人間を植物に生まれ変わらせよう。

そう誰かが云った。


縄で厳重に縛られた毛布が転がっている。
中に人間が入っているらしく、時折くぐもった呻き声と共にもぞもぞと動いていた。

身体のどこなのか分からないが、刃物で良さそうな位置に適当な数の切り込みを入れていく。
切り込みを入れる度に紫色の毛布に赤黒い染みが広がり、呻き声が一段大きくなるも動きは鈍い。
複数入れた切り込みに、硬い殻に覆われた何かの植物の種を植えた。
呻き声は相変わらず垂れ流し状態で、痙攣したようにヒクヒクと小さく蠢いている。

それからすぐに種は肉に根を這わせると青々とした芽を伸ばし、土壌の血を啜りながらどんどん成長していった。
土壌になっている人間は、植物の根が肉を侵食していく痛みに耐えられないのか、ずっと呻いているか啜り泣いていた。
身体も動かせないらしく、痙攣のような動き以外の動作は無い。

やがて植物は蔓を伸ばし、手当たり次第に巻き付けて葉を繁らせていった。
紫色の毛布は完全に見えない。
そして植物は蕾を付けると、あっという間に幾つも花を咲かす。
その白く可憐な花を少しだけ摘むと、『花が咲いた』と伝えて土壌の目の前に置いた。
もっとも最初から何処が顔なのかも分からないし、本人には見えないので意味が無いのだが、こちらの言葉に反応するように小さく呻き声を上げていた。

花はすぐに散ると果実をつけた。
初めは小さな珠のようだったそれは、徐々に膨らんで大きくなり茜色に色付いていった。
拳程の大きさから人の頭程の大きさまで、様々な大きさの果実が同じ色に色付いた葉の中に埋まっている。
それを丁寧に摘んでいくと大きさ毎に箱に詰めた。
全ての実を摘み終えると葉や蔓をむしった。久々に見た紫色の毛布は、赤黒く染まりきっている。
この時点で中身が絶命しているのは明らかだった。
一体、いつ頃命が絶えたのか、少なくとも花が咲いていた頃にはまだ生きていたが。

そんな事を考えながら、毛布を縛っている縄を切った。