第零中隊女神隊が部隊として創設されてすぐの事である。

隊長として部隊運営をざっくりと指名された八菱重工の巴弐式は、非常に頭を抱え込んでいた…。

出会った当初から、非常に個性的なRAが出揃ったところから自分がまさか全員をまとめる長になるとは思っていなかった訳だから、人心の掌握など考えていなかった…。

自室のベッドに座り込んで眉間にシワを寄せてブスッとした(-"-;)こんな表情を顔に現すとあれこれ考える…。

掴みにくそうな存在が二人…。

会室で冷たく冷めた眼差しを痛いほどに投げつけていた…ブサイk…もとい金髪姉妹…。

記憶の片隅では内藤姉妹だったか…と巴は記憶を振り返るとあれこれ考えたが遂には頭の中が煮えきり、ブシュ〜と頭頂部からもうもうと湯気が立ち上る勢いで頭の中から何かが煮えたような音が聞こえ始めたため、作業(考え事)を止めた…。

巴『あぁああっ!もう分からん!』

意を決して部屋を飛び出してみるが結局の所、考えは固まらずの状態である、ルーンナイツの考えは良く分からないし掴みにくそうな存在だ…。
あれこれ考えつつ艦内を歩いてぶらりとしてみる、ほどなくしてランが元気よく艦内をジョギングしている…息も乱れないきれいなフォームを崩すことなく向こうから走ってきた…。

ラン『ヤッホー!タイチョー!』
軽い挨拶が先にランから飛び出ると巴はすぐに眉間のシワを緩めて軽く挨拶を返す。

巴『ラン!お疲れ!』

すぐに彼女ともすれ違う…ランは人当たりがよく…堅物と化した巴はなんとなくわかりやすい返事を返すと意外に受けが良かったのかなんなのか…結構気に入られているのが会話からわかる…。

ランが去った後ですぐに眉間のシワが寄る……。

(-"- )のような表情を繰り返していると次第にそのシワが深くなるのがなんとなくわかる…。
ウダウダと考えても仕方ないが部屋に戻ったところで考えがまとまるわけでも無いとふらふらと食堂に足を向けた…。

食堂に入ると割と広々とした食堂で右隅にドリンクと食品の自販機がおいてありその反対側の左隅は厨房の見えるカウンターがありその奥に人影がもぞもぞと動いていた…。

巴は、腰に下げた銃に右手を添え忍び足で近づいて恐る恐るカウンター越しにその人影の様子をうかがうと腰辺りまで伸びた金髪、ロングストレートの後ろ姿が見えた。
巴(金髪…何をやっているのかしら…。)

巴が金髪の姿を伺うと戸棚の中に何やら箱を入れているのをみると…巴はすぐに察した…。

巴(箱…まさかっ!?)

とっさに腰に挿した拳銃を抜き出して金髪の後ろ姿に銃口を向け声を大きく張り上げて威嚇をする。

巴『両手を挙げて、そこを動くな!』

大きな声で威嚇をした後カウンター越しだが摺り足で一歩近づいて再び声を張り上げる。

巴『ゆっくりこちらに体を向けろ!』

すると、金髪は一瞬、巴の声でビクッとすると右手に箱缶を持ったままゆっくりと回れ右をし巴をじっと見つめた…。
巴は記憶の片隅を呼び起こしたところ彼女は確か…第五兵器開発工廠の冷たい眼差しをした姉ルーンナイツと言ったところまでは覚えていた…。

ルーンナイツは、巴の表情をみて微笑むとイラッときたのか巴は、眉間のシワをよせて銃口をルーンナイツの眉間に向け突きつけて威嚇するように声を出した!

巴『ルーンナイツ!貴様っ!何をやっている!爆破工作かっ!』

するとその言葉にルーンナイツは反応したのか右手に持っていた箱缶をおもむろに差し出すとその缶には銘柄が入っていた…。

ルーンナイツ『フォートナムマイソン…シッキム…。』

巴『は…はぁ…。』

ルーンナイツ『ご…ご一緒にシッキムティーで…ティータイムはいかが?』

巴『い…いや…こっちが聞きたいのは何をしていたかであって…。』

ルーンナイツ『ただ、私は…日課であるティータイム用の紅茶の箱を戸棚にしまっていただけ…ですわ…。』

ルーンナイツは先ほど入れたばかりの紅茶の缶を取り出してカウンターに置くと封を切ってない事も見せ更には固形物が入っていない事もわかりやすく振る…。
今までの緊張が一気に冷めると巴は、構えていた銃を腰に収めると誤解も解ける…。

巴『あー…要するに趣味の紅茶の缶をそこに入れていたってだけでスパイでもなんでも無いって話しなのね…。』

ルーンナイツ『ええ…部屋の棚に入りきらない缶をただ、こちらに入れに来ただけですわ…。』

注釈をいれるように答えを言うとポットに湯をいれて温め始めると先ほど差し出したシッキムの箱のシールをはがし開ける準備をし温まったポットの湯を今度はカップに注いでしばらく待つ…加えて温まったティーポットの蓋を外して細かい網目の金網を差し込んで込んでシッキムの茶葉を匙で一杯入れる…この動作はさすがに手慣れているようで流れるように洗練されている…。
ルーンナイツは、カップに手を当てて温まったのを確認したあとドリップポットについだお湯をティーポットにゆっくりと注ぎだしティーポットの蓋を閉め砂時計を返し時間を図る…。

巴はルーンナイツが楽しそうに笑っている顔をみてつい、ぷふっと吹いてしまった…。

ルーンナイツ『何ですの?私の顔に何かついているのですか?』

巴『あいや…悪気はないわよ…ただ楽しそうにしているから…こっちまで面白い気持ちになってねぇ…。』

不思議と巴の堅苦しい表情がほころんだところにルーンナイツは振り向くとその柔和な表情が目に入りルーンナイツもぷふっと笑みがこぼれた。

巴『えっ…あたしなんか言った?』

ルーンナイツ『いえいえ…なんでもありませんわ…ぷふっ…ただ堅苦しいお顔の隊長がそんな優しいお顔をなされるなんて意外でしたから…ぷふっ…。』

巴『ルーンナイツ…悪気があってじゃなぁいのはわかったけど…堅苦しいってゆうのは間違いよっ!』
二人は大分砕けた感じで笑い合うと巴が先に口を開けたところでルーンナイツは、一旦待てのハンドサインをするとどうやら砂時計の砂が落ちきったようだ…。
ルーンナイツは、カップの湯を流しに捨てティーポットの蓋をあけ茶葉の開きと紅茶の色を見るとその香りを楽しそうに利いている…。

お嬢様の風合いが似合う…これで戦闘員だと言うと全くその気配はなかった…。

ルーンナイツ『出来ましたわ…続きは席で楽しみましょう…。』

そう言うと盆にポットとカップとカップ受けを用意してカウンターを出ると近場の席にそれを広げた…。
本格的なティータイムで有るのがよくわかる…加えて近くにあった箱を開けると中にはスコーンやマカロンが入っていた…。巴は、それをみて舌鼓を打つとルーンナイツは笑いながらいかがと手で促し巴はそれに答えるよう菓子に手を伸ばした。

ルーンナイツ『家事は苦手でも炊事ができるので…手作りのスコーンとマカロンを作ってみましたわ…。』

巴『どれどれ…このスコーンをいただいて…。』

大きなスコーンを半分に砕いて一端を巴は口にすると、ほんのりとした甘味が口に広がって離さない…そこにシッキムティーを口に流す…。スッと入り込む柔らく強くない渋みが甘味を中和しつつも適宜な甘味に変わり先ほど口にしたスコーンが口から程よくホロホロと溶けていく…。

巴の誤解もスコーンと同じようにホロホロと溶けていった…二人にはなんとも言えない幸福感が包んでいた…。

ルーンナイツ『ところで…隊長さんは、何をされていたのですか?』

ルーンナイツはふとした疑問を投げかけると巴はそうだと言わんばかりに思い出した事を話し出した。
これから長い付き合いになることから互いに良い関係を築くにはといったことルーンナイツから見た今の雰囲気…気になったことは全て口から自然と出た。
巴『最初に会った時から全員が粒ぞろい…もちろんあんただってそうさ…えらく周りと隔絶するような雰囲気を持っていたし…。』

ルーンナイツ『なるほど、隊長さんはそう捉えていらっしゃったのですね…。』

ルーンナイツの口元が緩むと巴は緊張感が拭われる、最初に会った時のことを直ぐに思い出す…。
冷たく冷え切った眼差しに合わせてさりげなく発していた殺意のような敵意。
数日前とは打って変わった雰囲気を受け巴は考えを改めた。

ルーンナイツ『あれは、そう…緊張していただけでして…最も実は、私より妹の方が緊張しておりましたのよ…。』

巴『あぁ…確か05だったけ?』

そう言うとルーンナイツは一呼吸置いてシッキティームを口に流しながら頷く、巴はなるほどと思うと05の顔を思い出す。

巴『戦闘員…いや、あたしと同類のRAとは思えないけど…。』

ルーンナイツ『その通りですわ…彼女は、どちらかと言えば戦闘がメインでは無く情報…えぇと…電子戦がメインになりますの。』

巴は今のルーンナイツの言葉、電子戦と言う概念が今ひとつ理解できないでいたためにその細かなところを聞きただそうと口を開くとルーンナイツはさらりと答える。

ルーンナイツ『単純に言えばハッキング、クラッキング、情報操作、踏み込んで言えばそこから電子機器の遠隔操作と言った具合から友軍のミサイルの命中補正など…ソフトウェア関連の支援と言ったのが電子戦ですわね。』

ルーンナイツの言葉の羅列が頭にすんなり入ってくると巴は、頭の中でまとめる…ルーンナイツの妹05は、どちらかと言えばハイテク分野に長けているとでは逆にこのルーンナイツの存在は何者なのかという疑問が再び湧き出るそちらもせっかくの機会だからと問う。

巴『ハイテク担当が05ならルーンナイツ…あんたは何者なのさ?』

ルーンナイツ『それは、単純に言えば物理担当…踏み込めば、妹を補佐する方ですわ…戦闘能力にウエイトをおいでますので…直衛機のような…。』

巴『なるほど…エスコート役なのね〜。』

これで疑問が晴れる、第五兵器開発工廠の新鋭機は電子戦と一対で成す特殊な機体郡と言う具合だと…気になったことは晴れるがいまだに不思議なのが人当たりの良い月産工業のランだ…。

ここのところを聞くと意外な言葉がでてくる…。

巴『ランについては…どう思う?』

ルーン『ランさん?月産工業のRAですわね…正直言うと最初は、05と同じかと思ってましたが…全くの真逆で苦手なタイプですわね…。』

巴『苦手?苦手って何が?』

ルーンナイツがランのことを苦手なタイプと聞き、意外なことに巴は驚きつつもその理由を問いただす。

ルーン『人当たりと元気が良いのはよろしいのですが…心に土足で踏み込んできそうな感じがして…何か嫌な感じがしましてね…。』
確かに一理は、ある…人当たりが良すぎて心の闇まで覗こうとする…そのくらいの懸念であるそうなればチームとしては瓦解しかねないランには、ある程度線を引いて当たる部分がルーンナイツと05にはあるらしい…分かりたいが今ひとつのようだ…活発で快活な性格が仇になると…巴は留意する…。

それでも…少し…二人の間の距離は縮まったような気がした…。