*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋8』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第8章です⇒
story.20:『伝言』
真夜中の2時になる------------一人の女が、一軒のアパートの屋根に到着した。
兎の仮面の女こと、雪見。
急いだのか、彼女は息を弾ませていた。
息を整えるために深呼吸をした彼女は、アパートの一階へ静かに降りた。
すると、部屋では八条大夢が一人で起きていた。
雪見:(なるほど…)
大夢の黒で統一された服装に、薄紫色のスカーフという格好を見て、雪見は納得した。
そして、雪見は軽くガラス戸をノックした。
その音に気付いた大夢は、ベランダのガラス戸の前まで来た。
だが、開けようとしてくれない。
雪見:「大夢様。私です、雪見です。戸を開けてください」
大夢:「別にいいよ」
------------------だが、
大夢:「おれの邪魔をしないなら」
大夢はそう言った後、こう続けて言った。
大夢:「ご主人様の指示を待ってたら、パパが来ちゃう。
お爺ちゃんとお婆ちゃんを殺した意味が無くなる……」
雪見:「我々は、指示を利くように言いに来たのではありません。
すぐに移動を願うために、ここへ来ました」
雪見の話しを聞いて、大夢はようやく戸を開けてくれた。
雪見はそのまま、話を続けた。
雪見:「つい1時間半前に、拓斗様が鮎川さんと一緒に移動しました。……今、こちらへ向かっています。恐らく、ニュース速報を観たのでしょう」
雪見はそう言うと、重大な事実を口にした。
雪見:「拓斗様が、鮎川さんに自分が第8の槐であることを話しました。それを聞いた鮎川さんが、犯行の手助けを志願なさったのです。おふたりも、ラストターゲットを狙っています。」
大夢:「はっ、早く行かなきゃ!」
雪見:「それともうひとつ…」
雪見がそう言うと、いきなり照明ライトがこちらを照らす。
雪見:「遅かったみたいです…」
雪見が向いた方向を見ると、そこには刑事・水嶋律がいた。
水嶋:「そこから動くな!」
雪見:「……だ、そうです。」
大夢:「そうはいかないっ!」
大夢は庭へ飛び出すと、勢いよく向かいの一軒家に飛び乗った。
大夢:「"おれの仕事"の邪魔は、絶対に赦さないっ!」
大夢は大声でそう言ってから、一人でラストターゲットである実母・夏実のところへ行ってしまう。
すると、水嶋は無線機を使い、言った。
水嶋:「大夢くんがそっちへ向かった。俺もすぐに行く」
『分かりました!』
高柳の声を確認してから、水嶋は一人現場に残った雪見を見る。
雪見は、水嶋と対するように立ちながら微動だにしなかったが、水嶋の問い掛けに状況が変わる。
水嶋:「……聞いたぞ。
会社、辞めたんだってなァ?」
雪見:「…っ……」
水嶋:「きっかけは、薫くんが逮捕されたからか?」
雪見:「…やっぱり、"あの時"」
雪見は思わず、そう口にした。
すると、水嶋はこう言ってきた。
水嶋:「"加藤智秋"さん……。
君まで、どうして槐事件に…」
雪見:「……決まってます。復讐のためです。」
水嶋が名指したことは否定せず、雪見こと、加藤智秋はこう話を続けた。
雪見:「"私の復讐対象も"、難しい場所にいるんですよ」
水嶋:「なるほど…」
雪見こと、加藤智秋の言葉を聞いて、水嶋は頷いた。
アートロこと、伊藤諒紀の復讐対象は大阪刑務所にいる実父・小倉忠邦。
既に死刑囚の身である実父を、自らの手で人生を終わらせる------------…アートロの狙いは、それだった。
雪見:「アートロから言伝てを頼まれています。……『どうしてくれるか、決まった?』って。」
水嶋:「…………………。」
雪見から伝えられた言葉に、水嶋は一瞬だけ困惑したが、すぐに返事をした。
水嶋:「アートロの気持ちは、分からなくない……。俺も、同じようなことを考えたことがある…」
水嶋の脳裏に、"あの日の笑顔"が咲いた。
水嶋:「…だが、俺の立場ではそうさせてあげることは出来ないし、死刑執行というのは実際、誰がやるかって分からない。
きっと、執行員に選ばれた警察官の全員が……人を殺してしまったかもしれないという恐怖を抱え続けている。」
水嶋の話を聞きながら、雪見は仮面の裏で強張る表情になる。
水嶋:「薫くんが言ってただろう。……"復讐なんて、つまらない"。いや、虚しいだけだ。もう二度と大切な人は還って来ないのに、どうして憎い奴を殺す気になる?
そいつは何も誰も、還してくれないんだぞ。
だったら俺は、苦しくてもそいつには生きて償ってもらう。
"あいつ"の命の分、何が何でも生きてもらって……」
脳裏に、血だらけになったあの日の笑顔が浮かんでくる。
水嶋:「もう二度と、戻れないようになってもらうために!」
泣きそうな表情になる水嶋を、雪見はじっと見つめてから、小さく息を付いた。
雪見:「……それが、あなたの答えですね。アートロには今、言ったことを一文も濁すことなく、伝えます。」
雪見が背を向けた、その時。
水嶋:「待て!まだある!」
雪見:「…?」
水嶋が近付いて来ながら、こう言ってきた。
水嶋:「アートロ……いや、伊藤財務官。アンタは臆病になっているだけだ……"彼"は、本当のことを知ったからってお前を軽蔑するような人間だとは、俺にはどうしても思えないっ!」
雪見:「っ…それ以上、近付かないで!」
雪見はそう言って、すぐさまアパートの屋根に飛び乗った。
すると、水嶋は雪見を見上げながら言った。
水嶋:「それ以上は逃げられないぞ!今、石塚さんたちが君のお母さんを保護してるはずだ!
このままあっちへ戻ったら、絶対に捕まる!」
水嶋の話を聞いた雪見が困惑する------------だが。
雪見:「………母は、関係ありません。どうか……よろしくお願い致します」
雪見は深く頭を下げてから、その場から去って行った。
すると、一緒にいた警察官が水嶋に声を掛ける。
警察官:「捕まえなくて良かったんですか、警視!」
水嶋:「んー?…うーん、あの子には容疑がないからなぁ。
今、捕まえたら訴えられても、どのみち釈放することになる。」
水嶋はそう言ってから、すぐに歩き出した。
水嶋:「それより、今は大夢くんだ。あの身体能力は、槐で間違いない……。すぐに応援も呼んで、俺たちも駆け付けよう!」
警察官:「はっ、はい!」
水嶋の話を聞いて、警察官たちはすぐさま大夢が向かったとされる実母・夏実の勤め先のスナックへ急行したのだった。
------------To be Continued...