*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋~特別編-鳥の仮面の男』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の特別編です⇒
story.26:『託された想い』
23階にエレベーターが到着し、水嶋と姫井が姿を現した。
水嶋と姫井はエレベーターから降りるなり、もう一つのエレベーターの前に立つ。
実は自分たちがエレベーターに乗る前から、隣のエレベーターが17階で停止したままなのだ。
そして、23階に到着してからもう一つのエレベーターがどこで止まっているのかを調べる。
水嶋:「17階で停止してる…。
警視庁の刑事さんたち、閉じ込められてるな…」
姫井:「水嶋。まだ、警視庁の方々は到着していないみたい…」
姫井の話を聞いて、非常階段から突入していたという警視庁の刑事たちはまだ到着していないのかもしれないと水嶋も思った。
だが、このエリアは異様に静かで嫌な感じがするし、水嶋や姫井の鼻にむせるような血の臭いがして、決心した。
水嶋:「……とりあえず、奥へ行ってみるか。姫井、拳銃を構えていろ。」
姫井:「分かった…」
姫井は、隠し持っていた拳銃を手に握る。
水嶋も拳銃を用意して、2人で奥へ進むことにした。
廊下の分かれ道に突き当たった時、左側の……恐らく会議室と思われる部屋のドアが開いていることと、血液の滴が廊下の奥へ線のように続いている光景が見えた。
先ほどから、血の臭いはあの会議室から漂っていた。
水嶋:(長尾……お前、まさか)
水嶋はそう悪い予感を察しながら、ドアの方へ近付いてゆく。
姫井も後ろからついて行くと、水嶋が先に会議室の中へ視線をやり、その光景を目に焼き付けられてしまった。
水嶋が会議室の中へ先に入ると、姫井も拳銃を握ったまま部屋の中へ入る。
姫井:「っ…!?」
姫井は真っ先に一番奥の椅子に座り頭から血を流して、既に死亡していた雑誌記者・長尾実を視界に捉えた。
姫井:「長尾っ!」
姫井は拳銃を降ろして長尾のもとへ近付こうとしたが、自分の足元には無関係だった社長や役員の亡骸も存在していた。
姫井が強張って動けないでいると、水嶋は姫井とは逆方向へ向かって歩く。
一人の男性役員に、話し掛けた。
水嶋:「安心して、警察です。分かりますか?」
役員:「うぅっ…」
腕や足から血を流していた男性役員は、水嶋の声に反応して、水嶋の方を見た。
水嶋は自分の警察手帳を男性役員に見せると、男性は少しホッとした表情を見せた。
水嶋:「すみません…、医療知識がなくて。
弾は取り出せませんが、軽い応急措置をしますね」
水嶋はそう言ってから、自分のハンカチや男性のハンカチを傷口できつく縛った。
男性役員を一先ず仰向けで寝かせると、男性役員は他の役員の死体を見て怯えた表情をする。
水嶋は男性の心境は察知しつつ、男性に尋ねてみた。
水嶋:「宜しければ、ここで何があったか教えてください。無理に、とは言いません…」
役員:「………は、はい。
と、突然……会議中に男性が入って来て…っ……拳銃で撃たれました。…い、生きてると知られたら……って思って……ずっと、じっと……してたんです」
男性役員は、水嶋と姫井がここへやって来るまでの恐怖体験を語った後、落ち着いて話した。
役員:「我々を撃った犯人が、もう一人……縄で縛った男性を奥の椅子まで引きずってって…っ…。
犯人が、椅子に座った時に…っ……"本当は、自分はここにいるはずだった"って……」
男性役員は、城之内と長尾の会話を思い出しながら話を続けた。
役員:「男性は…雑誌の……記者で、過去に犯人の父親の罪を……記事にしたって。
そのせいで、父親を憎んだり……惨めに母親が死んだり、姉たちと縁を切らなきゃいけなかったり……っ……辛かったって。」
役員はそう話したが、すぐに水嶋を見ながら言った。
役員:「けど、男性のことは…っ……間違ってないって…。
でも……自分が、犯罪者になれる人間だと気付かせた張本人だから……っ…それは、許せない…と。父親の、横領が……世間にバレてなくても……っ…自分は、罪に、加担していた、て……」
水嶋:「………………。」
水嶋が黙って、男性役員の話を聞いていた時、姫井はようやく長尾の亡骸のもとにいた。
縛られていたのか、手首が赤くなっていた。
信じられなかった……。
つい最近まで『姫井ちゃん』と呼んで引っ付いて来たり、猫の世話をお願いしてきたり、警察署へ押し付けて、コンサートへ行って、プレゼントまでしてきた長尾実が………死んでしまったなんて。
姫井が呆然と立ち尽くしていると、水嶋は男性役員に問い掛けた。
水嶋:「長尾……男性の方は、何か言っていましたか?」
水嶋の問い掛けに、男性役員は頷いてから話した。
役員:「自分は、記者だから……知った以上、真実を隠すことは出来ないって。
望みがあるなら、言えって……犯人に。……たぶん、犯人の望みは、男性が…っ…死ぬこと、だったんだと思います……」
犯人である城之内は所持していた拳銃で、長尾の頭を撃った。
水嶋も姫井も、それは想像出来た時、男性役員がこう言ってきた。
役員:「男性が、最後の言葉を……っ…犯人に、託していました」
水嶋:「最後の、言葉……」
水嶋がそう言うと、男性役員は痛みと先ほどの出来事から辛そうな表情を浮かべながら、話してくれた。
役員:「水嶋と、姫井という刑事が来たら…伝えてほしいって。」
水嶋と姫井が聞き耳を立てると、男性役員は言った。
役員:「……っ…最後まで、猫の…面倒、見れなくなった……。
アイツらのことを……頼む……と。……あと、水嶋さんに……こう伝えて、ほしいって」
水嶋:「何と…?」
男性役員は、水嶋に長尾のメッセージを伝えてきた。
役員:「この事件の、中心には…っ……きっと、"アキナ"巡査が…いるって……」
男性役員の話を聞いて、姫井の中には『廃倉庫未成年少女誘拐殺人事件』で殉職したが、資料にはプロフィールの記載が一切書かれていなかった"アキナ"という人物のことを思い出した。
そして水嶋もまた、先ほど田原鉄筋工場で六条薫を確保した際に、薫が口にしていた名前が脳裏に過った。
水嶋:("アキナ"……)
ほんの僅かの間だけの、かつての恋人の名前が水嶋の中で不安を仰ぐ。
"アキナ"は、確かに間違いなく、死んだ------------------自分の目の前で。
水嶋:(まさか……この事件の、黒幕って------------…)
水嶋の中で、一人の少年と二人の少女の顔が浮かび上がった------------その時、遠くから聞き覚えのある少年の声がした。
それに反応した水嶋は、キョトンとした表情を浮かべた。
水嶋:(俺……"今、何を考えて"……?)
まだ自分はボケる年齢ではないはずなのに、先ほど自分が考えていたことが"思い出せない"。
水嶋が必死に思い出そうとしていると、再び少年の悲鳴が聞こえてきた。
水嶋:「…くそっ!姫井!お前は男性とここにいろ。…俺は、奥へ行ってみる!」
姫井:「分かった……。任せて」
姫井はそう冷静に返事をすると、水嶋は駆け足で会議室から出て行った。
すると、男性役員は思い出したようにこう言ってきた。
役員:「…あと、姫井という警察官にも……こう言ってました。
『姫井ちゃん……俺がマジで死んだら、俺の部屋の本棚を見て。
"アイツ"は俺の……同級生だったんだ。------------あと、結婚はしなよ?
俺、姫井ちゃんの子供として生まれ変わる予定だから。なんちゃって……』って。
……殺されるって、分かっているのに……笑ってましたよ。」
姫井:「……っ…」
姫井は、泣いていた。
その涙を男性には見せず、長尾の方へ向けながら、色々思うところがあった。
余計なお世話…だとか。
絶対に、嫌よ…とか。
暢気に構えてんじゃないわよ……など、長尾に対する文句は口にしたら切りがない。
姫井:(…でも、分かった。)
長尾に託されたものは、自分が必ず手に入れる。
長尾のメッセージを胸に秘めながら、姫井は槐事件のキーパーソンとなる人物である、"アキナ"について突き止める決意を固めたのであった。
------------To be Continued...