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0925 本の感想

ナラタージュ 9'09
武器としての食糧 9'09


「ナラタージュ」 島本理生
H17/02/25 角川書店
結婚を目前に控えた主人公が婚約者に「まだあの人を愛しているのか」と聞かれるところから話は始まる。
主人公は高校時代部活の顧問だった先生を深く思っていたが恋の叶わぬまま卒業、後に再会し心を通わせるものの社会的制約等から交際にはいたらず別れる、しかし後に先生の友人と偶然出会い、先生が奥さん以上に自分のことを思っていたことを知る。
そんな対外的な男女関係と内心の愛がすれ違う両片思い状態にときめく小説。

「武器としての食糧」 ジェラール・ガロウ
訳 黒木壽時
1981/02/01 TBSブリタニカ
世界食料品企業ランキングトップ、英蘭のユニリーバとスイスのネッスル。
色々な国に進出する多国籍企業は莫大な資産を持ち、例えばネッスルの製品だけで昼食を済ませることができると言われるほどに農業を始めあらゆる業界に進出する。
そんな企業の発展と国際社会の関わりについての論文。
世界の食糧の80%はアメリカ・カナダ・アルゼンチン・オーストラリア・フランスでまかなわれているというから驚き。もし世界大戦が起きたら日本は兵糧攻めで負けるなあ。

0914 パジャエプ更新

web拍手でコメントくれる方ありがとうございます!
励みになります。

パッサパサ パッサパサ
口の中 パッサパサ!
というAAを知ってる方はどれくらいいるんだろう。
お時間あったらググってみてください(>_<)

パジャマエプロン 105

噴水のささやかな音の中、静かに右手を下げたバレットは噴水を背に歩き出す。
まっすぐに前を見つめ、黒い革靴を光らせる姿はどこか冷たい感じがする。
「大丈夫?」
ダメモトくんの声。
「別に、なんともないけど」
「ううん、アリス様が」
その言葉に隣を見ると、アリス様が真剣な目でスクリーンを凝視していた。
ダメモトくんの声は耳に入っていないのだろう、震える両手をぎゅっと握り締め唇を噛み締めている。
「アリス様、どうしたんですか」
「ねえ、これって」
アリス様がこくりと喉を鳴らす。
「なんのドラマ? あの執事っぽい人なんて名前? 他の出演情報は? コンサートとかする? 所属事務所は? てかこれって衛星放送? ケーブル? もしかしたら外国人? じゃあ吹き替え? 生の声聞きたい」
いきなり熱っぽく畳み掛けるアリス様。
つかまれた肩がちょっと痛い。
「あのアリス様、落ち着いて」
「なによあたしには教えてくれないの? でぶで顔でかくて一重で肌荒れしまくってるおまえには教えられーよってか? ん、どうなのよ、空気読めよとか思ってるわけ?」
どうしよう、アリス様ご乱心!
しかもなんか被害妄想入ってるし目が怖いし!
「それ、実況中継」
「どういうこと、早く吐け、あたし気が短いの」
……こわい。
昨日の落ち込みアリス様カムバック!
がんがんと肩を揺さぶられ頭を白くさせる私、そこに救いの手を差し伸べたのは意外にもネゴトさんだった。
「昼」
いつの間に現れたのかそれだけ言って私の右手首をつかんで立たせる。
ぽかんと固まるアリス様を置いてネゴトさんは私を台所に引っ張っていく。
後ろでダメモトくんが再編会の説明をするのを聞きながら私は大きく息をついた。
「ありがとうございました」
食器棚の前で頭を下げる私にネゴトさんは無言で腕をはなす。
「夜食におにぎり」
戸棚を開けながら言うネゴトさん。
これはおにぎり作成指令と受け取っていいんだろうか。
「ジャム入り」
答えに詰まる私に具の指定。
夜食指令で確定のようだ。
というかジャムって。
それならサンドイッチにした方が良い気がする。
「サンドイッチじゃダメですか」
ネゴトさんが私に取り皿を渡す。
「パッサパサになる」
最初の「パ」にアクセントを強く置きネゴトさんが冷蔵庫を開ける。
パンがパサパサなのか口の中がパサパサなのかはわからないけれど、サンドイッチが苦手らしいことはわかった。
「お皿置いてきます」
声をかけるとネゴトさんはこくりとうなずいた。

パジャマエプロン 104

遠いところを見つめるバレットは両腕をすっと下ろして、まるで何かを待っているようだった。
バレットの黒い革靴の下、噴き上がる水にはトマトジュースをぶちまけたような空が反射し、まるで映画の中のようだった。
黒と赤、刃物と銃器と断末魔の叫び、そんな猟奇的な映画。
静かに立ち続けるバレットの視線がふっと下に落ちる。
「何かご用ですか」
開かれた口からもれる穏やかな声に、ダメモトくんが映像を広角に切り替えた。
するとそこには、十数人、いや二十人は越える男たちがいた。
噴水を囲む彼らはそれぞれ斧や鉈をかついでいて、身軽そうな人でも大きな銃を持っている。
うん、とても物騒だ。
「こちらにいらっしゃるということは第五階級のみなさまには反乱のお誘いはなかったということでしょうか」
それとも、とバレットが腕を組む。
「早々に地位を受け渡し、身の危険も省みず死神に再希望したか」
「当たり前だろ」
誰かが鼻で笑って言う。
「こんないい肩書き他にない。それに、ここでお前を倒せば大金が転がり込むときた。やらないはずないだろ」
その言葉に周囲の男たちが「そこまで言うなよ」とたしなめるようにざわつく。
たしかに、これから倒す相手に向かって宣言するのって日曜朝の悪者くらいだ。
しかも「お前は俺が倒す!」とかいう悪者に限って簡単にやられるんだよね。
「お前は俺たちが……いや、俺が倒す!」
うわー、言っちゃったよ!
誰だよそんなこと言ったの、それ死亡フラグだから!
「物騒ですね。それほどこの命が欲しいんですか」
穏やかなバレットの声がなぜか煽りに聞こえる。
男たちがわんわん何か言ってるけど私は聖徳太子じゃないからよくわからない。
けれどバレットはちゃんと聞き取ったようだった。
「それはいけません。自分の認めた者以外をキーパーの側に置きたくはありませんので」
バレットが右手を胸にあてて忠誠を示すようにする。
「それに、彼女から生き延びるよう命令されていますので」
まるで漫画の中の英国執事のように臭い台詞を平然と吐く。
「あなた方に倒されるわけにはいきません」
言葉が終わるや否やバレットは跳び上がり、男たちの後ろに降り立った。
それからはバレットの姿がよく見えない。
噴水の周りを囲んだ彼らの後ろを黒い影が一周して、気付いたら男たちが青色に染まっていた。
不透明水彩の絵の具を何度も混ぜ合わせたような、沈んだ濁りを持つコバルトブルー。
叫び声もなく、ざわめきはいつの間にか鈍い人の倒れる音に変わっていた。
赤を映す噴水に青が混ざる。
砂に染み込む青、動かない男たち。
噴水と風の音の中、バレットは黒いハンカチを取り出すと右手の出刃包丁を丁寧に拭き上げた。
胸元から取り出される木製の箱、そこに繊細な手付きで包丁をおさめると箱を再び上着に戻しバレットは歩き出す。
「おっといけない」
けれど何かを思い出したように足を止め、噴水を振り返ると右手を高く上げた。
「強制退去」
鳴らされる指、それと共に倒れていた男たちがそこからいなくなる。
まるではじめから存在しなかったかのように、けれど青色を残して。
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