話題:今日見た夢


山の中に伸びる道をひたすら車で登って行くと、その先には巨大な木造建築の、例えて云うなら千と千尋に出てくるような湯屋を更に増築したような屋敷があった。
車から降りると女性が何処からともなく現れ、案内されるがままに中に入った。

中はとても清潔で純和風な内装だったが、造りは異様だった。
室内にも関わらずVの字に掛けられた階段のような橋、
ロフトのような造りのスペースがある幾つもの部屋、
繋がり方の可笑しな部屋、
明らかに人が入れない小さな部屋、
開けた襖の先が切り立った断崖だったりと枚挙に暇がなく、何となくウィンチェスター邸の和製版のような印象を受けた。

いつの間にか案内人と逸れて屋敷の中を彷徨って居ると、外廊下に出ていた。
廊下は崖に面していて下が見えない。
竦む足のまま手摺り伝いに先を進む事にした。

下を見ないようにしていたが、視界の端に見える断崖の先は霧の所為か真っ白だ。時折、吹き付ける風に身体を押される度に足が止まってしまう。
たっぷりと時間を掛けつつ中程まで進んだ時だろうか、身を預けていた手摺りが突然途切れた。
壊れたとかではなく、敢えて作られなかったであろう其処から身体が擦り抜けると、思考が追いつかないまま空に放り出された。
殆ど垂直の斜面を転がり落ちる。
岩肌に肉が抉られてズタズタになっていくのが分かった。恐怖の所為か痛みはない。
そして、大きく突き出た岩に身体が叩き付けられると、全身を砕かれて死んだ。



ふと気付くと先程の屋敷の中に居た。
最初と同じようにV字の橋を渡り、納戸を抜けて居間に入ると、ロフトのようになっているスペースから女の子が手招きしているのが見えた。

呼ばれるまま女の子の元まで行くと、こっちにおいでと言われ掛けられた梯子を登る。
いつの間にか着ていた着物の所為で梯子を登るのに苦労したが、登り切ると女の子がニコニコしながら此方を見ていた。
その後ろには修験者のような着物を着た坊主頭の男が跪いていて、何とも異様な光景だった。

その人は?女の子にそう訊ねると、
神様。と一言返された。

此処にはね、神様が棲んでいるんだよ。
お屋敷は入ってきた神様が簡単に帰ってしまわないように造ってあるの。

そう云われ再び男に目をむけると、男が顔を上げる。
その顔は誰かに似ていたが、終ぞ思い出す事は出来なかった。






今思えば、神様と云われた男は竹中直人を更にゴツくしたような感じだった。