A.D.20XX年秋
とある山中の施設にて一機のメカが掘り出された…。

機体は、ボロボロであちこちが激しく損傷し、8割りも原型を留めていないため…【ソレ】がなんだったのかがかろうじてわかるものだった…。

怪しげなガスマスクをつけた軍服達は、【ソレ】をAG搬送車に載せるとどこかへ走り去っていった…。

それから…数ヵ月…。
雪が珍しく降るニュートーキョーシティ…上空…。

キラリと反射で光る機体が高い空から、街を見下ろしており、その機体を見張るように周辺を警戒に当たった国防軍の戦闘機がぐるぐると回っていた…。

国防軍や空軍に情報が無い未知のメカが、目的も不明のまま上空に留まっていて次に何をするのかも分からない状況に不安になる。


しばらくしてだった…。
二機のRA、巴と烈月が近づくとソレは、クスクスと笑い出した。
?『やっぱり、武闘派の13と智才派の04が来ましたか…予想通り…。』

ふぅとソレは、静かに振り向いて腕を組みジッと二人を見据えて笑うと烈月が猛烈な殺気を放ちだした、それに気が付いた巴は、制止するように前に立つとやや威圧的な口振りで口を開いた…。

巴・『所属部隊と国籍…日本領空に留まっている目的、全て答えて。』

はっきりとした質問にソレは淡々と答えて笑う。

?『家族なんて居ない、帰る家なんて無い…目的なんて…そんなものも無い…。』

その答えに二人は唖然とする、理由すらなく、そこにいる、敵意すらなくただ、そこに居て地上を見ていただけ…しかも、一塊のメカが上空に居てである。
不自然過ぎるその答えに我慢がならず烈月が怒り混じりにソレを問い詰める。

烈・『テメェ、理由が無いってだけでそこに居るのはおかしいだろ!目的はなんだ、さっさと答えろ!』

威圧感と迫力を詰めた質問にも、ソレは淡々と答えて笑うと豹変したように鋭い一言を烈月に刺す…。

?『さっきも言ったじゃ無いですか…あなた、馬鹿ですか?馬鹿ですよね?』

烈月は、ピリピリしていたところその言葉を真に受けて頭に血が登ると腰に付けていた斬馬刀を分割したマチェット(鉈)で斬りつける。
烈月の、鋭い剣撃はしっかりとソレを捉えて、一筋一筋が破壊的であったが、ソレはまるで水のようにひらりひらりとよけて行く。
そして、烈月の放った一撃が、確実にソレの体を捉えて次の斬撃が入ろ
うとした瞬間…ソレは、左腕をかざした…。

腕一本、とった!烈月は、確信し力いっぱいにマチェットを握り威力を増すためにスラスターをふかしてソレの腕が切り落ちる様な手応えを感じた…。

バキィッンッッ!!

金属が砕けてへし折れ断ち切れるけたたましい轟音が空に響いた…。
すると…巴の横を、黒い何かが高速で飛んで行き…烈月は、驚いた…そして、ソレは不気味に勝利したかのように笑う。
重装AGですら難なく断ち切る、烈月の硬く鋭い斬馬刀の片割れがあっさりと砕け折れ、吹き飛んで行ったのだ。

烈月は、折れたマチェットを捨て後ろに下がると今度は、リニアライフルを取り出してソレへ向かって撃ち込んでいく。

低い発射音に合わせ弾丸がソレに当たって居る音がし爆煙が立ち込む、烈月がライフルの全弾を打ち切って鼻で笑うと立ち込む煙が流れ、その中に、ソレは平然と立っていた。

烈・『刃も、弾も通らねー…新型の装甲かよ…。』

烈月は、自分の怒りも冷めるほどに、今の女神隊の技術を凌駕する圧倒的なソレの存在に…烈月は、戸惑うと構えた銃をゆっくり下ろした…。
烈月の機体の兵器とは世代が違うようで彼女の装甲を撃ち貫く事ができなかった…のもある。

?『13…それで良いです…何もしなくて…わたしは、ただここに、居るだけなのですから。』

落ち着いたようにソレは、また静かに烈月に言うと振り向いて背中で話をする…。

?『攻撃される理由はない…だから攻撃する理由はない…わたしは、ちんけなあの街を火の海にするつもりは無い…おとなしく、周りの飛行機とおバカさんを連れて04も帰ってください…。』

静かに話すソレは、何事もなかったように落ち着いていた…。
巴は、周辺に飛ぶ戦闘機に帰還の指示を出すとうなだれる烈月の肩をひっぱりソレのもとを後にした…。

また、静かな空が訪れると、周りは、ゴーッと風の流れる音が通り、ソレは静かにその音に聞き入るとふぅと髪型スタビライザーがなびく、ソレは少し満悦そうだった。
だが…しばらくして風の音が変わった…何かが飛んでくる…。
位置が分からないが確実にこちらに飛来する物が有るソレは、わずかな風の音で感じ取った…。

?『飛行物…大きくない…レーダー展開…周囲をモニター…。』
レーダー網を広く張りソレは、詳しくの方向、速度を見る。

レーダー網から返る小さな反応から飛来する物体の姿を経験則で捉える…。ミサイルだ…それも単なるミサイルでは無いかなり高速で飛ぶ巡航型のミサイルである。
ソレは、更にミサイルの位置を把握すると自機より上空15000mの位置にミサイルがあり、まっ直ぐに首都圏に落下、着弾するコースをたどっているのも分かった…。

位置も高さもわかった所でソレは、ミサイルの元へ飛んでいく…。
ミサイルの姿が見えてくるとソレは、絶句した…。

?『核弾頭…!!』

核ミサイルが真っ直ぐ飛んでいる…ここで落とさなければトーキョーの街が消えて無くなる…そう思ったソレは、ミサイルの羽に二、三、弾をあて軌道を変えその上空でライフルの斉射をかけて撃墜する…。

爆発は、小型ながらに凄まじく首都機能ならば一瞬で焼くことができる破壊力であった…。
しかし、安堵もつかの間…次々にミサイルの反応が現れる…。
ソレが一つのミサイルを撃墜する直前だった。

ミサイルは分散し子機を射出、目標を増やすことになった、ソレは次第に焦り始める…街を守るためにこうして居る時間がもう少し早く欲しいとしかし、うまくは行かない…次々に飛んでいきソレを抜き越すミサイルは多数…街に当たる事は有ってはならない!

とある一本が抜き越して行った瞬間だった…。

突然、ミサイルは、爆発大破した…。

更に、抜き越して行ったミサイル群も下の方で次々と撃墜されて行くではないか…。

巴『どうにか間に合ったわね…レイス!迎撃での時間稼ぎありがとう!助かったわ!』
ソレに向かって巴がレイスと呼ぶとソレの肩を軽く叩く。

?『04?今なんて…何故わたしの名前を…?』
レイスと呼ばれてすこし戸惑うが巴はまた、軽く肩を叩いてミサイルの撃墜に向かった。

ソレも巴を追いかけるように撃墜に向かうとまだミサイルの群が多く飛来して来る。

巴『そんな事はどうでもいい、それより数が多い、出来るだけここで墜として少なくする…抜け出したヤツは足の速い烈月に任せる…レイス、分かった?』
巴の問いにソレは、二つ返事で返すと巴から離れて行った。

レイス…自分の名前…数ヶ月前に山中から運ばれて今の身体になって以来一度も呼ばれていなかったその名前を呼んで任せてくれるヒトがいて少し嬉しかった…。

ミサイル群は、順調に迎撃され落として行くと次第に、心にも余裕が生まれてくる…。
それに漬け込んだようにそれは突然、襲いかかってきた…。

とある一本の破壊をレイスは、確認し次のミサイルに当たろうとした瞬間…撃墜したミサイルから小型のミサイルが分離、その子機は、真っ直ぐとレイスへ襲いかかってくる。

レイス『しまった!マイクロミサイルか!?』

無数のミサイルがまるでスズメバチのように波を打ち、レイスの姿を捉えて離さない、レイスは上に下にきりもみをうちながら着実に襲ってくるミサイルを迎撃する…。

小型ミサイルの迎撃を終えて一息をつき巴の方に目を向けると先ほど、自らが破壊しマイクロミサイルを射出したミサイルを撃墜しようとしているではないか、レイスはフルスロットルで巴の元へ飛んだが間に合わず巴は、親機を破壊、マイクロミサイルを射出させた。

巴の機体は、自分の速度より低くミサイルを振り切るのは無理と判断したレイスは、巴に追い付くとそのまま後ろに立ち迎撃しようとした瞬間だった…。

一発が脚部に被弾するとそのまま、なだれ込むように次々とレイスに被弾していく…。

もうもうと立ち上る煙にズタズタになって落下していくレイスの姿があった。

巴『レイス!!レイスッ!!答えなさい!』

巴が叫ぶようにレイスの名前を言うが動きは無くそのまま、湾上のゴミの島に墜ち爆発をおこした…。

巴の、モニターには今まであった[RA-10c]の信号は途絶え勝手にリンクしていたレイスの機体状態表示には[destroed]の文字が浮かんでいた。

巴『身を挺してまで…あたしを守る必要が…あったのかい…レイス…あんたってヤツは。』

巴は、言葉をつまらせて墜落の痕を眺めると振り向いて、烈月に指示をしミサイルの撃墜の迅速化をはかると共に事態を収束させて行った…。

それから…数ヶ月が過ぎ…新聞には、あのミサイル事件以降、夜な夜なゴミの島には、白い服を着た白髪の若い女性が現れるようになったと書かれおり…それを読んだ巴は、いつものブラックのコーヒーをグッと飲んで、一息つくと烈月を連れて、何でも屋sencoを出て行った…。

END