AD.200X年…秋…。
女神隊は珍しくほとんどの人員が巡洋艦アデリアを留守にしていたため仕方なく奈都がアデリアの留守番を受ける…。
ブリッジにて艦長席でプレッツェルを食べながら作業プランを練る…。
各設備の清掃と整理整頓を主軸とし今朝方の出来事を照らし合わせて行く作業をする…。
一番の最優先、清掃場所がキッチン…今朝、巴が慌てて会議前に朝食をかっこんでシンクにお皿を置いたままだ…。
二番目は浴場…烈月の当番だがここ数日はされてない…。
最後はトレーニングルームだ、ここは、蘭とユウキが組み手を繰り返しながらあれこれ散らかしていたためだ…特に訓練弾の薬莢と撃った後の弾が散乱している…。
どれもハードだ…。
やれやれと思いつつもとゆっくり作業に取りかかる…と突然ブリッジの扉が開いて誰かが入って来る。
『オイ、誰も居ないのか〜!誰か居ろよ〜!』
聞き覚えのある声はズンズンとブリッジに入り込んで辺りの様子を伺う。
プレッツェルをもりもり食べている奈都は、一瞬でソイツと目が合った…。
那月『ようっ!那月ちゃんが遊びに来てやったぞ、喜べ奈都!』
正直、クソ面倒な人物が押しかけてきたと残念そうに奈都はため息をつく…。
奈都『あっそう…邪魔だからどこかに行って…むしろ私の視界に入らないで。』
表情をぴくりとも変えずにかなりグサリとくる重い一撃の言葉を語るが那月は笑い飛ばした。
那月『まあ、そんなつれないこと言うなよ〜!那月は暇なんだから!』
奈都『うるさい那月、チビっ子はどこかに消えて!』
那月『那月をチビって言うな!』
那月はチビと言われてムッと来たようであれこれ何かをしようかと考えついた…。
奈都はそれを知らずにキッチンに行って…シンクや、まわりの掃除を始めた…。
シンクの中には、水が張ってある…その中に皿が沈んでいた…、巴が朝食を食べたあとだ…散乱している訳じゃ無いので奈都は、浮いた汚れをスポンジでサッと拭き取り洗剤である程度きれいにすると食器乾燥器に手際良く突っ込んで蓋を閉める…後は、シンクの水を抜き出し、シンクをスポンジで入念に磨く、所々でキッチンカウンターの先でちらちらと那月が視界に入る…たまらず奈都はイラっときた…。
奈都『那月…邪魔くさいから…どこかに行ってって言わなかった?』
表情を変えずに苛立ちを口調でぶつけると那月は、それを無視して、黙々と何かをしている…。カウンター越しで何をしているかはわからないが那月が動いて居るのだけはわかった…。
奈都『那月!聞いてる!?邪魔なの。』
それでも那月は、無視するが途端に、そっぽを向いてガタンと堅い物を置くと奈都の視界から消えて行った…。
邪魔者は居なくなったとひとまずは集中して作業を続ける…。
キッチンまわりの掃除を粗方、終えると食堂を掃除する…ガタンと堅い物が何だったのかをカウンターの向こう側に回り込んでみる…。
置いて有ったのは、箒とちりとりだった…どうやら那月は、シンクをきれいにしているのを見て掃除を始めていたようだった…。
不意に、ため息をつくとちりとり周りの散らかったホコリを綺麗に掃き入れてまわり見渡すとすでに終わっていた。
ため息をついて掃除用具を戻すと次の目標である…浴場に行くすでにここも終わっていた…ピカピカに磨かれた鏡にツルツルのタイル、湯船の湯垢までスッキリとしている…脱衣所を見てもシャンプーやボディーソープ、石鹸までもがぴっちり、所定の位置に収まっている…。
特に素晴らしいと思ったのが唯一のメンズのユウキの剃刀と巴達が使うレディース用剃刀が別々に分かれていることやユウキの下着箱にちゃんとユウキの下着が収まっている…正直、奈都は驚いた…。
奈都以外、誰一人と掃除ができる者はいないのにここまで綺麗にしている徹底ぶりには感服した…。
大浴場の掃除は手の付けどころはないと判断するとトレーニングルームに行く、転がった薬莢を丁寧にひとつひとつつまんで空薬莢の箱に入れていた…。
那月『薬莢は信管と火薬と弾があればまた使えるから…ちゃんと取っておかないと、もったいない。』
そう言っている那月は、アデリアにちゃんした弾薬のリロード施設が有ることも知ってか独り言で…呟いていた…。
奈都『那月…丁寧に拾わなくとも…ルンバが有るから。』
その言葉に気付いた那月は奈都の方をみると首を横に振り薬莢を見せる…。
那月『良いか!奈都、薬莢はそう丈夫じゃない…サンバだか何か知らないけど…そんな機械で掃き取ったら傷ついて割れるから!』
那月は偉そうに言うと自分の薬莢を見せ綺麗に磨かれていることをアピールする…。
奈都『…歪むのね…わかった…そうする…。』
那月『なら、そのサンバだかルンバだか知らないけどそんな機械はしまって…。』
那月にせかされるようにルンバをかたすと地道に、散らばった薬莢を拾い上げ丁寧に空薬莢箱へしまう。
那月『ホットロードして銃器の極限性能を引き出すのに使えるってやつよ!』
ホットロードとは、官給品の弾丸をより…攻撃性を高めた弾丸だ、火薬の量を増やしたり、性質の違う火薬へ変えたりして薬莢に詰めて、使う…もちろん…奈都は、その手の作業は、自分のガンブレードを痛めるためにやらないと言うが、那月は平然とやっている…。
那月は、状態の良い薬莢を見つけると先ほどからごそごそと何かをしている…。
奈都は、覗き込むと、空薬莢に特殊な火薬を詰めて、鋭い弾頭を組み込んでいる…所謂ホットロードの最中だ…。
作業は、ほんの二、三分で終わると、作り出した弾丸を奈都に渡す…。
那月『ほいっ那月ちゃん謹製、ホットロード…アーマーピアッシング弾、完成…あげるよ…。』
奈都の、銃器はベースはガバメントだろうが、攻撃力が気持ち上がった拳銃弾…のように感じた…。
奈都『そりゃどうも…。』
奈都は軽く礼を言って弾薬を受け取ると再び回収作業に戻る……。
回収作業に入って30分が経ち、ようやく…最後の薬莢を片付けると…それから再び掃除を始めた…。今度は二人でサッと掃除を始める…さすがに二人ともなると掃除のテンポは速い。、二人で協同作業になるので随分と効率がよくなる黙々と掃除をする二人に最早、言葉は不要だった。
元々奈都は、那月のテンションや天真爛漫で自由奔放で礼儀知らずな彼女は嫌いだ…言い方を変えれば近づきたくない物だが今回ばかりは、彼女を見直したと心に思う…。
全体の掃除を終えて、辺りを見回して残りが無いことを確認すると那月がハイタッチを求める…奈都は、しばらく見てからしぶしぶとそれに応えると掃除用具をしまう…。
那月『二人でかかればこんなもんよ〜!!』
奈都『そう?まあ…一人でやっても終わる作業だったけど…。』
那月『そんな風に言うなよ!那月だって頑張ったんだから誉めろ〜!称えろ〜!!誉め千切れよ〜!!!』
奈都『ハイハイ…ようござんした…。』
軽く那月をあしらいながら礼をすると午後のティータイムに誘う…。
ゆっくり那月を知りたいと思った…まだ良く分かっていない10番台のRAの事を良く知りたくなったのだ…。
しばらく…だらだら話しをしながら紅茶をゆっくりすする二人は少し距離をが詰まった気がした…。
奈都忌憚〜ナツキタン〜END