*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋5』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第5章です⇒
story.15:『素直な気持ち』
時計の張りが7時を回った頃、西原悠一は母・美佐子と共に昨日も来たばかりの駅前へ来た。
昨日と同じ場所にギターケースを置いて、昨日は楽譜を支えるための物を立て、そこに作詞・作曲した紙を置いて、風に飛ばされないようにピンで止めた。
悠一はかなり緊張しながらその作業をどうにか終わらせると、ギターケースから愛用のギターを取り出し、構える。
目の前には、招待した美佐子以外にも昨日も見てくれた人たちもいて、悠一は嬉しい気持ちと変なプレッシャーに苛まれた。
が、勇気を出してこう言った。
悠一:「今日は、今日が誕生日である俺の母親を招待しました!」
悠一の言葉に、周囲の人々から暖かい拍手や「おめでとう」などの言葉を掛けられて、美佐子は照れてしまう。
ストリートシンガーをしているとは聞いたが、もうファンまでいるだなんて聞いていなかった。
美佐子も緊張しながら、悠一を見つめる。
悠一は小さく深呼吸してから、ギターを弾き始めた。
それは、昨日もいちばん最初に披露した曲だった。
美佐子:(悠一くん……)
この歌は、悠一の本当の想い。
"会いたい"と歌っている。
それが"誰"なのか、美佐子にはすぐに理解することが出来た。
季節がふいに
君を連れて来たのか
いまさら僕はいるはずもない
あの場所へと あぁ
くたびれたバス停
揺れる花の香り
二人並んだ影 伸びていた
消したい 消したい
でも消えない
孤独な部屋と君の残り香
切ない 切ない 風が運ぶ
金木犀の香り 届けてくる
悠一の中では、"五条家"との想い出はまだ生き続けている。
だが、それでも自分たちのために前を向こうとしてくれている。
美佐子:「っ…」
涙が出てきた。
どうして、自分たちは悠一と春馬に選択をさせてあげられなかったのだろうか。
どうして、何もかも彼らに押し付けてしまっていたのか。
そんな酷い親なのに、悠一は自分のために大事な歌を唄ってくれたのだ。
美佐子:(優しい子…)
この子(悠一)の優しいところを育んでくれたのは、紛れもなく五条夫婦。
大事に、大事に、実の子として育ててくれて。
血の繋がりがないことを知っても、あの夫婦は悠一を選んだ。
自分も、"そのつもりだった"。
悲しみの向こうに
光を信じたい
君の好きな花が
ほのかに香り出した
悠一が、美佐子をまっすぐに見つめながら、優しい表情でその歌詞の部分を唄った。
美佐子の中に、優しい風が通った。自分の中に溜め込んでいた感情が、溶け出すような。
悠一に、励ましてもらった。
"信じる"------------その言葉が本物だと、美佐子は核心した。
会いたい 会いたい
でも会えない
孤独の胸に花を咲かせた
なみだ なみだ
熱いなみだ
金木犀の 花は色褪せない
悠一のギターは、とても心地の良い感じで、爽やかに一曲目を終了させた。
美佐子は迷うことなく、その場で心いっぱいの拍手を送った。
悠一は満足げな笑みを浮かべながら、こう言ってきた。
悠一:「よしっ!じゃあ、この調子でどんどん披露します!」
観客:「おおっ!いいぞ!」
観客:「楽しみー!」
観客:「お母さんにも目一杯満足してもらわないとね!」
悠一:「はい!じゃあ、次は…この曲にしよう」
悠一はそう言ってから、ふと美佐子を見て言ってきた。
悠一:「聞いてね。…えっと、そのっ………"お母さん"!」
美佐子:「!」
照れながら、悠一が初めて自分のことを"お母さん"と呼んでくれて、美佐子はまた涙が溢れ出た。
悠一は頬を赤くしながら、今度は静かにギターを弾き始めた。
自分の代わりはあるけれど
ひとつだけと思えるものが
こころを動かす
壊れやすく
脆い時間の隙間を
ただつなぎながら
夜明けは月より遠い
何故かは言わずに笑いたいと
心配は胸の奥にしまう
切ない歌------------では、ない。これは、新たな道へまっすぐ見つめるために、前を向く決意をした"始まり"の歌だ。
また陽が昇るように
誰かを包むように
人の積み上げた物語を読んで
嵐が過ぎた後も
世界の鼓動が今のまま
明日を刻むでしょう
眠りに落ちて僕は祈った
stay with the world
人間って、難しい。
理解し合いたいのに、通じ会わなくて、すれ違ってしまう。
それでも一時、自分が悠一にとって安心出来る居場所になってあげたい。
悠一と一緒に暮らすと決めた時から、ずっと願っていたこと。
美佐子:「辛かったよね…」
悠一:「え?」
ストリートの帰り、悠一は母・美佐子と並んで家路へ向かっていた時、美佐子の口からこう続けて言われた。
美佐子:「いきなり、私たちが本当の両親ですって言われて…。
ごめんなさいね……けど、お母さんやっぱりなんか、情けない」
美佐子はそう言いながら、道の途中で立ち止まる。
悠一もすぐに立ち止まり、美佐子の方を振り返った。
美佐子:「五条家のご両親…本当に、素敵な人たちだったから。
悠一くんのこと、大事に育ててくれたから。なのに、こちらの都合で無理やり引き離すようなまねを…」
美佐子はまた泣きながら、こう言った。
美佐子:「春馬は…こんなお母さんでもいいって言ってくれたのに。あの子に、何にもしてあげられなかった…」
悠一:「お母さん…。
お母さんの気持ち、春馬くんはちゃんと分かってますよ」
悠一は確信出来ると言わんばかりに、はっきりと言ってきた。
悠一:「少なくとも、俺は…春馬くんがお母さんを好きな理由が分かって来ました。……だから、離れてても俺が五条家の両親のことが好きなように、春馬くんもお母さんのことが好きなはずです。あと、さくらちゃんも……」
悠一がそう言うと、美佐子は少し安堵することが出来た。
そうだったら、嬉しい。
美佐子:「ありがとう。さぁ、早く家に帰りましょう」
悠一:「はい。お母さん…」
笑顔を合わせてから、2人で再び家路へと歩き出した。
今日という一日で、ようやく前進した親子の仲を、西原家の屋根に俯せに寝そべった体勢で、犬の仮面の男・アートロは確認した。
アートロ:「うぅっ…。
悠一く〜ん、なかなかの成長っぷりで、僕ちん感動…!」
アートロは大袈裟に腕で顔を覆いながら、そう一人で言ってから、ふぅと息をついて言った。
アートロ:「じゃあ、今度は本格的にこっちの方をやって頂こうかなぁ…」
アートロは、悠一が美佐子と家の玄関の中へ入って行ったことを確認してから、ケータイの写メ付きのメール文章を送信した。
宛て先はもちろん、悠一へ。
アートロ:「悠一くん、どうするかな〜?」
美佐子と心を通わせ、春馬の存在をしっかり認め、尚且つ五条家への想いを改めて口にした悠一。
もし、彼が現在警察署の牢獄の中だと知ったら、悠一はどう動くのだろうか。
アートロは少し不気味に笑いながら、屋根の上で悠一がメールを見るのを待つことにしたのだ。
------------To be Continued...