*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋6』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第6章です⇒
story.5:『自分のこと』
田原鉄筋工場株式会社の応接間に、田原社長と並び座っていたのはこの会社の事務員として働く視覚障害者、六条薫だった。
田原:「…さて。次で最後だぞ!
終わったらもう5時過ぎるし、帰り支度して今日は上がれ?」
薫:「は、はい…」
田原からそう言われながら、薫は自分の手元にあった履歴書に事前に打ってあった点字を指でなぞりながら読んだ。
----------次は、女性らしい。
薫:「加藤智秋さん……。
学歴は高卒。年齢は19……今年、卒業したばかりですかね?」
田原:「みたいだな。
大方、職業困難かクビになるかで職に着けなかったんだろ」
薫:「今回は中途採用で、工場勤務希望ですよね。女性が、続けられますかね?」
薫は少し心配しながら田原に尋ねると、田原は「うーん…」と口にしてからこう言ってきた。
田原:「まぁ、いざとなれば重い鉄筋を運んでもらう仕事だからなぁ……女の子には厳しいかもしれんが。
最終的には、彼女次第だろう」
田原はそう言ってから、ふと何かに気が付いて口にした。
田原:「おお、いらっしゃい」
薫:「!」
田原のその言葉で、面接を受けにやって来た加藤智秋という女性が来たと、薫は直感した。
そして案の定、加藤智秋という女性は事務所の出入り口付近から挨拶してきた。
加藤:「こんにちは!加藤智秋といいます。本日は、よろしくお願いします!」
田原:「よろしく。じゃあ、面接を始めるからこっちまで来てください」
田原はそう言ってから、ソファーから立ち上がり湯飲みにお茶を入れに行く。
加藤という女性は近くまで急ぐようにやって来るなり言った。
加藤:「?えっと…?」
社長自らお茶汲みをしに行き、ソファーに座ったままの自分が動かない。
彼女は、自分のことを怪訝に思っているに違いない。
今日、面接を受けに来た人たちも全員そうだった。
だからこそ、薫は率先してやるべき事がある。
薫:「初めまして、事務員の六条と言います。どうぞ、お掛けください」
加藤:「は、はい…?」
薫の誘導に、加藤は不思議そうに返事をしながら前にあるソファーに座る。
すると、お茶を入れに行っていた田原が戻って来て、3人分の湯飲みをテーブルに置いた。
田原:「熱いから気を付けて。」
加藤:「ありがとうございます!頂きます!」
加藤はそう言ってから、お茶を一口飲んだ。
田原:「薫。手、掴むぞ」
加藤:「!」
田原が、薫の両手に自分の手を添えて湯飲みに触れさせる。
薫は湯飲みの温度を感じると、田原に礼を言ってから湯飲みを両手で持ち、お茶を飲んだ。
加藤はボーッとその光景を見つめていたらしく、田原はそれに気が付くとこう言った。
田原:「コイツ、六条薫って言うんだ。視界がまったく見えないから、普段は電話番をしてもらってる。これからは少しずつ、薫の得意そうな仕事を増やしてくつもりでいる。」
田原はそうやって先ず、薫の事情を説明してから話しをした。
田原:「はっきり言おう。薫が一人で出来る仕事は本当に限られている」
------------ズキンッ…
これで何度目だろうか。
先ほどから、これで7度同じ説明を隣で聞いている。
本当のことなんだけど、やっぱりすごくすごく辛い。
薫:(自分で、目を悪くしたわけじゃない…)
そうだ。全部"アイツら"さえ、自分たちの目の前に現れていなければ。
……でなかったら、"あの人"も死なずに済んだのに。
思い出すたびに辛くて涙が出そうになって、そのたびに涙を堪えてきた薫だったが、とうとう堪えられなくなってしまった。
薫の目から、涙が溢れた。
田原:「ゴメン、薫!
悪かった……言い方が悪すぎた、すまない」
薫:「だ、大丈夫です……こちらこそ、すみません…っ」
田原が、自分のハンカチで薫の涙を拭く。
田原は薫の湯飲みを一旦テーブルに置いてから、ハンカチを薫に渡した。
薫が必死に涙を拭いていると、田原はこう言ってきた。
田原:「薫は、目が見えないから一人には出来ない。…うちは事務もだが、最近になって工場も人手が足りなくなっちまってなぁ。
これを機に工場の方に人手を増やして、オレが事務へ回って薫と雑務をやろうと思ってる。
また時期が来たら、事務員も増やす予定だ。
既に一緒に働いている人たちにも理解してもらっている。
面接を受けに来てくれた全員にも話した。
薫という存在を理解した上で、ここで働きたいかは後日、君が判断してくれ」
加藤:「……………………。」
加藤は今、黙っている。
考えている……ことは、分かっている。
だが、今日面接を受けに来た人たちは皆、自分のことを聞いてから態度が変わった。
何と言うか…"面倒だなぁ"とでも思っているかのようなテンションの下がった声だった。
きっと、彼らはもう連絡してくることはないだろう。
田原:「何か質問がなければ、今日はもう帰ってもいいよ。
そろそろ薫も帰さないと……夜遅くなると、両親が心配するし」
加藤:「あ、あの!」
田原の話しを遮って、加藤がこう言ってきた。
加藤:「私、今すぐにでも働かなくちゃいけないんです!お願いします!」
田原:「う、うーん…。事情はよく分からんが、落ち着いて。」
加藤:「お願いします!私も、ちゃんと六条さんに協力しますからっ!」
薫:「…………………。」
田原:「いや、そうゆう意味じゃないんだよ」
加藤の言葉を聞いて、薫は先ほどよりももっと落ち込んだ。
彼女の目に写る自分は、それほどまでに役立たずに見えるのか。
隣にいた田原も、呆れたように言ってからこう言った。
田原:「さっき、薫にも同じことを言ったんだが。仕事は基本的につまらない。
だからこそ、仲間と楽しく良い職場にする……それがこちらの考えなんだ。
働いてもらうからには途中で放り投げてほしくないんだよ。
家に帰ってからよーく考えてみてくれ。
5年後、自分がどう在りたいかをちゃんと考えてほしいんだ。
……分かって、くれるかい?」
加藤:「……はい。すみませんでした…」
田原の言葉は、間違いなく加藤の心に響いてくれていると思う。
薫:(5年後の、自分……)
田原のこと、職場の仲間のこと、両親のこと------------薫は尊敬している。
どう在りたいか、という言葉に気持ちが揺れる。
薫:(僕は、復讐を達成したい)
こんなこと、皆が聞いたらショックを受けるだろう。
けど、自分は"あの日"から奴らに復讐することを中心に自身の世界を回していた。
その先にある願いは------------ただ、生きていたいという想いだけだ。
------------To be Continued...