*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋5』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第5章です⇒
story.30:『絆』
春馬が投げたナイフが飛んで来ているのに、水嶋は避けない。
アートロ:「!」
高柳:「水嶋先輩っ!」
水嶋は逃げるどころか悠一を助けに向かった。
アートロ:(あぁ…そういえば、)
水嶋律という男はこのくらいじゃ動じない人だった…と、アートロは思い出した時、春馬が水嶋を押し倒した。
水嶋:「っ------------!?」
春馬:「……………。」
春馬が水嶋を押さえ付けている間に、悠一が逃走してしまう。
悠一が会場から逃げた後、春馬はハッと気が付いて立ち上がった。
春馬:「悠一くん!!」
春馬は悠一の名を呼んだ後、アートロを探したが、アートロの姿は既になかった。
それに気付いた瞬間、春馬は床に尻餅を付いてまたハッとしながら額に手を充てる。
そして、葉月や義孝を刺した時に浴びた返り血の存在に気が付くと、途端に怯えた表情をしながら言った。
春馬:「えっ…ど、どうして……血が、血が!!」
高柳:「!水嶋先輩…これは!」
水嶋:「チッ…またやられた!」
水嶋はそう言うと、立ち上がって会場の外を目指す。
水嶋:「だが、今は悠一くんだ!
アートロが言ったことが事実なら、悠一の身が危ない!」
姫井:「警部!私も悠一くんを追います!」
高柳:「僕もっ!」
石塚:「ああ、こっちにも今、みんなが向かってるから早く!」
透真:「頼んだぞ!」
そう声を掛けて、水嶋たち3人を見送った後、春馬に視線を向けた。春馬は頭を抱えながら小さくなって震えていた。
透真:「………………。」
石塚:「君、自分の名前は言えるかい?」
傍に寄り添った石塚がそう問い掛けると、春馬はこう応えた。
春馬:「に…西原、春馬。」
春馬がそう応えた時、会場内に残っていた美佐子が振り返る。
石塚:「ここへは、何しに来たのかな?」
石塚がさらにそう続けると、春馬は会場内を見渡してからこう口にした。
春馬:「お…お爺ちゃんの、葬儀のために。
……優しい人だったんだぁ」
春馬はそう穏やかな表情を浮かべながら、こう続けた。
春馬:「お爺ちゃんが言ってた………『お前は、どんなことがあっても私の孫だから。自信持ってていいんだよ』って……。
……お爺ちゃん、オレとは血が繋がっていないって、分かってたのかな?」
春馬はそう言うと、またうずくまりながら言った。
春馬:「オレの、唯一の…味方だったのに。
オレ…この先、どうなっちゃうんだろう」
美佐子:「は、春馬…!」
春馬の心の闇……。
美佐子はそれに触れた時、春馬をぎゅっと抱き締めながら言った。
美佐子:「ごめんねぇっ!
春馬ぁ…もう独りぼっちにさせないからぁ…!」
春馬:「…………うん。良かったー……」
春馬はこの上なく幸せそうに微笑んで、美佐子に抱き締められる。
石塚と透真はそれを見つめていると、傍に五条の両親が近付いて来て言った。
昌弘:「私たちも、悠一を追います!
悠一を救ってあげないと!」
早織:「失礼します!」
2人はそう言って、会場内を抜け出した。
すると、会場内から、さくらの声が響いた。
さくら:「お父さんのせいだからね!!
お父さんがしっかりしてないから、マザコンだからお兄ちゃんたちがこんな辛い目に遭ったの!
お婆ちゃんも死ななかった----------!」
葉月:「か…勝手に、殺すんじゃ…ありません」
義孝:「母さん!」
葉月がそう声を発したことで、透真が駆け足で近付いた。
確認すると、葉月が身に纏っていた着物の帯に浅く傷が突いていたのだ。
透真は、気付いた。
帯にナイフを突き刺したのは、悠一の方。
悠一は、葉月を傷付けてはいなかった。
葉月もそれを分かっているのか否か、黙ったまま春馬に刺された腹部をぐっと押さえながら痛みに堪えていた。
透真:「……これからは、義孝さんじゃなくって孫を心配してやってください。
あなたの旦那さんがそうであったように…」
葉月:「……………………。」
葉月は返事を返すことはなかったが、表情はこれまでの自分の行いを反省するかのようだった。
他の警察官や救急隊が到着し、一先ずここは平気そうだ。
問題は、水嶋たちが追った悠一と共犯のアートロの方だ。
透真:(それにしても、アートロって奴…)
透真はふとアートロの"行動"を思い出し、気になった。
春馬をマインドコントロールしてまで、水嶋を"庇った"……その行動に。
--------------------------…
悠一を追い掛けて、水嶋たちは大勢の人間が集まる駅前まで走ってきた。
上手く人並みを掻き分けて逃走する悠一がかろうじて見える距離を保って、水嶋は追い掛けていた。
水嶋:「悠一くん、頼むから待ってくれ!」
そう声を上げるが、悠一本人には届かない。
見失うわけにはいかず、無我夢中で追い掛けていた------------その時、水嶋は人とぶつかる。
男性:「うわっ!」
水嶋:「すまん!急いでたから」
水嶋はそう言って、よろけていた若い男性を起き上がらせた。
だが、男性はすぐにある事に気が付く。
男性:「つ…杖が。すみません、杖を探してください。目が見えないんです……」
水嶋:「!ま、待ってろ!」
高柳:「水嶋先輩!僕たち先に行きます!」
水嶋:「ああ、絶対に後から追い付く!」
水嶋は高柳と姫井にそう声を掛けてから、男性に言った。
水嶋:「ちょっと、ここで待っててください」
男性:「はい…。
すみません、急ぎの用だったのに…」
水嶋:「いや、悪いのは俺だ。
待ってて。すぐ探すから……」
水嶋はそう言って周囲を見渡すと、男性の物らしい杖を見付けた。
水嶋はすぐに杖を取りに行くと、杖を男性に握らせた。
水嶋:「杖、ありましたよ」
男性:「ありがとうございます。
…では、僕はこれで。」
水嶋:「はい!気を付けて!」
水嶋は男性が背を向けて歩き出したのを見てから、また急いで悠一を追い掛けて行った。
水嶋と別れた後、男性はふと足を止めて少し後ろを振り返る仕草をしながらこう口にした。
男性:「第5の槐との追い掛けっこ、ご苦労様です------------------……"水嶋律"さん。」
男性はそう口にすると、再び歩き出す。
杖を付いて歩きながら、男性は続けてこう口にした。
男性:「第5の槐が済んだら、今度は"僕"と、追い掛けっこしましょうね……」
男性は薄く笑みを浮かべながら、思っていた。
誰が思うだろうか。
今、会ったばかりの視覚障害を持つ自分と再び合間見える日が来るだなんて。
男性:(次の槐-エンジュ-は、僕です…)
男性はそう心の中で呟きながら、人並みの中に消えてゆく。
杖を付く音を響かせながら…。
------------To be Continued...