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0727本の感想

現代<死語>ノートII 7'09
落ち穂ひろいII 7'09


「現代<死語>ノートII」 小林信彦
2000/01/20 岩波新書(新赤版)/岩波書店
1977〜1999の死語とそれにまつわる著者の一言、ボーナストラックならぬ「ボーナス・ノート」として1945〜1955の死語も収録。
「オバタリアン」は映画「バタリアン」にかけたものだと知って「へぇ〜」(これも死語だなあ)となった。
でも「マイブーム」や「ダサい」はまだ健在だと思う。

「スペイン文化シリーズ 15号 スペイン語表現集 落ち穂ひろいII」 上智大学 イスパニア研究センター
2008/01/18 日相印刷
日本語で時おり見掛けるちょっとした言葉、でもスペイン語だと言えない……そんな表現を集めた本。
右向け右、とかいちにのさん、は案外直訳でいけたりして面白い。
コラムに著名人の名言もあって楽しめる。

0725詩

[二番目の記憶]

あれは風の強い日で
海の波は灰色で
ざらりとしけった砂があり
彼女が前を歩いてた

振り返ってしゃがみこむ
彼女は砂を山にする
小枝を立ててしきりに言う
一度で分かるそのルール
何度も試しを見せながら
呆れるほどに繰り返す

小枝は倒さないように
泥の砂をけずりゆく
私は負けて
彼女も負けて
四度で彼女は立ち上がり
もう行こうと促した


あれから十年経ちまして
私はじきに中学生
写真にうつる幼子が
どうして自分とわかりましょう

父のいないあの海に
父はカメラを構えつつ
こうして一枚残ってる

思い出しては笑う母
賢い子だと誉めた母
私はどうして言えるでしょう
あなたを馬鹿だと思ったことを

0723詩

[午前二時の電話]

孤独死しそうだと思う

彼はそういって
すこしだまった

学者
物書き
絵を描くのでも
言葉は声にのせず
文字にのせること

大きなコミュニティは無理
小さなコミュニティで
その中だけで評価される

彼の予想
もしくは予言
はたまた呪い

人を信用しないから
冷たく見える

彼の言葉は
湿度をもっていた

私の笑顔も
大袈裟な素振りも
温度をもたない
そういわれた気がした

硝子の塔の住人

そう彼は呼ぶ
そして同志と慰める

象牙より脆いのだろう
そして晒され続ける
光りはするだろうか
きっとさみしいのだろう

死ぬときはみんな独りだ

0717本の感想

僕が大切にしている人生の知恵を君に伝えよう 7'09
人生の贈り物 7'09


「僕が大切にしている人生の知恵を君に伝えよう」 デンゼル・ワシントン
訳 小西敦子
2007/11/06 青志社
外国人の成功者42人プラス著者の、人生で大切にしている言葉や信念、自分の人生の変わるきっかけとなった他者の言葉を小エピソードと共に集めたエッセイ集。
自分を信じたり、道を定めて努力したり、人を思いやったり、とにかくポジティブであることと、他者を大切にすることを強調する。
「can」を貫くことと「never」を否定すること、かっこいい。

「人生の贈り物」 アレックス・ロビラ
訳 田内志文
2008/09/19 ポプラ社
原題は「EL PODER DEL AMOR」、スペイン語で「愛の力」という意味の、名言とそれに補足説明を加えたゆったり本。
まとめ。足りないという嘆きは既にあるものへの感謝の欠如から。愛は育てないと枯れる。今持っているものだけでも勝負できる。
言葉は強力だが、それが声や肌にのると、又あえて沈黙することで更に力を持つ。

パジャマエプロン 98

やりきれない。
アリス様はそう繰り返して、自嘲気味に笑った。
「楽しくお喋りするからって仲が良いわけじゃなくてさ、真実は本人の見えないとこにしかないんだよ。まるで、背中にできたニキビみたいに」
そう言ってアリス様は、本当は帰りたくないのかもしれないと続けた。
学校での人間関係の歯車にはうまく噛み合えないけれど、今いる二群から落ちこぼれの三群に落ちたくはない。
本当はあたしにはもっと力があるのにそれを発揮できる場所は一群に取られちゃってる。
一群には顔と頭と運動能力がないと入れないし、今更もう無理だってわかってる。
一群なんて、なくなっちゃえばいい。
ううん、誰も知らないあたしになれたらいい。
どこかへ、行ってしまえたらいい。
誰かが、気付いてくれたらいい。
「あたしは……」
ずっと早口で言い続けていた彼女の言葉が、ふいに止まった。
「あたしは、他のやつらとは違う」
きっぱりと言い切られた言葉。
鋭くうるんだ目に射抜かれて私は声を失った。
まるで世界と切り離されたような、何もない世界に二人きりでいるような、ここがどこかわからない気分。
でもそれは扉の音と共に焦った声でうち壊された。
「リクさん、無事ですか」
そう言って居間に入ってきたサトさんは切羽詰まった様子で、きょとんとする私たちを認めるとお騒がせしましたと頭を下げた。
「あの、どうかしたんですか」
頭を上げたサトさんはお風呂上がりなのか髪からしずくが垂れ、シャツのボタンは上の方しかかかっていない。
着崩すにしてもこれはやりすぎだし、そもそもボタンを開けるなら下じゃなくて上だ。
お風呂上がり萌えをするにはもうちょっとシチュエーションというか色気というかなんか色々足りない気がする。
「このあたりに時空の歪みを感じたのですが、どうやら上空を何かが通過しただけらしいです」
私の視線に気付いたのかサトさんはシャツの前を手早くとめ「お話し中申し訳ありません」と再び謝った。
その足元にネコ姿のネゴトさんがちょこんと座る。
「別にいいよ、お喋りしてただけだし」
さっきまでのシリアスさはどこかへ行ってしまって、アリス様は椅子を引く。
立ち上がりながら「あたしもお風呂入って寝るから」と言ったアリス様は私に軽く笑うと居間を出ていった。
アリス様から微笑みを向けられるのは初めてかもしれない。
ちょっとでも距離が近づいた気がして、なんだか嬉しくなる。
階段を降りる音が聞こえなくなった頃、サトさんが椅子に座った。
「リクさん、体に異変はないですか」
唐突にいったい何を言い出すんだろう。
サトさんは私の心配よりも濡れ続ける肩を気にした方がいい気がするけれど。
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