*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋5』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第5章です⇒
story.7:『母親』
------------まだ、暑い。
クーラーが効いたこの部屋でゴロゴロしている時が、静かで落ち着く時間になっていた。
市営団地の一室で、サラリーマンの父親と主婦業の間にパートをしている母親との3人暮らし。
リビングでは、母親が自分のために昼食の用意をしてくれる。
この家にもだいぶ馴れた……けど、自分の中に一つだけ"足りない"と思えることがある。
母親:「春馬くん、ご飯出来たわよ。」
ドアの前で、優しく声を掛けて来てくれる母親の早織。
早織:「一緒に食べましょう?」
春馬:「はい…」
------------この人(早織)は、優しい。
だから嫌いじゃない。
父親の昌弘も、優しくって。
自分がやりたい事を反対したことはない。
大学に行かずに、運送会社に就職を決めた時も応援してくれた。
高校を卒業した際は、ちょっと豪華な料理を作ってくれた。
入社祝いに、2人から腕時計を貰った。
大事に、机の引き出しに仕舞ってある。
使えなかったのは、壊したら悪いから------------という単純な理由ではない。
春馬:「ねぇ、早織さん」
向かい合って昼食を取っていた時、春馬はそう母親に話し掛けた。
実は、父親のことも"お父さん"とは呼んでいない。
だから、これが春馬の"普通"なのだ。
早織:「なに?」
早織はちょっと不思議に思って聞き返すと、春馬は呟くような声で言った。
春馬:「妹が欲しい」
早織:「え!?」
変な悲鳴を上げた拍子に、早織は箸を床に落としてしまった。
早織は慌てて箸を拾ってから流し台へ行き、蛇口を捻って箸を洗った。
早織は頬を火照らせていたが、春馬は別に気に止めなかった。
春馬:「ムリ?」
早織:「あ…えっと、ね……」
早織はどう答えればいいのか分からず困惑する。
春馬はそこでようやくハッと気が付いた。
春馬:「ごめんなさい…」
早織:「い、いいのよ。
そうよね……兄弟はいた方が、良いわよね!」
早織はそう言った後、なぜか残念そうな顔をした。
春馬はそれにも気が付いて早織を見ると、早織は話してくれた。
早織:「…でもね、お母さん。
もう子供は産めないの。…病気して、子宮取っちゃったから」
春馬:「……………。」
初めて知った。
早織にそんな過去があっただなんて、春馬は想像もしていなかった。それだけ、彼女のことをいつも平凡に見えていたから。
早織:「だから私が産んだのは、春馬くんだけよ」
早織はそう言って、優しく微笑みながら。
早織:「あなたたちが、健やかでみんなに優しい子で……お母さん、すごく嬉しいのよ」
春馬:「…………そう、ですか」
ズキッと、胸が痛んだ。
早織はいつだって自分のことも思ってくれている。
春馬:(なのに…)
このモヤモヤした気持ちは、一体何だと言うんだ----------…。
たぶん、それは昨日。
オレ、五条春馬が"人殺し"をしてきたから------------うん、きっとそうだ。
………「そうだ」と、言ってくれ。
--------------------------…
同じ時間、閑静な住宅街にある3階建ての一軒家。
3階の部屋にいた青年はギターの手入れをしてから、それをケースに仕舞って、クローゼットの中に隠すように仕舞い込んだ。
けど、隠したからってあまり意味はない気がすると、最近…いや、昨日気が付いた。
悠一:(見られた…よな。)
昨日、家を飛び出す時に妹のさくらにギターケースを思いきり見られたと、西原悠一は思った。
昨夜、遅くに帰って来たが家族は既に寝床についていたし、悠一は家族に気付かれないようにそっと3階まで上がった。
『お帰りなさい。晩ご飯は、リビングに置いてあるからお腹が空いてたら食べてください。 母より』と書かれたメモが机の上にあった。
1階のリビングに降りて、キッチン台に行ったら晩ご飯の鶏の唐揚げと野菜サラダ。
ご飯も、保温のまま炊飯器の中にあった。
悠一は唐揚げをレンジで温めてから、お盆に乗せて3階の自分の部屋で一人で食べた。
食べたら、リビングのキッチンの流し台に入れて急いで部屋に戻った。
悠一:(誰かが起きてきた気配を感じたから、なんだけど…)
母親の美佐子だったのか。
それとも、別の誰かか------------。
どちらにしろ、見付かったら余計に気まずいことになっていた気がしないでもない。
------------コンコンッ
と、突然ドアがノックされて部屋が開け放たれた。
悠一:「!」
さくら:「ちょっとアンタ!
何度呼べば来るのよ!!ご飯いるの?いらないの!?」
2歳下の妹、さくらがイライラした顔でそう言ってきた。
…気付かなかった、呼ばれていたなんて。
けど、そんなこと言ったら確実に面倒なことになりかねない。
悠一:「ごめん…。
片付け、今終わったからすぐ行くよ」
さくら:「早くしてよね!あーあ、ペコペコ〜」
さくらはそう言って、先に階段を降りて行く。
さくらが降りた後、悠一もすぐに部屋を出ようとした------------その時だった。
ピピピッ!
ケータイの、メールの着信音。
悠一はゾクリと身を震わせながら足を止めてしまう。
悠一:(ダメだ…)
今のメールが、例の悪魔からのものだとしたら開いちゃいけない。
悠一はベッドに放置したままのケータイを気になり出す。
急に滝のような汗が出て、開かないようにと自身に言い聞かせた。
そして、悠一は決意する。
悠一:「アートロ、俺は…絶対に開かないからな!」
悠一はそう宣言して、部屋から出てドアを閉めた。
悠一が階段を降りたことを確認してから、窓の外にいた犬の仮面の男・アートロが部屋に入って、悠一のケータイのメール受信箱を確認した。
案の定、メールはあのメールの主からのもので、アートロは関心したかのようにこう言った。
アートロ:「ご主人様、見事にフラれちゃいましたー」
はい、残念!と、自分のケータイでメールの主こと、ご主人様に連絡するアートロ。
アートロ:「しっかしすっげー。
『人間は誰しもマインドコントロールには逆らえない』なんて、アレ絶対にウソ!大ウソ!」
アートロは自身の声が大きくなっていたことに気付いて、ハッと仮面の口の部分を押さえる。
アートロ:「…はてさて。
困ったなぁ……こうなったら無理やりこのメールを見せるとかしないと、今回はスムーズに進まないパターンかも。」
アートロは自身の髪をくしゃくしゃと掻きながら、ご主人様の判断を待つが、困っているのはゲームが進まないことではない。
アートロ:「これじゃあ、いつまで経っても水嶋さんが僕ちんに会いに来ないしぃ〜」
アートロはそう口にしてから、ハッとした。
アートロ:「あ、いや。水嶋さんはあくまで槐を逮捕しに来るんだったっけ?」
向こうは刑事さんだもんね、とアートロはテヘペロ☆とお茶目なポーズをしていた時、アートロのケータイが鳴る。
アートロ:「おーっと!なになに?ご主人様は何だって?」
アートロはそう言いながらメールを読み上げた。
『それは残念ですね。
私は、こんなに悠一さんのことを求めているというのに…
仕方ありません…
"もう一人の槐"に連絡します。
アートロくんは、悠一さんの傍にいてあげてくださいね』
ご主人様からのメールを読んだアートロは、はぁとため息を吐きながら口にした。
アートロ:「つまり、もっと催眠を強めればいいんですね?…しょうがないなぁ」
可哀想だけど、今回の槐ゲームはそれが決まりだから…と、アートロはその先は大人しく悠一が部屋に戻って来るのを待つことにしたのだった。
------------To be Continued...