写真:わたしの家の前の道。冬は林をひんやりと白くし、シルエットも冬のうつくしさに変わるのです。林のなかには手作りのログハウスがどっしりとたっていて、週末には遠くから来た人びとの笑い声が、林のなかから聞こえてきます。そして、林の前の外灯の下では、時に猫たちの会合がおこなわれ、夏には昆虫採集を目的とした人でにぎわいます。


自然

朝と夜を何度かさかのぼった晩のこと。シャリシャリと足もとの凍った雪を鳴らし夜道を歩いていたら、林のとなりにポツンとたつ外灯の下に、なにやら太いしっぽをもった動物がいたのです。それはうず高くなった雪壁を上ろうとしていました。よく見るとそれはキツネでした。わたしは突然のことに、足を止めてじっと見ていましたが、とてもハンサムなキツネだったように思います。うつくしかったです。


わたしの生まれ育った街はとても田舎で、野生の動物たちもたくさんいるのです。見たことがあるのは、キツネ、タヌキ、ウサギ、シカ、サル。わたしはまだはっきりと見たことがないのだけれど、よく見かけられているクマ。イノシシはどうだったかしら、忘れてしまいました。うわさではとなりのとなりの小さな山にはいるそうです。

年々、人里にくり出す動物たちが増え続け、田畑を荒らしているのだそう。わたしがこの街で暮らしている頃は、なにも考えずに夜道を歩くことができたのですけれど、今では夜道を歩くのも、危なくなってしまいました。もちろん、襲ってくることがなければ、危険ではないのだけれど。


ある人は言いました。
「昔は人間が人間らしくあったから、動物たちも人里にはおりてくることはなかった。しかし、今では人間が人間らしくなくなり、動物的になりつつあるから、動物たちはそのうすくなった境界線をこえて、人里におりてくるようになった。」

わたしは罠をしかけて捕まえたり、銃声を鳴りひびかせて山に追い返したり、そんなことはあまり好まないので、そんなことは自然が豊かで、人間が豊かで、そうあればそんなことも少なくなり、たいていのことは豊かなになるのではないかと思いました。それもぼんやりと。


わたしのちょっとした考えごとと、思うこと。小さな頭のなかから乱暴にちぎりだした、そのはしくれ。


それだけ。