短く言うとホモなので苦手な人はブラウザバックプリーズ。







先輩は抱きつくのは好きだが抱きつかれるのは嫌いだ。
たぶん根本的人間不信が未だに払拭できないどころか悪化の一途を辿ってるせいで、自分から距離を詰めるのはともかく他人に触られるのが嫌で仕方ないんだろう。
そういうわけで、普段張ってるイカロスの網は、「自分に近付いてくる」相手を最優先で察知する。
今だってそうだ。

「おうお帰りー」

背後のゲートが起動するなり振り向いて、労いの言葉をかける。よく知る相手なら出迎えにも行く。まったく自然で、本人もほぼ無意識。ついでにゲートを潜ったのが本物かどうかという探知も含み、文句の出ようはずもない。
どうしても他人の背後を取りたい類いのいたずら好きには不評だが、今のところ誰も困っていないのは確かだ。
ひらりと手を振る先輩の背後に回り、座った椅子の背凭れごと抱き寄せる。当然先輩を動かすというより俺が近付いていく格好になるわけだが、先輩からは特に抵抗がない。

「ん? おう、お疲れ。一周休みだろ、寝とけよー」

カラカラと笑いながら、先輩は首に回った俺の腕を叩いた。
数少ない、この人が背中を無防備に晒す相手に、自分が選ばれている。
そういう実感がこそばゆくも手放しがたく、俺はこの人を抱き締めるのに、背後ばかりを選んでいる。