パラレルワールド3

『海人、さん…』
『………』

情けなく俯く俺
無言が部屋中を包む

そんな俺の方を静かに見つめていた夏希は、苦笑してその場を立った

『……海人さん』
『………』
『苦しませて、ごめんなさい』
『!っちが…おれは』
『ううん。ごめんなさい……あのね、海人さん』

怖くて、情けなくて…彼女の顔をまっすぐ見えない。俯く俺の頭に、暖かい手が乗せられる。

『…っ』
『私は、貴方に逢えて幸せだったから』
『お、れ…は……っ』
『それでも、私は弱いから…この子を手放す選択を取れそうにないんです。ごめんなさい』
『っ…な、つき』

手が

温もりが

離れていく

『私は、だいじょう、ぶ』
『夏希…』
『だから、』
『……っ』

『だから……先輩、』


「っは……」

飛び起きた世界は、真っ暗。拘束されたままの身体は、先ほどまでの世界が夢だと告げる

汗が全身を伝い、流れていく

「はぁ、はぁ……」

(…また……っ)

彼女を手放してしまったあの日。
離れた手を掴むことができたら……こんな未来は待っていなかったのだろうか

夏希を…失うこともなかったんだろうか

「……っき…なつ、き」

流れる涙はただの水
傷ついた心から溢れるただの水

それでも、

「……ねえ、」
「……」
「……無視すんなよ。継峰海人」
「……今日は、ずいぶんとご機嫌だな」

翌朝、満面の笑みで部屋に入ってきた少年。黒髪を揺らし、金色の瞳をこちらへ向ける。

「ん―?だって、今日俺の誕生日なんだってさ」
「……っ」
「白蘭さまが、何でも好きなもの買ってくれるっていったんだぜ!羨ましいだろ」
「………」
「なーに頼もうかな♪最新式の銃か…新しいボックスでもいいなー」
「………」

「あ、いたいた。天人クン」
「白蘭さま!」
「欲しいもの決まった?そろそろ買いにいくかい」
「ん〜まだ悩み中…ね、見に行ってから決めてもいい?お願いっ」
「うーんそうだね…じゃあ、いこっか」
「うん♪」

はしゃぎながら、白蘭に抱きつき笑みを浮かべる息子。先に行かせた白蘭は、こちらを振り返るとちらりと笑う。

「ね、海人クンどう思う?」
「……」
「自分の母親が殺された日に、その母親を殺した男を慕い、祝福を受けるって」
「……っ」
「歪んでるよねー♪」
「………」
「でもさ、真実を知りながら、伝えられない君も………歪んでるって思わない?」

歪んだ世界、
逃れるすべは……

どこにもない



*補足…天人(アマト)君→たぶん10歳くらい。名前は白蘭がつけた。海人を別の読み方で読むとアマト、それを白蘭が好きそうな漢字に当てはめた(新世界をつくる神になる白蘭のそばにつくにはふさわしい名前だと)たぶん、白蘭の海人に対する皮肉。

……勝手に命名すみません!!

パラレルワールド2

「ねえ、」

「………」

「どうして、白蘭様に従わないの?」

「………」

「あんなに、崇拝できる人なんて他にはいないのに」

「…それは、お前が外を知らない、だけだ」

「またその話?白蘭様は、ちゃんと外の世界だって見せてくれてる。ボンゴレが壊滅していく楽しい、楽しい様子を、ね」

「………」

楽しそうに、口元に笑みを浮かべる少年

短い黒髪に、金色の瞳

目元はあの子の面影を残している。夏希が命のすべてを懸けて守った命

白蘭に育てられ、白蘭の考える世界がすべてだと教え込まれて生きてきた…

哀れな息子



「ねぇ、あんたさ」

「………」

「こんなガキにボコボコにされて、惨めに地面を這いつくばって…悔しくないの?」

「………」

交わる視線

しかし、どこまでもこの男が向ける視線は虚ろで

儚げで

「っなあ、答えろよ!継峰海人」

「っぐぁ」

時折見せる、優しさを含んだ瞳にイライラする

俺じゃない、俺を通して誰かを見ているような……

(なん、で……)

「……なあ、知ってる?」

「……っぁ…」

「最近、波動のテストをするとさ…大地の波動にも反応するんだよね。俺の身体」

「………」

「アンタと同じ、大地の波動が」

「………」

「何でだと思う?」

「………」

鏡を見るたびに、膨れ上がる疑問
自分の信じる世界が壊れそうになる不安

「っ答えろ!!お前は、俺の……っ」

俺の……

「あれ〜?こんなとこにいたんだ。探したんだよ」

「っ白蘭さま…」

「さ、帰ろうか」

「はい……」

部屋を出る一瞬、ちらりと振り返ると血に濡れた顔を歪め、必死に何かをこらえる彼の姿があった

「……」

「今日は、キャバッローネ攻略戦の準備をしよっか、一緒にくるかい?」

「……」

「?どうかした」

「いえ。……是非、お供させて下さい!白蘭様」

「うん♪よし、行こう」



血塗られた世界
歪められた関係
救いのない未来

「………父親、なんて名乗る資格はない」

(なつき……)

でも

「あの子を救うまでは、死ぬわけには…いかない……っ」



本当に救いのない話orz




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