俺はこんな影山が見たかったんじゃない。ただひたすらに、夢に向かってがむしゃらに走る姿が好きだったんだ。こんなところで立ち止まってはいけない。俺のことで悩む、あいつなんて見たくない。
「……どうすれば、今のあいつを救える?」
「ボクたち天使には現世に生きる人間を救えはしないよ」
「あいつはこんなことで腐っちゃいけないんだ。俺はただ腐っていくアイツを見てるしか出来ないのか?何も出来ないのか?」
「菅原くん……」
「俺は最期まで何もしてやれないままなのか……」
「……何にも手段がないって訳じゃないよ。でも、それにはそれ相応の罰を受けなくちゃならない」
「それでもキミは、彼を救いたいの?」
「……あぁ」
「たとえキミが消えてしまうとしても?」
「……」
「消えてしまったら、きっと転生も叶わなくなる。それでもキミは彼を救いたいの?」
 天使の問い掛けに、一瞬言葉を無くす。消える。消滅。叶えられなかった夢を、改めてやり直すことが出来なくなる。重い選択を迫られていることを理解した。
 だが、俺の中の答えは既に決まっていた。それでも俺は、影山を──。
「俺はあいつを救いたい」
「それが菅原くんの答え?」
「ああ、俺の答えだよ」
 俺の人生がここで終わるというのなら、俺の生きた意味は、きっと影山と共に過ごした日々と、あいつに恋をしたことだから。
「分かった。意外とキミは頑固者だからね。ボクはもう何も言わない」
「ありがとう」
「お礼を言われることなんてしてないよ」