*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋2』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第2章です⇒
story.26:『振り返り1』
二条家------------武長の自室ベランダから武長と遅れて、もう一人の武長とよく似た男が屋根を飛び乗り、ある方角へ向かってゆく。
その様子を見張っていた車が2人を追い、走り出した時、車内の後部座席にいた水嶋が気落ちした。
水嶋:「武長くん……」
"復讐したい"という二条家の思いを知っていた分、今回のことは最初から分かっていたことだ。
だが、それは自分の勘であり証拠があってのことではない。
水嶋:(でも、もっと早く言っていれば…)
もっと早く防げたかも。
刑事として一番してはいけないことをしてしまい、水嶋は額に手を充てながら背もたれに身体を埋めた。
-------------------------…
"娘が死んでいる"という父親からの110番通報を受け、アパートには警察車両が何台も停止していた。
この時、他の仕事を新人だった姫井に押し付けてきた水嶋はどの刑事よりも早く事件現場に到着したのだ。
アパートの2階へ上がろうとした時、階段の上から女性警官と共に降りてきたのは、武長の母親とまだ首が据わっていない赤ん坊だった。
水嶋:「…………。」
女性警官:「お疲れ様です」
水嶋:「あ、ああ。」
武長の母親と赤ん坊と共に降りてきた女性警官に挨拶された水嶋は、まず3人を通してあげる。
3人が近くに停止してあった警察車両に入り込んだのを見届けてから、水嶋は急いで2階に上がり、事件が発生した部屋の中に入室した。
水嶋:「オツカレー」
男性警官:「お疲れ様です、水嶋刑事!」
水嶋は白の手袋をしてから靴を脱ぎ、部屋の奥へ入る。
部屋の中には通報していた父親がリビングの椅子に腰掛けて、静かに悔しげに泣いていた。
部屋の中は、赤ん坊専用のベッドや玩具などが目立ち、キッチンにも哺乳瓶が3つもあった。
水嶋:(あの赤ん坊、娘の子供だったのか)
赤ん坊はかなり幼かった。
通報によると、首にタオルが巻かれていたらしく自殺だと思っていたが。
自分のものよりも我が子のためのものがたくさんあるこの部屋を見ていると、幼い赤ん坊を置いて自殺したなど水嶋には信じがたかった。
水嶋:「…仏さんは?」
男性警官:「浴室です」
男性警官がそう言っていた通り、鑑識官は浴室がある方に集まっているようだ。
水嶋:「…?」
男性警官:「それが、まだ浴室の方の調査始まってないんです。
被害者の弟さんが娘さんの側に座り込んだまま動かなくて」
今、説得してる最中ですという男性警官の話を聞いて水嶋はすぐに浴室へ行く。
すると、話の通り鑑識官数人と警官が2人が一人の少年に優しく話し掛けていた。
男性警官:「きみ、お父さんや私たちと少しリビングで待ってようか。これから刑事さんや鑑識の人が調査するから」
武長:「……………。」
武長は小刻みに震えながら涙を溢す。
目の前にいる被害者、平山美森とは産まれる前からずっと寄り添ってきた半身。
その大事な存在が、首を吊って死んでいたとなればショックは大きすぎる。
武長:「みもりぃ……っ…」
武長がそう名前を呼んだ時、水嶋だけでなくその場にいた刑事も胸を締め付けられただろう。
どう声を掛けていいか、分からなくなってゆく。
双子のことは、双子にしか分からないことがある----------この2人もそうだったに違いない。
だが、今の武長には美森が何を考えて死んだのかが分からず混乱しているのだ。
ならば、自分たちは少しでも早くそれを解明する手助けをしなければ。
水嶋はそう思ったらすぐに行動に移した。
警官や鑑識官を避けて、遺体となった美森の傍まで寄ると一人両手を合わせてからしゃがんだ。
武長:「…!」
突然目の前に現れた水嶋に気付き、武長は泣き顔を上げて黙って見ている。
水嶋:「服が多少乱れてんな。…ん。爪に……血か?」
武長:「っ…」
水嶋が美森の手のひらに触れると、武長は変な声を上げてこちらを強い瞳で見てくる。
武長のその視線が示していたのは、"焦り"とか"嫉妬"のようなものを感じた。
水嶋:「よう。俺は水嶋っていうもんだが。…君の名前は?」
武長:「…武長。二条武長です」
水嶋:「そか。これから鑑識官がその辺調べたいって言ってるから少し離れてくれねーか。」
武長:「…っ……はい。」
武長はそう言うと、ふらつきながら立ち上がり少し離れた。
だが、武長は美森が見える位置に立っていた。
水嶋がそれを気にすることなく遺体を調べていたから、鑑識官も気を取り直して調査を開始した。
先ずは写真を一通り撮影する。
指紋検出を慎重にする鑑識官、美森の周囲を調査する鑑識官。
その近くには、水嶋がいた。
それから少ししてから他の刑事や石塚も到着した時、美森はようやくブルーシートの上に寝かされた。
美森の首に巻かれたタオルがようやく解かれた時、水嶋と鑑識官がある事に気が付いた。
水嶋:「二重に、閉められたか」
鑑識官:「そのようですね」
鑑識官:「水嶋さん。実は床に引きずられている痕跡が…」
石塚:「足の踵、血が固まっているな」
水嶋たちの会話を近くで聞いていた武長が言ってきた。
武長:「他殺…他殺ですか!?」
武長のその問い掛けに、水嶋はうんと頷きながら言った。
水嶋:「ああ。その可能性が出てきたぞ!」
水嶋のその明るい顔を見て、武長と話し声を聞いた父親が顔を見せに来た。
父親は水嶋のその言葉を聞いて、深々と頭を下げて言った。
父親:「お願いします…!
娘が子供を置き去りに自殺なんて有り得ません。どうか、どうか捜査を!」
武長:「お願いしますっ…」
2人の必死な願いを見た水嶋が石塚の方へ視線を向ける。
石塚は少し黙っていたが、静かに頷いてからこう言った。
石塚:「"自殺に見せ掛けた他殺"として、この事件を水嶋担当で捜査をしよう。」
水嶋:「よし!なら、近辺調査を始めるぞ。小さなことでも必ず石塚さんか俺に報告してくれ」
「「はい!」」
-------------------------…
あの事件から4年が経ってから、このような事件が発生するのではないか、と水嶋はずっと考えていた。
そしてその捜査に自分が関係することになろうとは。
水嶋:「アイツは…武長は、酒田の無実を明かすために出て行ったんだな。」
先程のことを思い出しながら、水嶋はそう呟くように言った。
酒田が槐事件に関わっているかもしれない。
そう話した時、武長は叫び声を上げるような声でこう言ったのだ。
『酒田は何も関係ない!!』
その後、武長は走り去った。
水嶋たちはそれを見送ってから車で二条家の前まで来て、今は武長と"もう一人"を追っている。
あの身体能力は、槐と共通する。
だが、武長という青年はあれほど身体能力のある人間だったか?
水嶋はその事と、会話の途中に鳴ったケータイの着信を気にした。
水嶋:(そういえば、情報はメールで届くって…)
つい数日、真幸がそう言っていた。
水嶋:(じゃあ、やっぱり…)
あの着信は、殺人ターゲットの情報を知らせるメールなのか。
水嶋:「絶対に、阻止しねーと!」
これ以上はダメだ。
武長にも美森以外に大切な人がいるのだから。
水嶋はそう言ってから無線機に手を伸ばし、本署にいる石塚に向けて現在の状況を報告した。
------------To be Continued...