話題:今日見た夢



夕暮れに染まる空を光の筋が横切っていった。


『あれは彗星ですか?』


そう教師に訊ねると、彼は『そうだよ』と答えてくれた。


『丁度、此処の位置が軌道になっているらしくてね、何年かに一度は見れるんだよ。僕が見るのは今回で三回目だね』


教室で飼っている魚に餌をやりながら彼は笑う。

その声に耳を傾けながらも光を追って、窓から暮れつつある空を見上げたが光の筋は瞬く間に見えなくなり、遠くにある山の向こうへと消えてしまった。


『また何年かすれば見れるさ』


残念そうにしていると教師はそう云った。



けれど、あの彗星は二度と見れなくなった。

あれから暫くして空全体が響くような轟音が響いた後、程無くしてテレビやラジオが一斉にある事を告げた。

あの彗星が地上に衝突し、人類がかつて経験した事のない未曾有の災害になったと。

これにより複数の国が一瞬で消滅し、直撃を免れた周辺の国も衝撃で起きた津波により押し流され、詳しくはまだ分からないが壊滅的な状況らしい。

テレビ画面には宇宙ステーションから撮られたであろう地球の姿があった。
その姿は大きく抉れていて、綺麗な丸みを帯びた見慣れた姿を失っている。

更に会見を始めた某国の大統領によれば、彗星が衝突した衝撃で地球の自転が変わってしまった可能性が高いという。
それにより、これからどのような影響が出るかは分からないが、人類は覚悟を決めなければならないだろうとの事だった。


『これから人類はどうなるんですか?』


窓から外の景色を眺めながら、いつの間にか淹れていたコーヒーを啜る教師に訊ねる。


『まぁ、なるようになるだけだよ』


のんびりとした口調で彼はそう云った。


彼につられるようにして窓の外に目をやると、暮れていた空が青さを取り戻していた。