「自分が揃えた服を漁って何が悪い」
いや別に悪くはないですけど、というかユキトさんが揃えたんだ。
「エプロンの色は二十色揃えておいたんだが、まさか薄カボチャ色を選ぶとはな。予想外だった」
ユキトさんが赤や緑のエプロンを腕に抱えて振り返る。
「あとで替えのエプロン持ってくるから風呂にでも行ってこい。下着はここの引き出しに入れといたし、歯ブラシなんかの衛生用品はそこの収納ケースの中、石けんは風呂場だ」
まるで主婦みたいにてきぱきと説明すると、ユキトさんは部屋を出ていこうとした。
「あの」
お礼を言おうとした私にユキトさんはにやりと笑う。
「下着についての不満は受け付けないからな」
「どういうことですか」
ユキトさんは答えず、肘で扉を閉めてしまった。
こうなったら今すぐ確認する以外ない。
言われた通りクローゼットの下の引き出しを開けるとそこにはちゃんと下着が詰まっていて、全体的に白っぽかった。
試しに数枚出してみると、パンツは綿百パーセントでくまさんやうさぎさんがついている。
キャミソールも見事に綿百パーセントでお菓子のプリントがされていたりする。
ちなみにブラは白のスポーツタイプだった。
ここは気を使って豊乳パッド追加とかなかったんだろうか。
そこまで考えて、どうしてユキトさんが不満は受け付けないと言ったのか分かった気がした。
なんというか、さすがロリコン変態・メガネオレンジだと思う。
あ、この呼び方、戦隊ものっぽくてけっこういいかもしれない。
あとで言ってみよう。
私はちょっといい気分で鼻唄なんか歌いながら下着を揃えた。
次は歯ブラシだ。
机の横の収納ケースを開けると救急箱が存在を主張していて、ケースから出さずにふたを開けると、そこには見覚えのある頭痛薬や風邪薬が詰まっていた。
こういうのもユキトさんが揃えてくれたんだろうか。
傷薬や包帯を一通り確認してふたを閉めると、救急箱の隣のピンクの箱が目に止まった。
薄いピンクで可愛いのに、中に何が入っているのかどこにも書いていない。
ふたを持ち上げてみると、そこには厚さ一センチ弱の白いふわふわした正方形がびっしり詰まっていた。
衛生用品ならちゃんと書いておいてくれればいいのに意地が悪い。
もしかしてユキトさんも恥ずかしかったりしたんだろうか。
ピンクの箱にふたをして手前の白い箱を開ける。
そこには歯ブラシとコップのセットがあって、二つともライトグリーンに統一されていた。
部屋一面の薄緑といい、このパジャマといい、なにか意図でもあるのだろうか。
まあ、他の人の歯ブラシと間違わないのはありがたいけれど。