派遣ちゃん 8'09
斎藤孝のイッキによめる!名作選 小学生のためのわらい話 8'09
キミが働く理由 8'09
はれときどきぶた 8'09
「派遣ちゃん」 宮崎誉子
2009/02/25 新潮社
「青瓢箪」
主人公の水野みゆきは派遣の採用を求め奔走し、日々小さな事に元気を求め小さなことでいらだち、母に可愛がられる自称作家志望のニートな兄に嫌悪感を抱いている。
人や場によってだいぶ対応が変わり、悪意ある好奇心には毒で返す。
ストレートな本音の描写強くてすかっとするけれど生きづらそうな彼女の救われない毎日。
「欠落」
高時給につられコールセンターの派遣社員に応募した高卒で無口な鳩山太一。
テレフォンオペレータの研修を受けながら同じ研修生の女性たちにいじられ、教育担当の正社員にはいびられ、それでもこなしていく。
以前のバイト先の先輩は不倫で揉めて相手を刺したり古くからの友人はひきこもりニートだったり、なさそうで普通にありうるような生活の切り抜き。
「斎藤孝のイッキによめる!名作選 小学生のためのわらい話」 斎藤孝
2006/03/10 講談社
最初は絵本並の字の大きさが三段階で小さくなって最後は児童書並になる本。
一話毎にクイズと手引きがあり、ページ数には読んだ印として丸が打てるよう点線でかっこてあり、修了証という読了証もついていて読むのが楽しくなる。
「そこつの使者」前川康男
そそかっしい地武太治武右衛門という侍が殿様のお使いであるお屋敷へ行くのだが言付けを忘れてしまい、思い出す手段として向こうの家来に尻をつねってもらう。
しかし容易には思い出せず大工に釘抜きでつねられやっと思い出したのは用事の聞き忘れだったという落語。
「くぎのスープ」バージニア=ハビランド
貧しい旅人がけちなおばあさんの家に泊めてもらい、釘一本でスープを作ると言いつつ「小麦粉がほんの少しあれば……でもないものねだりはするまいよ」なんて言っておばあさんに食材を出させ、これでも上等だがもっとこうしたら王様にも差し上げられる、などと言って更に物を出させていきごちそうを二人で囲む。
おばあさんは釘一本でこんなごちそうになるなら後は安楽と旅人をもてなして見送るが、あとでおばあさんがどうなったか考えると可哀想だ。
「金魚のお使い」 与謝野晶子
子どもたちにお見舞いの代理として行かせられた金魚三匹は新宿から電車に乗っていく。
切符を買おうとして駅夫に手がないから切符はあげられないと真面目に言われたり、金たらいに水を入れてもらって無事に車内をすごしたりと大人が優しい。
「化け物草紙」 清水義範
話者が怖い話、と言って期待させるくせにお化けの正体が台所用品だったりと拍子抜けする話の寄せ集めで、またか、と笑えてくる。
「小石投げの名人タオ・カム」再話 サン=スウンソム
親がおらず脚の不自由なタオ・カムはいつも木陰におり、手遊びに指先で小石を飛ばす技術を研くうち葉っぱを動物型にくりぬくことができるようになる。
ある日通りがかりに休憩した王様は影が動物型になっているのに気付き彼を探し出し王宮に呼ぶ。
王様は会議でお喋りな大臣の口にピンポイントで小石を入れさせることで他の大臣に話す機会を与えようとしたのだ。
それは成功しその後彼の生活も保証されたという話。
「アラビア物語/スイカの代金」 川真田純子
怒りっぽい王様が狩に出たところ森で家臣たちに愛想をつかされてひとりぼっちになる。
喉が渇いた王は出会った農夫にスイカをもらうがお金を持っておらず、農夫は王にその場でピョンピョン跳ねて自分を笑わせることを対価として要求する。
跳ねて楽しくなってきた王様に怒りではなく笑う豊かさで統治して欲しいと農夫は進言しより都が栄えるようになったという話。
「オバケは友だち」 犬丸りん
お化け屋敷の館長は人を驚かせることが大好きで、閑散期には夕方の町で口にサンマをくわえてみたりする。
ある日同じような趣味を持つ綺麗な人と出会うがその人は幽霊で、彼の初めて女性に贈る花束は彼女への献花となる。
やがて夏、お化けのバイトなのに館内で迷ってしまった女子高生に手を握られ、お化けではく生身の人間にドキドキする彼に胸キュン。
「でたらめ経」 宇野浩二
閑散とした村で老婆に一晩の宿を求めた旅人は代金の代わりにお経を教えてくれと頼まれる。
仏壇を拝むことしか楽しみのない老婆に、お経を知らない旅人はその場でお経っぽいものを作り教える。
幾日かたった夜、老婆の家にやってきた泥棒が老婆の唱えるお経に自分達のことがばれていると思い込み逃げていくところがいい。
「迷い子の達人」 中島らも
昼食後にお菓子やジュースを目当てにしてデパートで必ず迷子になる、大人びたことを言う小学生男子。
少しぬけたところのあるお父さんは息子と自分の腕をひもで繋ぐが、デパートで似た父子に出会う。
子ども同士が迷子ライバルと言う彼らに呆れているうちに父同士がひもで結ばれてしまい、子どもたちに場内放送で呼び出されることになる。
「日々の吽」 町田康
普通な人なら落ち込むことがあってもプラスに考えてバカなことをやりだす主人公。
床にぶちまけた蕎麦はドレッドヘアーに、電車で迷惑な若者を憂いつつ家で真似して遊び、興味本意でドライバードリルを買ってはあちこちのねじで遊び電化製品を破壊し、それでも楽しげ。
友達に欲しい。
「怪盗ジバコ」 北杜夫
身一つで名を挙げる、弱いものを助ける怪盗ジバコ。
しかしやがてジバコの弟子らでグループは大きくなり腐敗する。
ある日喫茶店で相席したジバコファンと名乗る女性はジバコの正体を初めて見破り初心を思い出すよう言って去る。
彼女にほのかな恋心を抱きグループを解散したジバコは数年後やすり一本でエッフェル塔を盗もうと参上する。
「キミが働く理由」 福島正伸
2009/03/06 中経出版
自分が好きなことを仕事すること、仕事の作業そのものを目標とせず人を喜ばせることを目的にすること、自己に原因を求めること。
続けることを決めて前向きにいくことで批判をアドバイスととること、夢を持つこと、世の中の移りやすい価値観でなく自分の価値観を信じること。
世界を変えるために生きる、という視点を持つこと。
こんなプラスイメージで職への考え方を語るライフハック本。
「はれときどきぶた」 作・絵 矢玉四郎
1980/09/05 岩崎書店
先生に言われたとおり嫌なことも含めたほんとうのことを絵日記に書く主人公の小学生男子は母親が日記を読んでいることを発見し、あしたの日記をつけることにする。
未来のことなら本当でも嘘でもないと、とんでもないことをかくがなぜかその通りになってしまう。
あるとき空からぶたが降ると書いたところ天気予報がぶた予報をし空一面にぶたが現れ、驚いた主人公はこれまでのみらい日記を消しゴムで全て消す。
すっかり世界は元通り、と思いきや一部の消し忘れで後遺症があるのもいい。
絵日記の絵がやたらうまいけれど鉛筆風の手書きっぽい字が本物を読んでいるようで楽しい。