第零中隊女神隊として部隊が結成されてすぐの事である。

皆、自社の最新鋭そして、自社の威信をかけて造られた存在と言う壁が大きくなかなか打ち解ける事ができなかった時期がある…。

隊長としてそのガチガチとした緊張感のあるピリピリした空気が我慢ならない巴は何か打開策は無いかと日々ブリッジであれこれ調べながらの当直に就く。

巴(問題は…第五兵器開発研究工舎の白騎士…表情や感情を伺え無いから少し難しい所ね…。)
奈都が気難しい人格であるのを看破すると打ち解ける方法はより慎重になる。

ふうと息を吐いて、ブリッジの外に目を向けると横には、ルーンナイツが立っていた…。
もちろん、気配がなかったので巴は、一瞬ビクッとするとルーンナイツは微笑んだ。

ルーンナイツ『隊長さん…報告書ですか…精が出ますわね…。』

ルーンナイツは、巴を観察しながら合間を伺っていたようで空いたカップを交換し、暖かいコーヒーを差し出すと巴は軽く礼を言って受け取りとそのままコーヒーを口にした。

巴『報告書と言った気難しいのも上げないと部隊を造った意味が無いからね…。』

軽く一息ついてコーヒーを置いた所で巴は、ルーンナイツに質問した…それも妹ホワイトナイツについて単刀直入に話す。

巴『妹さんについて…詳しく教えて欲しい…あたしは正直、苦手なタイプなんだ…。』
その問いにルーンナイツはキョトンとした、巴はてっきり他人に分け隔ての無い人柄だと思ったのだ…あまりの直球な言葉にルーンナイツは一息吐いて空いたカップを置くと口を開く。

ルーンナイツ『意外ですわ…人の好き嫌いがあなたにも有るようで…。』

少し嘲笑気味に笑い思っていたイメージとの違いを口にすると巴は、ブスッとした顔を見せたところでルーンナイツ、言葉を続けた。
ルーンナイツ『ホワイトナイツは、自分を上手く表現する事が苦手なの…言いたくても言えない…内気な子ですから…でも話せる機会があれば隊長ともじっくりお話がしたいとは言っておりましたわ…。』

奈都の事を一通り聞くと巴は軽くなるほどと頷いて少し笑った…結局の所、二人共声をかけたがって居たがどう接して良いかが分からずじまいだった…二人の気持ちが空回りしていたようだ。
その点で言えばこの、ルーンナイツは社交的で打ち解けようとしていたのも納得する。

巴は、報告書の作成を途中で切り上げると早速、行動しようと動く。

巴『ルーンナイツ…交代で哨戒任務をよろしく!』

いきなりのパスに驚きつつも操舵管を握りしめるルーンナイツは手がプルプルと震えていた。

ルーンナイツ『えぇっ!?操艦方法は、私…分かりませんよ!!』

暴露した所で巴は笑いながら『大丈夫、簡単だから』と言って艦の奥へ姿を消して行ったのである…。

巴の笑い声が聞こえなくなったのを見計らってルーンナイツは、操舵管をガチガチに握っていた手を離して椅子に腰を掛けると深いため息をついてうまく行きますように願いながらブリッジの外を眺め始めた…。

巴は、スタスタ歩いてホワイトナイツを探す…食堂、武器庫、自室、書庫、浴室…くまなく探し回ったが結局、奈都はいなかった…最後に通りかかったトレーニングルームを覗くとそこにホワイトナイツの姿があった…。

ホワイトナイツは、見たことの無い武器を一人黙々と振るい、あたかもそこに敵兵が居るように戦うシャドウに集中していてトレーニングルームに入ってきた巴には気づいていなかった。

巴は、しばらくホワイトナイツのシャドウを黙って見ていると汗で武器が奈都の手から滑り、足先数センチに深く突き刺さりそれと同時に巴の存在に気が付いた。

ホワイトナイツ『わざとじゃありません…失礼しました。』

慌ててその武器を取ろうと走り寄るが変わりに巴が突き刺さった武器を引き抜いた。

巴『変わった…武器ね〜銃と剣が一体化して…すごく不思議…。』

引き抜いた武器をペタペタと触ったり逆さにして片目を瞑って刃を見ると巴は驚いた。
巴『鋭い…こんなに鋭い刃物を見たのは初めてだわ…それに軽くて…見たことは無い武器だけどかなり高いレベルの完成度でまとまった武器ね…。』

巴は手に持った武器を返すと同時にホワイトナイツの顔に、タオルを投げてやると自身もパリッとした制服を脱ぎ捨てて壁から自身の得物である長槍を取り出すと切っ先は、ホワイトナイツの胸元に向け、キッとした鋭い眼光を彼女の目へと合わせると分かったのかその銃剣を独特の構えを取り身構える…。

互いの間合いには冷たい空気が流れ出しじりじりとした緊張感が漂う。

巴(白騎士のお手並み拝見かな…。)

ホワイトナイツ(隊長との初手合わせ…手は抜けない!!)

互いの思いが言葉を介さずにフッと伝わった瞬間…先手を打ったのは、巴だった。
そして、ホワイトナイツが予想する槍使いとは全く異なる攻め方をする…。

槍を横に薙払うと床に突き立ててそれを支点に蹴り込んで来た。
槍としての使い方より支柱のような使い方をされた物だからホワイトナイツは一瞬、出遅れ慌てながら防御の体勢を取ると一旦は、凌いだがこれは巴にとっての布石であった…。

槍を縦横にさばいてホワイトナイツに一撃たりとも手を出させないように絶え間なく流れるように線を描くとホワイトナイツが大きくバックステップをしたかと思うと激しい銃声が巴を襲った…。
ホワイトナイツの切っ先と目線は確実に巴の眉間を捉えていたし巴は前進しての苛烈な攻撃をしていはずだがこの銃声で巴は一瞬にして顔色を変えた…。
首を傾げ獣のように息を荒らげて銃声の放たれた先を避けると、鋭い眼光をホワイトナイツに浴びせると頬からピリッとした痛みと一緒に赤くぬるっとした液体が伝う…飛んできたのは実弾だ…。
鋭い眼光を押し返すホワイトナイツは、鋭い目つきをする巴を見ながら余裕をしだいに取り戻し呼吸を整える。

巴は、ホワイトナイツの余裕の現れ出した表情?を伺うとにっと笑った…。
巴『そんな隠し弾があるのは…キ・ミ・だけじゃないんだよぉっ!』気合いを入れたかのように大きな声を張り上げるとホワイトナイツに火線を定められない用に左右に細かく飛んで近づくと下からガンブレードを小突いてやる、どうやら、そこに火線を定めていたようで跳ね上げた拍子に銃声が巴の耳をつんざいた!
間一髪で火線をずらしたが一歩遅ければ、眉間に弾が当たっている事になっていたとは容易に想像がつくと自分の想像力の豊かさに笑いがこみ上げてきた。
巴『ホワイトナイツ!なかなか楽しいことをしてくれるね…まぁ、やるんなら本気でやろうか、その方が楽しいでしょう!』

笑いながら…【殺し合い】を楽しむ巴はどうやら、堅物の気を大幅に緩めて笑い出すと無口で薄い表情のホワイトナイツもつられて笑い出した。

大分二人は、打ち解け始めたようだ。

巴は、それでも容赦なく攻め立てるとはホワイトナイツのガンブレードを右に左にと弾きそれに合わせてホワイトナイツは、弾かれたガンブレードの衝撃を利用し体ごと回転し切りかかる…。
タイミングが悪い場合には、足で穂先をずらし体ごと穂先をかわして巴の目先にスピードの乗った状態で切りかかる…。
無論、巴ですらバカではないのだ切りかかるホワイトナイツの切っ先を予測して後ろに後退すると横に薙る、ホワイトナイツは素早く反応して槍より飛ぶと着地を狙って足元を払うと華麗にステップを踏んで左右に飛ぶ姿は巴の視界を惑わせるほど早かった…。
巴が反射的に突いたホワイトナイツは残像でハッと気が付くとホワイトナイツはすでに背後を取り、切りかかりにくる体勢をとっていた。

巴『甘いっ!舐めるなっ!』
巴は、ホワイトナイツが後ろを取る事を予測していたようでそのままの体勢から…足刀を蹴りだして飛び込んできたホワイトナイツは吹き飛ばされ離れたところから…再び間合いを蛇のように静かにかつ素早く詰め出す。
そこからは、ホワイトナイツの素早いスピードに巴は、圧倒される…。
右から飛び込んで切りかかると防御するがホワイトナイツはガンブレードを爆振させて切り込む…その衝撃に槍ごと体が弾かれる、一発、一発のインパクトが凄まじく一撃、一撃に体が衝撃に持って行かれる、体勢を立て直そうとしたが左から再び、切り込むホワイトナイツを見て賭けに出た…。
体勢の整ってないまま、後ろに飛び退くと、切るタイミングを失い空振ったホワイトナイツに向かって体勢を立て直した巴は、思いっきり槍を切り上げると、それに出遅れて回避は間に合わないとホワイトナイツは、ガンブレードを盾にした瞬間だ…爆発と共にガンブレードが弾け飛んだ!

手には爆振の振動から痺れが走り天井にガンブレードが突き刺さった…。

暴発したのかと…思っていたが立ち込める匂いは嗅いだことのある硝煙の匂い…しかしながら…その匂いは、自分からではなく巴から漂ってきた…。
ハッとして巴の槍を見る…煙が…ゆっくりあがっていた…。
間違いない、巴の槍から発せらていた、まさかとは思いもよら無かった…。
巴『隠し弾は…ホワイトナイツあなただけのものじゃないって言ったでしょ…。』
ガンブレーダーはもう一人いた世界は広い事をホワイトナイツは思い知らされた、巴は形は違えど、使う武器が異なるが似ていた…。
面白い世界を見えた事に嬉しさを覚え凛とたたずむ巴の清々しい笑みにホワイトナイツは惹かれ一人じゃない事をホワイトナイツ改めて実感するのだった。

巴『さぁホワイトナイツ…これでトレーニングはおしまい、シャワーを浴びて何か飲もうか喉が渇いたでしょ、あたしゃもうカラカラでね!』
ホワイトナイツは、巴二式の笑みを見て自然と心が躍っていた、ルーンナイツ以外にも家族を得たような幸せな気持ちに…なっていた…。
ホワイトナイツ『了解…巴二式…ゆっくり話したい事…沢山ある…早くシャワーを浴びよう。』
巴『…巴二式なんて長い…奈都!あたしは、巴で良いよ…そっちの方がしっくりくるし…。』

巴と略して呼んで欲しいと言われまたホワイトナイツと呼ばれるよりなぜか自分に新しく付けられた【奈都】と呼ばれる事にもまた嬉しさを感じた
何故だか心の距離が縮まったような気持ちの良い感覚だった…。

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