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世界は無関係

昔聞いた話

「耳を閉ざしたら世界が消える」

常々世界が煩いと考えていた私は
耳を塞いで世界を消した


本で読んだ

「人間は視覚から認識する」

常々世界を見たくないと考えていた私は
目を閉じることで世界を見なくした



昔から言われていた

「口は災いの元」

常々世界が煩わしいと考えていた私は
口を閉ざして世界から関わらなくなった




それでも世界は無理矢理に私を引きずって廻る

五月蠅

五月の蠅かおまえらは!
わいわい邪魔をしてくる
そんなにイライラさせたいか

耳元
遠くで
いきなり

あーあーあーあー

あーもううるさい!



むかつく背中にドロップキック
私の怒りをぶつけたい
むかつく笑顔に回しげり
しばらくそこで黙ってろ!

女王を愛した男

女王は誰にも優しい
誰もに愛される存在
そんな女王に彼は恋をした

だが女王はそんな思いを知らない
今日も優しく国民に微笑みかける
一人一人に向けられる笑顔が彼を苦しめていく

貴女は私を見てくれない
貴女は皆へ笑いかける

純粋過ぎた思い
過剰なまでの欲

貴女は誰にも優しい
貴女は私の思いに気付かない
貴女は私に笑いかける
貴女は私の思いに気付かない
貴女はそのまま過ぎていく

女王相手の狂う恋
加速していく思い

貴女が女王である限り、私の思いは届かない
貴女が女王である限り、私のモノにはならない

普通の人間のように告白出来たら楽になれるだろう
だが彼女は皆のモノ
決して誰のモノにはならない
彼女は「女王」



男は気付いた



「ならば貴女から女王を奪おう」


小さな火はやがて大きな戦火となった
男が叫んだそれらしい大義名分は勝手に誰かの脳内で変換されて意味をもつ
誰も自分の意図には気付かないと男は戦場で高笑い
部下達は勝手に心打たれてついてきた

彼女が笑いかけた国民は斬り捨てた
彼女が好きだった街は燃やした
彼女を守ろうとした兵士達は皆殺してやった
彼女が守ろうとしたもの全てを殺した

ついに王宮は陥落し
国民全ていなくなった
甲冑に身を包み剣を手にした最後の女王
玉座に座り彼を見た


「何故こんな事を」
女王は聞いた
「貴女が欲しい」
男は答えた


女王は笑う
「私は皆のモノ。誰かのモノにはなれはしない。例え国を滅ぼし民を滅ぼしたとしても私は貴方のモノにはなりはしない」

女王は怒る
「貴方は私の大切なモノを奪った。私は貴方を許さない」

男は笑う
「貴方は今私を憎んでいる。やっと私を思ってくれたな」

男は笑いながら、剣を振るった





玉座に座る男
右手には愛しいあの人の首

彼女はもう誰も見ない
彼女はもう誰にも微笑まない
彼女はもう誰にも触れない
彼女はもう誰も思わない

彼女はもう私しか見ない


愛しい人を男は永遠に手にいれた

愛しい旦那様

愛しい愛しい旦那様
私は貴方の愛にもう答えられません

愛しい愛しい旦那様
お慈悲をお願いいたします
どうか私をいつまでも
お側に置いて下さいませ
私は旦那様と出会え幸せでした
いつまでもその愛に答えたかった

しかし私の卑しい体は
もう貴方様の愛に答えられませぬ
しかし私は貴方が眼を閉じれば瞼の裏に
貴方が声を聞きたいと思えば耳の奥に
私は確かにそこにおりまする

愛しい愛しい旦那様
私は貴方に愛を捧げます
だからお慈悲をお願いいたします

例えこの体が
冷たくなり
青白くなり
肉が腐り
溶けて骨になっても

いつまでもお側に置いて
私を愛して下さい

読書

紙の表面
小さな本
分厚い書
画面の中


ありとあらゆる場所にある文章
私は食らいつく
目で追い単語を理解する
脳内で反射し映像を想像する
内容を読み物語を悟る
特殊とも言える恍惚感
まるで麻薬の様な中毒


文章は続く
感情・思想表現する
脳内再生
現実を超える
主役は私
目撃者は私
傍観者は私
さあ次の行へ
もう止まらない
餓えや乾きにも似た欲求
さあ次へ次へ
早く続きを早く続きをと
目だけが狂ったように
息すら忘れ
文章をただ追い続ける
逃げる文章を追いかける


追い付いた先
単語を組み合わせ
偶然で計算されて表現され
奇跡の様に意味を持ち
それは一つの世界となる
他人の評価など何の意味があろう?
自分の脳味噌が感じた世界
それだけが現実だというのに
誰もそれに気付かない
書き手がどんな意味を込めようと
感じるのは読んだ貴方
理解するも拒否するも
貴方次第


その手の平
僅か400字程の中に

貴方は何を見るの?
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