血にまみれた幻を見せたのは、僅な罪の意識と良心



幾つ命を奪ったのだろうか。
気付いたら両の手では表せない数の人間を殺めていた。
命を奪う事は特に好きではない。ただ、大切な人を目の前で奪われた記憶が私の手を赤く染めさせる。

ある日の事だ。

右目に違和感を覚えた私は目を覆う眼帯を外し、虚ろになっている眼窩を眺めた。すると小さな青白い手が無数に蠢いている。
それらは血にまみれ、空を苦しそうに掻いていた。
ああ…そう云えば、私が命を奪った彼らも今際の際にこの手の様にもがいていたっけ。

死ぬ事を分かっているのに、救いを求めていたあの手を思い出した。