安定して居るし当直は津森先輩がいるんだから。
しかし何かあった場合は先輩一人だと大変だしな…

「…はーぁ…寝とかなきゃ駄目なんだろうけど、眠れない…」

仮眠室の安っぽい簡易ベッドで寝返りを打てばギシッと大きく軋む。
…同じ軋みでもヒロさんとベッドを軋ませたい…なんてバカな妄想をしてしまい大きく頭を振る。

「……ヒロさん…今年も何か用意してくれてるんだろうな。」

ふと見た時計は午後十時半。
今日は実は俺の誕生日だったりする。去年は俺が至らない為にヒロさんに迷惑を掛けてしまい、申し訳なさを思い出した。
チッ、チッ、と静かな部屋に響く時計の音に溜息を何度しただろうか?
パチンと開いた携帯電話には何のメールもなくて…ちょっと寂しい。

「…会いたい、ヒロさん………俺、成長してないな。毎日毎日ヒロさんでいっぱい…」

勿論ヒロさんのせいになんかしない、けど…ちょっとだけ、ヒロさんの事を考え過ぎて仕事に支障をきたしてしまった事もあり情けない。
こんな俺をヒロさんは“重い”なんて一言も言わず、しっかり背中を押してくれる。
やっぱり考えれば考える程、ヒロさんは俺の全てだ。
携帯電話の中に納めたヒロさんの寝顔写真を眺めていたら響いたノックの音に顔をあげる。

「はい?」

「あ、起きてたか、入るぞ。」

「あれ先輩、どうしました?交代ですか?」

部屋に入ってきたのは津森先輩で、欠伸を一つし体を起こした俺のベッドに腰掛け片手を上げる。

「んーや。ちょっとな、子供達の容態も安定してるし、急患も今はいないしな……俺からのバースデープレゼントをやろうかな、てな?」

ニッと口を持ち上げ、先輩はポケットから棒付きの小さい飴を取り出し俺にほり投げてきた。

「あ、飴……ありがとうございます。」

…それを受け取りながら、これをくれたのがヒロさんなら俺はもっと嬉しいのにな、と飴を見つめていれば先輩に苦笑いされてしまった。

「お前顔に出過ぎ。…あーもー…多分大丈夫だけど、緊急時呼び出し有り…でなら帰っていーぞ。特別プレゼントだチクショーが。」

「…え!…いや…でも俺…」

「ったく、グダグダ言うな、素直に受け取れよ?…まあ実際お前、一週間は家に帰れてねぇしよ、流石に少し休め。」

津森先輩のセリフに驚きもごもごしてしまうも、ポンと頭を叩かれホウッと息をはく。

「先輩…ありがとうございます!」

「おう。取り敢えず呼び出しなきゃ明日は昼からな、たっぷり働いて貰うから覚悟しろよ!」

そうして俺は急いで帰宅の途につき、自転車を漕ぎながらヒロさんにメールを打ったが、マンションについても連絡がないから寝てしまったかと諦めながら部屋を見上げると―――

「あれ、電気ついてる…っ、ヒロさん…」

起きてるかもしれないという気持ちと寝てるかもしれない気持ちで。なんだかドキドキしながらエレベーターに乗り込む、部屋の鍵をゆっくり開け室内に足を踏み入れれば仄かに香る良い香りにヒロさんが浴室に居ることが知れた。

「ヒロさん!ヒロさんただいま、帰りました!!」

俺はたまらず浴室をノックし声をかけると中からもごもごとヒロさんの声が聞こえ、開かれた扉からヒョコッと顔だけ出して『おかえり、お疲れ様』と赤い顔で告げられ疲れがふっとんだ!

「…帰れたんだな、飯は?買った惣菜ならあるけど…食うか?」

「はい!頂きます!」

「…ん。じゃあ暖めてやるから…その…まだ風呂暖かいし入れば…」

そう言いながら姿を現したヒロさんの着ているパジャマに目がいった。
タオル地のような少しふんわりした淡いベージュのパジャマは…初めて見るものだった。

「あ、はいじゃあお風呂頂きますね?…ヒロさんそのパジャマ初めて見ました。」

「…うん。…い、良いからさっさと入れば!湯が冷める!」

「あ。じゃあ入りますね。」

俺の問いに異常に赤くなってまくし立てるヒロさんに首を傾げながら俺はヒロさんの残り香のする風呂にいそいそと入る。

「あ、パジャマ…そこに置いてるのでよかったら着ろ。」

パタンと扉が閉まると聞こえた声に耳を傾け棚の上を覗けば―――
そこには先ほど彼が着ていた物の色違いの、濃紺のパジャマが置かれていてて一気に顔に熱が集まった。

可愛い可愛いヒロさん…彼はそう告げるとパタパタと急いでキッチンに駆けていった―――









Next.

【君の笑顔が見たくて】

お前に出会えて良かった。
いつも口は悪いし素直じゃないけど…今日、この日くらいは…
愛を伝えるにはどうすれば良いのだろう?



【君の笑顔が見たくて】



「…はぁ…」

トントン…机を叩いても、溜息をついても別に答えが出て来る訳でもない。

「あー………俺は料理も出来ないしな…」

そう。
今日は野分の誕生日なのだ。
昨年、何気なく呟かれた野分のセリフに本当の誕生日ではないと解ったが、やっぱり誕生日は誕生日なんだ。
たとえ捨て子でも、この世生まれて来てくれて…側にいてくれる野分を祝ってやりたい。

「…どうしよう。…何も用意してねぇ…デパートで惣菜と小さいケーキでも買って…」

多分野分ならこれくらいでも十分喜ぶだろうが、やはりプレゼントの一つくらいやりたい。
今回は去年の教訓もあり、仕事も忙しい為にレストランの予約は止めといた。

「…………なに、欲しがる…て、ないわな。」

あいつは俺があげた物ならポケットティッシュですら喜びそうで全然思い浮かばない。
結局…何にも思い付かないままに時間は過ぎ、そのままデパートに足を運ぶ羽目になった―――







平日ともあり、そんなに混み合わない店内にホッと息をつく。
取り敢えず惣菜コーナーへ。オードブルの大皿くらいは…と思うが揚げ物ばかり目につきウンザリし、小さいプレートとサラダを買う。
足りなければ家に冷凍食品だが何かあったはずだ。

「……う…やっぱりスイーツ系は女が多いな…」

食事の後はケーキ…別に野分も俺も甘いもの好きと言うわけではないが、雰囲気は大切だろ。
近場のケーキ屋ではホールで買うとやはり多いし、デパートのケーキ屋なら本当に小さいホールケーキがあるから良い、見た目も結構良いもんだ。
しかしあまり此処には居づらい…俺は直感的に買うためにパタパタとスイーツ店を見ながら歩く。

「ふーん…結構あるもんだなぁ……ん?…あ…あれ。」

何気なく見ながら歩いてふと目に止まったのは、栗カボチャのケーキだった。そういやハロウィンも近いしな…
それは試験的に販売してるのか、ケーキとしては珍しく試食があったので…恥ずかしいがさすがに不味いもん食わせたくはないから味見をする。

「こちらの商品は砂糖の使用を半分にした低カロリーでして、栗カボチャ本来の甘みを生かした限定ケーキです!」

「…そうですか。うまい……あ、あの、これに誕生日用のプレートとか…付けられますか?」

口に含んだケーキは確かに砂糖の甘さよりカボチャの甘みが広がり、かと言ってべちゃっとした味でもないからこれなら飯の後でも前でも食えそうだ。
小さなホール…カットケーキ二つ分ほどの可愛らしいそれを指差し、少々恥ずかしいながらも、やるならしっかり…とばかりに聞けばチョコレートの小さなプレートを付けてくれた。

「こちらにお名前などお書きしましょうか?」

「え!あ…いや、いいです…大丈夫です。」

…こんな小さなプレートにわざわざ書かなくても良いだろう…多分、名前入れてやった方が喜ぶんだろうが流石にそこまでする勇気はなく、その小さなケーキを一つ買った。







荷物を抱えてしまい、しまったと思った…。
これじゃあんまり買い物出来ないなと思い、店内にはなかなか入れず通路をタラタラ歩く。
アクセサリーショップにふと目は行くも、女じゃあるまいし、そんなネックレスなど送る訳にもいかない。

「…どーすんだ…俺……」

そろそろ寒くなるし洋服にしようかなと思うが、野分は買ってやったらしょっちゅうそれを着る…大切に大切に着てくれるから、あんまり閉店間近で適当には買いたくない。
どちらにしろ洋服屋は通路が狭いから荷物を抱えては入れない…と諦めながら歩くと、特に目立つわけではないが寝具屋が目に止まった。

「ん?…あ、そういや…あんまり冬のパジャマなかったっけ…」

パジャマはやはり洋服より買う機会がない、だから増える事もないから一着くらい増えても良いんじゃないか?
その寝具屋は表通路に寝間着コーナーがあったのでそこをゆっくり見ることが出来た。









Next.

【雑記】拍手お礼


夜来で御座います。
寝る前に一言…

930dayに因み誕生日話を書いていたらやたら長くて三話くらいになりました…まだ途中なのでもしかしたら今日中にはアップ出来ないかもしれません…。

今から三時間くらい寝たら取り敢えず仕事行って、帰宅して間に合えば続きを書いて今日中にアップします(笑)

昔と違いアップもランダムになりつつあるサイトですがいつも拍手や暖かいコメントありがとうございます。

【拍手お礼】

■ゆきち様。
いつか携帯にご連絡しようとは思うんですが…毎回深夜になるのでいつも直接お礼が言えずすみませんっ
本当にいつもありがとうございます!

■ほわいとパンダ様。
いつもコメントありがとうございます!
楽しいメールもありがとうございます(笑)
いつか本つくりましょうね!赤ちゃんプレイ万歳、一緒にヒロさんを可愛がりましょう(笑)

はま様。
いつもコメントありがとうございます!
にゃんこヒロさん楽しんで頂けてますでしょうか!
これから野分の受難が始まる模様(笑)
楽しんで頂けるように夜来も頑張ります!

■拍手のみの方など、皆様に多大なる感謝を☆



夜来烏哭 拝

【団子より、月よりも君がいい】3

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