まだ微睡むような新しい街、ふて腐れたように白む空、見向きもせずに照らす街灯。そんな景色に、そっとよろしく、と呟きました。それがこの街での始まり。


一人暮らし

三月十一日から、一人暮らしが始まりました。思っていたよりも、夜空の星は心許なくも、ちらちらと瞬いているし、目映い朝日はほんの少し憂鬱を連れてきたけれど、窓の側に出来る日溜まりに、コロンと丸まって瞼を閉じれば、そんな憂鬱も愛しく思えてくるのです。


そうそう、初めての一人暮らしの食事は、蜂蜜をたっぷりとかけた、シンプルなホットケーキでした。実にわたしらしい!けれど、まずはパスタやオムライスのレパートリーを増やしてゆきたいですね。


よく部屋の前に、真っ黒で艶々とした羽のカラスや灰色の帽子に白のワンピースを纏ったような模様のハトが遊びに来ます。可愛らしいので、よく見つめています。


引っ越してからと言うもの、毎日出掛けては、とりあえず、洋服を買っています。

金色のパンプス、キャラメル色の短いブーツ、生成り色のストライプシャツ、手触りの良くて軽いパンツ、ブラックチョコレートのような色をした、ボタンが付いているカーディガン、アシンメトリーなミリタリーコート…etc.

次の土日には、スーツを買いに行く予定です。きっと恐ろしく似合わないことでしょう。


ちっとも美味しくない門出とやらに、真っ赤な舌を見せ、クルリと背を向け、振り返らずに颯爽と歩き出しましょう。