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やさしさは凶器なりけり五月闇


万緑のクリームソーダ飲み干しつ


一緒に歩いてくれるなら素敵な喫茶店に連れていってあげるよ



私の好きな五月が終わってしまった

この世には五月が終わらないと出来ない仕事というものがあって、でもどたばたしてるうちに五月が終わったからできてしまった。
遅番といえど日付が変わってから帰るのしにたくなるからあんまりやめよう

優しい人がいて、その人が何か言いたそうな顔をしていて、聞けば私のする作業を手伝ってくれると言う。必要がないから断ったら、
「どう見ても苦戦してる感じがするんで」
と言われてしまって私の心はちょっと砕けました。ばりっと欠ける音がきこえたー。

別に自分では普通にしてるつもりだったんだけど他人からはそう見えているのかと思うとやや悲しかったです。あなたの優しさがこんな風に作用するとは。

「疲れた」

月灯りすら浴びたくない。

やさしさは凶器なりけり五月闇



先日、谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」を初めて読んだ。


帯に載せられた本文が格好良くて手に取る。「くらがり」というものについてひたすら語りこんでいる随筆。
テーマはひとつだけどそこにこめられたフェチズムがすさまじい。
味噌汁がこんなに艶かしいものだとは知らなかった。
かと思えば、

〈豊艶な顔から一切の血の気を奪ったのだ。私は、蘭燈のゆらめく蔭で若い女があの鬼火のような青い唇の間からときどき黒漆色の歯を光らせてほゝ笑んでいるさまを思うと、それ以上の白い顔を考えることが出来ない。〉

こんな一節にぞくりと背筋が凍ってしまう。ホラーだよね。昔の女性が塗っていた青い口紅のことを書いているのだけど、恐ろしくもこの上なく美しい。

〈あの、紙のように薄い乳房の附いた、板のような平べったい胸、その胸よりも一層小さくくびれている腹、何の凹凸もない、真っ直ぐな背筋と腰と臀の線、……(略)……そして私はあれを見ると、人形の心棒を思い出すのである。〉

お風呂とかで他人の身体を見るとたまにこういう気持ちになる。だから、何となくこの感覚はわかる気がする。
たぶんここで述べられている身体たちは私の想像よりもいっそう細いのだろうけど、現在に於ても、すらりとして、あまりにもすらりとしすぎていて、かえってどこか不思議な印象を受ける身体というものはある。

〈人はあの冷たく滑かなものを口内にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深味が添わるように思う。〉

羊羹!甘い闇!
といえば有栖川有栖「暗い宿」の中にアリスが暗い部屋のなかで羊羹をほおばる場面がある。



〈羊羹を熟視したことなどなかったが、間近に観察すると、その黒っぽい塊はさながら凍った闇のようだった。/二つに割り、片方に串を刺して──甘い闇を飲み込む。胃の中でそれは黒い光を放つのでは、と思えた。〉

こんな風に書かれていたりする。

また江國香織『きらきらひかる』にも次のような形容が登場する。



〈春の夜はあたたかくてやわらかで、羊羹のような闇だ、と僕は思った。〉


だからどうしたという話なのだけど、やっと揃ったな!という感じがしたので(勝手に)。

偶々うちにも羊羹があったので「陰翳礼賛」の読後にいただきました。
羊羹って刃物で切った断面のほうがより暗く、より光を放っている。


〈まあどういう工合になるか、試しに電燈を消してみることだ。〉

この末文が帯に引用されていたのです。
どきどきしない?

本を閉じてそのまま灯りを消しました。
そこにあったものが何か知りたければ、同じように読んで消してみることだ。


夜に書くのも読むのも考えるのも思い出すのも愛しているけど、手紙と日記だけは朝に書くのがいいように思う。



「現実に於て」「現実を嗤う」をずっと聴いて書いた。

〈このロマンスはすこぶる芳醇でありながら現実的なのである〉

(「現実を嗤う」和訳より)

つまりは羊羹なんだよ。





本の感想

本の話がしたい!


別にね、帰り道に全身灰色の男が立っていようがそんなことはいいんですよ。
ありえない場所に街灯らしきものが点いていたり、いつも何もない場所に謎の光が見えたり、訃報を聞く前にその人の似顔絵を見つめていたり、そんな遠きにあることはかまわないんです。

どうしても原因のわからないことが発生していて困り果てている。
よう××のせいとしか思えない!

私は妖精派〜

どうにもならないとき、どうしようもないときって人間ほんとに笑ってしまうらしい。

謎だらけの日常は捨て去って、早く本の話がしたいのに!



かわいい(こまる)

ドライ ドライ アリス

歌集名のもじり。



また最近視力がどんどん落ちている。
綺麗な色の目薬も私を助けてくれない。

有栖川有栖作品をいくつか再読して、感じたことを記録しておく。


『壁掛け男の謎』

「恋人」がどうしても読みたくなった。
とても良い。

似たテイストの話として灰原薬『回游の森』の一番最初の話を思い出す。

舞台が森という点でも共通しているし。
どちらの語り部にとっても少女の存在を現実ではなく記憶(夢想)の中に求めていることが重要なのだろう。

取り返しのつかないことと、叶わないことと、永遠は似ている。
だからこんな話が生まれるのかもしれない。どれも実際は、とても離れた位置に点在しているのだろうけど。

他の作品では「震度四の秘密」が短いながらも良かったと思う。

『臨床犯罪学者 火村英生の推理 46番目の密室』

何かもっとしっくりくるシリーズ名が欲しいね しっくりくる事件も欲しい

物語の終盤、犯人がある秘密を抱えていることが判明するのだけどその秘密がいったいどんなものかというのは最後まで明かされることがなくて、そういうところがこの作品を好きになった理由だったなあと読み返して思い出した。精緻な論理と美しい余韻の隙間に歪んだ狂気が垣間見えていて、そういうところが好き。

『朱色の研究』
シリーズの中でこの作品が一番好き。あまり同意を得られないけど。
動機も個人的にはあり、というか人を殺める人間の心なんて本来そういう次元にあってもおかしくないのでは。
夕焼けって視覚感知における一種の異常事態で、あてられ続けるとやがて警告が眼から脳まで伝わって神経を病むんだよ、
って説明されても信じてしまいそうな説得力を持っている。満月の明かりも同じく。
信憑性を感じてしまうほど訳のわからない強さは神性にも近く、それが『朱色の研究』における夕焼けなのだけど、この作品には人間の心が彼岸と此岸のはざまで翻弄されていく様子が全編にわたって描かれている。
「探偵は巫女」論が披露されたのもこの物語のなかでのことだけど、夕焼けのようなよく解らない大いなる何かに引き寄せられたり、揺り動かされたり、そういう不安定さがミステリの持つ魅力とよく似ているし、合っている。
夕焼けと謎は似ているのだ。

謎のまとめになりましたね。うまく言えないことばかりよ。

一番最後のアリスの台詞がものすごく好き。


『高原のフーダニット』

オノコロはちょっとまだ許せていない……それはさておき「ミステリ夢十夜」を何故か幾度と無く読み返してしまう。短さのせいもあるのだろうが。
本格ミステリかどうかと聞かれると戸惑うがショートショートとしてはまとまっていると思う。『壁掛け男の謎』を読んで思ったことだが有栖川有栖の掌編は落語のつくりに近いのかもしれない。
落ちはあるが、不条理な結末を迎える作品が多いのも気になる。まあ「夢」と冠しているし、本家の夢十夜も不気味な雰囲気に包まれているしそんなものか。
第六夜に謎の艶っぽさを覚えてしまうのは私だけだろうか。でも十夜の中でも異質の話ではあると思う。それと今回読み返してみて、六夜のラストシーンはデッドエンドなのかもしれないとも考えた。確率は低いが、そうだとしてもおかしくはない。

〈謎が解けるのは、どんな時にも快感である。〉

どんな時にも、つまり……と考えを巡らしてしまうのは深読みが過ぎるのだろう。

また全然違う十の物語で違う十夜を見せて欲しい。

それにしても「有栖川有栖」でなければもっと大変なことになっていた、というか許されなかったのでは。発表時。この本。

『怪しい店』

「ショーウインドウを砕く」ってここ最近のシリーズ短編のなかでもわりと良い出来なのでは。と思って。さっぱりしてるのも好印象。緊迫感としては「古の魔物」の雰囲気がいいんですが。
逆に予測だけで謎を終わらせてしまうあれはどうなのかなーと思った。事件じゃないからいんだけどね。

『暗い宿』

姉妹作ならこちらのほうが好み。
今回は「ホテル・ラフレシア」だけしか読み返していないけど記憶していたよりも凄惨な結末で気持ちが沈んだ。
有栖川作品ではたまに、いったいどうして? という暗闇に突き落とされることがある。どうしてここまで? というくらいの。
「ホテル・ラフレシア」でもそうなのだけど、あまりに突き落とされた闇が暗くて登場人物たちすら身動きがとれず終わってしまう場合がある。(顕著なのは「絶叫城」とか)そんなふうに挟み込まれる不条理も、個人的には好きである。戸惑いはするけど。


『ダリの繭』
私はこの表紙が好きなんですけどね。

〈生きててもつまらないと思って。〉

この言葉がここ数日、私の頭を離れない。
ふとしたときに心の中で呟いてみれば、それが一番しっくりくるような心地がする。

生きていたいけど、生死の願望とはまた違うところにひとつの願望が存在している。
死にたいと同義では無い「生きていたくない」がちらちらと燻っている。
いっそ誰かに首を絞められたら目が覚めるんじゃないかなと冗談半分に考える。生死と関係のない場所にある感情だからこそ、全く別の痛みが襲えば気が付くような風にも思える。
彼女の傷跡も、そんな気分転換のようなものだったのかもしれない。違うか。




・おまけ・

『有栖の乱読』
ずいぶん久しぶりに目を通した。
エッセイとしても面白いのだが、

〈14歳のころ、私は嘔吐したかった。〉
〈血を流しながらでも、エラリー、神を消去(デリート)しろ。〉

このように、痺れる文章があちこちにひしめいているすごい本。
やっぱりこの頃の有栖川せんせーが最強なんだよなあ。くさいけどかっこいんだ。


『ニューウエイヴ・ミステリ読本』


〈……私の性格なのか、「つまらない」と言われたら、一言だけ言いたいんですよ、「俺の本をもう読むな」と。〉

(有栖川有栖インタヴューより)

インタヴューと書いてるのでインタヴューと表記しました。どうでもいいってか。
とんがってるよね……ロマンチストだけどリアリストだよ。

麻耶雄嵩に対するインタヴューがあまりに攻撃的でそちらのほうが気になる。




日記をつけるのを止めたらとたんに夢の景色が鮮やかになって夢から覚めにくくなる。





先日、私は二十四歳になった。






本の感想

心不在五月


こころごがつにあらず


父が帰ってきている
明日にはまた出ていってしまうけど

私の父はこんな田舎で突然聖書を引用して話を始めたり(クリスチャンではない)
少女漫画のイケメンと全く同じ台詞をさらりと言ってのけるような人です
私にも母にも彼の全貌はよくわかっていません

父のことは好きだけど何を話せばいいのかわからなくなる
何も話さなくても私はいいんだけど父はそう思っていないような気がして

選書センスは抜群です



心が落ち着かない
歌集で五月の歌を探してひいてみる

〈ばらのとげ泡立つ五月 マジシャンの胸のうちでは鳩もくちづけ〉

なんか泡坂妻夫を思い出すの
(語感では?)
ちなみに泡坂氏も五月生まれらしい





五月に出たうた
「キスでおこして」の
〈好きな気持ちを動かすのは哲学でも数学でもないみたい〉
という部分がなぜかわからないけどすごく好き



たそがれのおわり

神々の黄昏

ってとてもハートをつかむ言葉だと思いませんかるるっるー

魔探偵ロキの新刊が出ていてしかも完結していると知って衝撃を受ける午後
終わってるだと!?

そんなわけで木下さくら『魔探偵ロキ RAGNAROK 〜新世界の神々〜』

〈夢っていうのは呪いと同じだ〉


終わってた……

なつかしいでしょ、魔ロキ!
世代がわかるね!
思えば魔ロキと出逢ったのは小学生のころですよ。××年も前ですね!
小学生のとき友人が「ラグナロク」のほうを貸してくれたんですがラグナロクは続編のため当時は話の意味がよくわかっていませんでした。せやろな。
でも絵はきれいだなぁ好き みたいな
話がわからないなりにラグナロク四巻のナルカミくんのシーンではあばばってなったり しておりました。

高校になって最初の無印シリーズを集めて読み、ようやくラグナロクで何がどうなってたのか何となくつかめました

私のなかでロキの物語はラグナロクのあのラストシーンで終わっていて、もう二度と読めないんだろうなと思っていたら記憶が薄れはじめるころに突然新章がスタートすると知ってたまげました。今!?

でも「新世界の神々」篇ってね、結構絵も変わってしまっているし話も漠然とした描写が多くて、今までのロキとはまた違う雰囲気なんですよね。ロキマニア向けのロキ、のような。

最終巻を購入したのでこの機に「ラグナロク」から「新世界の神々」まで読み返してみました(無印から読み返す元気はなかった)。
というより最終回を読んだらまた最初から読みたくなったんだ。

全部読み直してからあらためて最終回を読んだ結果どうなったかというと
なぜか私は闇野くんの表情を見ながら泣いてました(ちょ

いや、鳴神くんのところからだいぶやばかったんやで
でも闇野くんに持っていかれてしまったよナルカミくん

ロキをずっと読んできた身としては
すごーく切ないんだけど
この終わりを見ることが出来て良かったなと思った

また以前と同じように皆と暮らしていく終わり、人間になって記憶も消えてまた一から始まる終わり、どちらも好きだったけど。
どちらでもない今回の終わりかたは、ひとつの物語がきちんと閉じられたんだなって実感が一番あった。

もうついていけんかも、ラグナロクのあれはあれでハッピーエンドやったしあの終わりで良かったやんと思っていたんだけど、
なんか最終回にきて僕たちの木下さくらが戻ってきたって感じだった。どんなんやねん!

ロキシリーズって、最終回の近くにそれぞれ必ず「お別れ」が挟まれるんです。
シリーズが三つあるからまゆらちゃんは三回ロキとお別れしてることになるのですが、毎回切ないのねそれが……。
そもそもラグナロクと冠してるだけあってロキワールドは終末の物語なんですよね。
終わってしまう切なさと、新たなはじまりの予感、がこれまでのシリーズどちらの最終回にも描かれていて、今回もその切なくてでも優しいさよならを継承していたのが本当に良かったな〜と
胸が痛くなるこの感じ、懐かしいなーってなったから木下さくらが帰ってきた!ってなったのかな。


結論から言うと今シリーズをもって、ロキをはじめとする神様たちはみんな消えてしまいます。
無印とラグナロクでは消えたようで消えなかったけど、今回ばかりは本当みたい。
鳴神くんが最後に「じゃあなロキ」って爽やかに消えていくのなんか……なんかね……もうね……そうか君はロキにお別れを言うんだね……みたいなね……というかお別れの場面があって良かったね……前はいきなり消滅したもんね……と感慨深いものがあって
そのあとにヤミノくんですよ!あう!

初期からずーーーっと報われなかったウルドさんも今回のシリーズで救われて良かったね
「…………いい女だ」っていい台詞だしこんなこと言うロキさんはやっぱり邪神だ

ヘムだけちょっと可哀想だったかもね。

木下さんけっこうどのシリーズでも(今回も)話をぶん投げて終わるところがあるんだけど今シリーズ読み返していたら、無印やラグナロクで投げた匙がちょこちょこ回収されていました。

残された課題が無くなってしまったし、そりゃ神様たちも消えてしまうよね。

今シリーズ通して読むとヴァールちゃんがめっぽう可愛いことに気がつきました。
彼女が最後に果たしにきた「約束」はまゆらとロキが交わしたあの約束だろうし、もしかして戻ってきたのかなぁ、って考えたけど、どうなんでしょう。
でもやっぱり最後の頁の言葉を読むと、ああそういうことなんだろうな、って思うのだけど。


でもこれでまたひとつの時代が終わってしまったね……さみしいね……

もうすこしゆっくり描いて欲しかった面もあるけど、六巻もかけて物語の終わりを追いかけられたのはある意味幸せなんだと思います。
同時に、魔探偵ロキは物語としてとても幸福なシリーズだったと思う。

おつかれさまです。

また魔探偵(韻ふんでません)ロキについては書きたいことがある!
書く!そのうち!



「GATES OF HEAVEN」と迷ったけどこちら。






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