あなたともお別れだ…
流奈が奈都に言い放ち、銃弾飛び交う街角に飛び出して言った…。
流奈の姿が見えなくなり
奈都は自分が恐れる事は無いと思っていなかった。
奈都は自分が泣くことは無いと思って居た…。
無意識にほろりと頬を伝う涙を奈都は疑った…。
自分が泣く…その事に戸惑った
(分からない…姉さんがいなかった事にはなれてるはずなのに…これは…何?)
自分の心に言い聞かせる…
だが言い聞かせれば言い聞かせた分だけ涙があふれ、抑え込もうとするだけおえつがこぼれだす。
流奈との思い出が脳裏によぎって行く…。
次の瞬間だった、身を隠す角の向こうから血が嫌な音を立てて飛び散って来ると奈都は頭の中が真っ白になり膝から力無く地面にへたり込んだ…。
『姉さん…。』
心にぽっかりと穴が開き流奈と言う姉の存在がどれほどの大事なものだったのか…奈都は改めて思うほどだった。
そして再び…奈都は角を見る…。
ドサリと倒れる音と共に角から手が見えかすかに痙攣を起こしている生々しさを目にしてしまい奈都は言葉がでなかった。
ようやく口が動いた時には、感情が同時に飛び出した。
『…ッ!い…いや…いやぁぁッ!姉さん!!姉さん!!姉さァァんッ!!』
奈都の理性が、その光景ひとつで一気に崩壊し感情の赴くままに角を飛び出して流奈を追う。
奈都が角を飛び出した瞬間だった…。
光を背にして流奈が立って居た…。
感情や表情はうつむき加減の陰によりうかがえなかったが左手についた多量の血を啜って居たのである。
その姉と奈都は一瞬にして目が合った…。
逆光の陰中ではっきり分かる殺意の目線が妹、奈都の眼中に突き刺さり二人の間に冷たい空気と血の匂いが漂っていた。
そして…それは、奈都の壊れた感情に冷静さと理性を取り戻させた…。
(こ…これが、姉さん…。)
奈都は流奈を見るとまるで、姉の姿をした異様な怪物のように見え後ろにたじろぐ…。
戦うすべさえ持ち合わせて居ないしましてや、背を向け逃げるのは実の姉を裏切る形となる事を考えた奈都は悩んだ。
その間にも、流奈はジッと奈都に目を向けながら手の血をなめる。
奈都は思い切った。
ゆっくり、姉のもとに近づいて行く
ゆっくり、ゆっくり近づくにつれ心臓の鼓動が激しく伝わり耳でも良く聞こえた。
距離が縮まると奈都の体が急に震えだす、そう、流奈の圧倒的な殺気が小さな奈都の体中を突き抜け、突き放そうとする、だが負けじと前進しようとしながら体が流奈の殺気に恐怖を感じているのが自分でも良くわかっていた。
流奈との距離…0メートル
すでに、奈都は自分が怖くて目の前の姉から逃げたいと思っていた。
圧倒的な殺気と圧倒的な恐怖感これが奈都の周りをめぐり、頭の中がおかしくなりそうだった。
姉は今にも、自分の実妹を殺そうとする雰囲気をその場に漂わせる。
『姉さん…。』
奈都は恐怖感を押し殺し自分の死を覚悟し愛する姉に抱きついた…。
もう離したく無い…死ぬなら姉の温もりの中で…そう思いぎゅっと姉を抱きしめた。
『い…痛い痛いッ…奈都、痛いですわよ。』
絞め殺されんばかりの奈都のハグに正気を戻した流奈は奈都の頭をそっとなでふと笑った。
『奈都…ごめんなさいね…怖い思いさせて…。』
それを聞いて安心したが奈都は姉の顔を見なかった…。
泣いた顔を見せたくなかったのでそのまま流奈のお腹に顔を隠すようにうずめたがおえつが流奈に聞こえた。
流奈は優しく泣いた奈都を抱きしめると小声で奈都にささやいた
『怖い思いさせて…ごめんなさい…。』
流奈の優しくほほ笑むと奈都を抱きしめてあげた。
そして、奈都はまた、姉の温かさを知り幸せを感じたのであった。