*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋3』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第3章です⇒
story.25:『困惑』
一貴:「…ひっ、く………えぐっ……」
民家の屋根の上から勢いよく飛んできた槐を受け止めた松尾が強く抱きしめた。
槐はぎゅっと抱き返すと、声を出して泣く。
その様子を見ていた水嶋と姫井から少し離れて、高柳が本署へ連絡した。
高柳:「あ、もしもし…石塚警部。ただ今、第3の槐と接触しています。
至急、こちらへ来てもらいたいのですが…。…はい、場所は----------」
高柳が電話をしている傍で、水嶋は松尾の胸に顔を埋めて泣いている槐に問い掛けた。
水嶋:「槐。お前の名は?」
水嶋の問い掛けに、槐はピクリと反応した。
水嶋のその質問に意外性を感じたからだ。
水嶋の言葉は自ら名乗らせようという優しさなのか、それとも刑事としての責務か----------。
どちらにせよ水嶋からそう言われて、槐は少し落ち着くと、松尾が少し離れて俯きながら言った。
一貴:「…っ…三条、一貴です」
第3の槐・三条一貴は首に巻いていたスカーフを取って、その顔を松尾とその後ろにいた母と鈴木、山下に見せた。
そして一貴はゆっくりと水嶋たちの方を振り向いた。
まだ幼い顔の少年の瞳は潤んでいて、水嶋のことを恐々と見つめる。
そんな一貴の顔を水嶋と同じく初めて見た姫井は、ふと『angel』のオーナーであるおネエの美子や、先程カラオケボックスで松尾が話していた"三条一貴"を思い出した。
2人が言ってた話から想像した通り、愛らしい顔立ちの少年だ。
今は泣き顔だけど、笑ったらきっと可愛いんだと思う。
16歳とは思えないくらいの顔立ちは、たった今、彼によって肩にナイフを突き刺された女性・三条一貴の母親とよく似ている。
姫井:(どうして…)
松尾から話を聞かされた時から予想はしていたものの、未だに信じがたい。
息子が、自分を産んでくれた実母を。
いくら好きな人と引き離した張本人とはいえ、殺そうとするだなんて。
姫井が不安げに見守るなか、水嶋は先ず最初に気になっていたことを一貴に尋ねた。
水嶋:「一貴くん。お前は、どうやって松尾と母親との接点を知ったんだ?」
水嶋の質問に一貴は鼻を啜りながら、こう答えた。
一貴:「メールです…」
水嶋:「メール…」
一貴の口から出てきた解答に、水嶋は又しても槐事件の謎『メールの主』という壁と出くわす。
だが、一貴が言った意外な答えに松尾と一貴の母親が驚き、鈴木と山下は困惑する。
一貴の母親はハッとして、松尾をキッと睨みながら言ってきた。
母親:「あなたが話したんでしょう!?
一貴にこんなことやらせて、私に仕返ししようと!」
松尾:「違います!俺じゃない!」
一貴:「そうだ!先輩じゃない!」
松尾が否定した後に一貴がそう言ってきたので、一貴の母親は動揺した。
松尾でも、母親でもない。
"第三者"があの場で偶然立ち聞きしていたか、それとも松尾か母親のどちらかと接点のある人物が槐事件に関係しているのか。
水嶋はそう思い付いて、また口を開く。
水嶋:「じゃあ一体、誰が…」
----------パシッ!
水嶋がそう口にした時、一貴の母親が松尾に平手打ちをして無理やり引き裂く。
母親:「一貴に、触らないでよ!」
母親は肩に刺さったナイフを自分で抜いて力を振り絞って松尾を突き飛ばすと、一貴をぎゅっと抱き締めて、怒鳴り声を上げた。
母親:「言ったでしょう!
一貴は一人っ子なの。私たち夫婦には一貴しかいないの!
なのにっ…!あなたみたいな人にこの先の一貴の人生を壊されてたまるもんですかッ!!」
一貴の母親の怒りの言葉を浴びせられた松尾はショックを受ける。
それは、一年半前にも同じように言われた言葉だった。
一貴を傷付けたくなくて、それからすぐに別れ話を…。
だが、結局あの時以上に自分は傷付いて、一貴を傷付けてしまった。
自分が、一貴を好きになったばかりに一貴が連続殺人鬼になってしまうなど、夢にも思わなかったのだ。
一貴:「…違うよ、母さん。
おれが、先輩のことが好きだった。
でも突然、訳も分からずにフラれて…。
おれ、何で先輩にフラれたのかずっと悩んでた。
忘れようって思ったこともあったけど、忘れられなくって…」
だから先輩と同じ高校を選んだ、と一貴が言う。そう語った一貴の本音を初めて聞いた母親は愕然と息子を見つめる。
話を聞いていた鈴木と山下も、ようやく大体のことを理解した。
一貴があの高校を選んだ理由。
心の闇。恋心。嫉妬心…。
だが、それがなぜ連続殺人鬼、槐となるきっかけとなってしまったのかまでは理解出来そうにない。
ただただ、辛いばかりだ。
そんな一貴を見守る鈴木と山下を、水嶋と姫井、連絡を終えた高柳が見守った。
一貴はまた泣き出して、唇を噛み締めて言葉を詰まらせていた。
一貴:「…ひくっ………」
膝の上で両手のひらを拳に変えて強く握りながら、一貴は震えた声でこう話した。
一貴:「----------先輩が、女子と一緒にいるところを見たら頭にきたんだ…。
…許せなかった、どうしても。
自分はあんなふうに堂々と、先輩と一緒にいれなかったのに…」
一貴の犯行理由を聞いた松尾がさらに動揺を強めた。確かに、同じ学校に通っているのだから噂を聞いたり、目撃だって何度もされていたはず。
自分の浅はかな行動が今さらながら後ろめたく、松尾は一貴の顔を見ることが出来なくなった。
深く俯いて、静かに悲しく涙を溢した。
一貴の話を聞いた刑事、水嶋はふぅと息を吐きながらこう言った。
水嶋:「それで自分から槐になって、関係ない奴を次々と殺してたのか?
そら、復讐じゃなくてドが過ぎる我が儘だ----------」
一貴:「!槐になった理由は全然ちがう!!」
水嶋の話に一貴がそう声を上げた。
だが、そう言った途端、一貴は間の抜けたような表情になる。
一貴:(--------あれ、おれ…)
一貴は急に何かを必死に考えるように俯いた一貴の様子をすぐに察した水嶋も、ふと思い出した。
それはこの間、警察病院の面会室で第1の一条真幸と第2の槐の二条武長に会った時のこと。
記憶を徐々に取り戻しつつある真幸が口にした一つの疑問…。
--------------------------…
『…そういえば、分からないことがあるんです。聞いてくれますか?』
真幸が突然そう言ってきたので、水嶋たちと主治医の沢田と新人医師の川平、そしてずっと怯えてばかりだった武長は真幸の方を見やった。
真幸は無表情のまま、急にこんなことを言ってきた。
『まだ思い出してないからかもしれないけど…。
俺が槐になった理由がどうしても、分からないんですよ』
真幸がそう言うと、武長もハッとしながら俯いていた顔を上げた。
真幸は少し俯いて言った。
『いつの間にかある日突然、槐になってたんですよ。
…そう、あのメールを受信される前から槐である自覚があった。
だって、そうでなきゃ俺はどうして仮面の女以外に武長さんに協力していた"影武者"のことを知ってたんだろうって…』
真幸の話を聞いて、水嶋はハッとした。
確かに。第2の槐事件の間に面会した時、無理やり思い出そうとした真幸は武長の共犯者、リオこと、酒田雅春のことを言っていた。
第2の槐の情報が欲しくて、真幸に頼ってしまった時のことだからよく覚えている。
真幸の話に欠陥が無ければ、第1の槐事件で真幸と共犯者していたのは、仮面の女こと、シュウとなる。
だが、第2の槐事件の時は真幸が言った通り、武長とそっくりに整形した酒田という影武者が目の前に現れた。
第1の槐は、厳重にこの警察病院で管理されているから第2の槐事件のことなど知らないはず。
だが、真幸が何らかの記憶を頼りに酒田という存在を掘り起こした----------ということは、水嶋が思うようにやっぱり真幸たちは過去に一度は、何処かで面識があるのではないかという推測が浮上してきた。
でなければ、真幸の記憶とのつじつまが合わない。
『第3の槐も、きっと同じことを考えてるんじゃないかな----------…』
まるで、自分はそう考えていた時期があると言うかのように真幸はそう口にしていた。
ひょっとしたら真幸の脳裏にはもう"居た"のかもしれない。
三条一貴という少年の姿が----------…
------------To be Continued...