200X年末日
時折…烈月は血に飢える事があるとユウキに訴えるのだ…。
まるで、狼のように血を体が求めるようにそして、体の奥底から不思議と…そしてじわりと…。
求め始める数ヶ月は耐えられるそうだが長い時間かかると抑制が効かないと付け加えて話す…。
結局、その血に飢える習性【もとより習慣】をまた別の何かに変えようとするも…最終的には破壊衝動へと変換される…。
もとの黙阿弥だ…。
過去にも抑えすぎてユウキ以下巴達にもそれを向けてしまったことがある、それも取り返しのつかない形で結局収集を付けたのは、軍の総出とユウキの必死の説得による物だと理解をしていた。
烈月を悩ました…血を求める習性をなんとかならないかをユウキは思案する。
ユウキ『なんとか…なぁ…ならいか…。』
烈月『なんとかしろよ…飼い主だろう?』
他人力で解決しようとする烈月はニヤニヤしていた…結局、過去の海賊行為でさえ血に飢えた結果で彼女なりの選んだ答えだ…。
ユウキは思案するする事しばらくして…手を打ち有ることを思いつく。
ユウキ『そうだな…お前だから出来る…お前になら出来そうなものだ…やらないか?』
ユウキは、ニヤニヤする烈月の顔を見つめて考えた答え…。
それは、衝動を破壊から創造に変えようとする造る衝動に変換させるものだった…
まず、彼女のおおざっぱな性格をベースに考えると裁縫や編み物は無理…金属をベースに考えるとナイフ造りなら出来そうなものだった。
烈月『刃物…?オレに刃物造りをしろと?』
ユウキ『そうさ…あんたなら一等に良い物が出来そうだ…。』
ユウキは答えに少し考えて膝を叩き話に乗ると早速動き出した。
蘭のバイト先の親父っさんからある程度の厚みのある金属の板切れとドラム缶からの手製バーベキューコンロをもらうとSENCOの事務所三階のコンクリート床の空き部屋に広げた…。
窓を開け…流奈から使わなくなった扇風機をもらいホームセンターで手軽な撒きとサラダ油を何本かを買い集め…
事務所内にある工具を用意すると…即席ながらナイフ造りには丁度良い感じに工房が出来上がった。
烈月『で…ファーストステップは何をすりゃあ良いんだ?』
ユウキ『まずは…鉄を焼いて焼いて焼きまくって真っ赤にしてだな…。』
ユウキは、どこから仕入れたかわからない情報を元にコンロに火を入れて板切れを焼き始めた…。
ガンガンと火を焚き…目一杯の火力をだすこと数分…数十分…頃合いとばかりにユウキは板切れを取り出すと…真っ赤になっておりそれをサラダ油の入った金バケツに浸してゆっくりとかき混ぜる…。
烈月『オイ…油だろ!?燃えるんじゃ…。』
ユウキ『こうした油は、燃えないのさ!と言うか燃える物が消えてるからな!』
ユウキは額に汗粒を流しながら答えるとこの技法を焼きナラシであると言う烈月は、頷いてふーんと答える…
どれくらいかき混ぜているのかをユウキは目計りで感じ取り出すと…ほんのり暖かくなっている状態でユウキは頷くと板切れを拭き…烈月に紙と鉛筆を渡した…。
ユウキ『それで好きなデザインのナイフを描いて欲しい…あぁ複雑なのは無しだぞ。』
烈月『あぁん?んな事言ってもよ…シンプルで良いのか…?』
そう聞き返して来た烈月にユウキはあっさり勿論と答えると烈月は適当に自分の手に合わせたデザインを描くとその紙を渡した…。
ユウキ『ふーん…ブラッドグルーヴに…タントーフォルム…グリップはチャネル…なるほど…。』
ユウキは、笑うと烈月にもう一枚をコピーしてくれと頼んだ…。
烈月がコピーを持ってくるとユウキはその紙をハサミで切りナイフの形に切り取って板切れに貼り付けると最初は大まかなナイフの形へ切り出す…。
切り出すとそれは大まかなナイフの形を表したがまだ削り取る部分を大分残していた…。
ユウキ『おっし…ステップ1は出来た…。』
一通りの作業を止めて腹ごしらえをすると再び作業を再開しだす…。
残った部分をグラインダーで削っていきほんの数ミリ残す…と烈月は目を丸くする…。
烈月『おい…なんでこれっぽっちを残すんだよ?』
ユウキ『残った部分がエッジになる…いわゆる刃だな…。』
ユウキは淡々と答えると…その部分に若干の角度を付け微調整を加えて…広く出来上がった刃らしき部分を見つめて…納得すると…。
今度は、巴から、借り受けた刃物用砥石を使って研ぎ出した…。
二人の間に沈黙がよぎる…。
水をかけては研ぎ、かけては研ぎを繰り返す事…十分以上…が経ち…しばらくして再びユウキが見つめると烈月にナイフらしい板切れを見せる。
ユウキ『とりあえず出来た…が…。』
烈月『が…何だよ…完成じゃねぇのか?』
ユウキ『完成じゃ無いさ…最後の仕上げだ…薪をくべてまた火をガンガン焚いてくれ…。』
ユウキは再び火を焚くように促し烈月は、言われるままに焚いて…再び高温の釜を作るとユウキが火の中にナイフを入れた…。
烈月『なんでまた火の中なんだ?仕上げに必要なのかよ?』
ユウキ『そりゃ必要…というか絶対だ…しないと耐久力にだが…。』
と言いかけて烈月はふーんと答えて火をジッと見つめた…。
ユウキ『しかし、烈月…あんただけのオリジナルがもうすぐ出来るぞ…。』
烈月『そうか…そいつぁ嬉しいぜ…なんせオレのオリジナルナイフだ…。』
烈月は楽しみに結果を待つとユウキは頃合いとばかりに真っ赤なナイフを取り出すと今度は、水を張ったバケツにナイフを浸す…。
激しく水が恐ろしい音を立てて蒸発を繰り返す…。
ユウキはそれに怯えずにナイフをかき混ぜて熱々のナイフを冷ます…。
ユウキ『耐久力向上の仕上げだが焼き入れって言うんだ…これで固くなる…つまり折れにくい…。』
烈月『あぁ、丈夫なナイフになったって訳だな…ナラシて柔く…シメで焼きを入れて頑丈に…工程は理解した…なんてコタァねぇ…。』
烈月は、冷えたナイフを見て握るとユウキがナイフをひょいっと取り上げて刃物に真っ黒な液体を筆使い塗っていく…その液体にまた烈月は疑問を感じた…。
烈月『オイ、ユウキ…なんだその真っ黒な液体は…?』
ユウキ『コイツは、酸化剤なんだ…ナイフが錆びないようにする特殊な液だな…強烈に表面が酸化するから錆びないわけだ…。』
ユウキは、酸化剤をナイフに塗布し、固まったのを見て笑い…そのナイフを烈月の手に握らせた。
ユウキ『おっしゃ…完成だ…烈月…あんたのデザインしたオリジナルナイフだ…大事にしろよ…。』
烈月『オリジナル…この世にコイツは、コイツしかねぇんだな…。』
烈月は、目を光らせてユウキに聞き返すとユウキは…笑った…。
ユウキ『まあ似たようなデザインのナイフが有るかもしれないが…そのナイフは紛れもない…あんただけのナイフだ。』
ニコニコ笑ってユウキが作ったナイフは烈月がデザインした刃渡り14センチほどの至ってシンプルなデザインのナイフは…この後、烈月の大事なナイフになったのは言うまでもなく片時も…手放す事無くエマージェンシーナイフとしてもサバイバルナイフとしても彼女は愛用するのであった…。
殺戮衝動や破壊衝動は、しっかりと烈月は創作衝動へ変換され、衝動が起こると共に、烈月らしい斬新なデザインのナイフを作り出すとそれが世に出回る…。
しかしながら、日本軍に納入される大手ナイフメーカーの造るマスプロ品とは違い不定期…そしてワンシーズン…ワンオーダーのナイフとして、出どころがわからないため、後の人気ナイフメーカー【ファントムフォックス】として世に名を馳せる事になる…。
まさか、製造工場がトーキョーシティの警視庁の尖った先、小さな何でも屋SENCOの一室である事は、都民は愚か、ナイフマニアは到底、知り得ないだろう…。
Phantom Fox END