名画座で特集組んでた+移動して見たので、一気に観てきましたよー。
ネタバレするかもしれないのでやっぱり追記で。
「雲の向こう 約束の場所」
男の子二人と女の子による話なのかなあと思ったら、しれっと架空歴史SFが入ってくるんですね。背景の描写が丁寧すぎて現実と変わらないから、よくある風景に騙される上にSFとの境界がめちゃくちゃフラット。でもそれにひっかかりがないんだよなあ。「あ、なるほど」と私はすんなり飲み込めたけど、他の人はどうなんだろう。その敷居の低さがまたいいんだけど。
SFとしての設定も好きだなあ。世界が見る夢を見ているって、ほとんどファンタジーじゃないですか。そこへ来て南北分断された日本という固い部分と、高校生としてのありふれた日常の柔らかい部分とのアンバランスさがぐっとくる。飛行機のデザインも独特で好き。あれ本当に飛べる設計なんだろうか。ただ孤独を感じるだけの世界であれが飛んでいたら、希望を見るよなあ。
目覚めた時、大事なものを置いてきてしまった喪失感の大きさ。それを悲しいと泣ける姿が綺麗に見える。
気持ちは通じきっていないのかもしれないけど、そうして流せる涙があることで微かに繋がっている距離感がいい。あと飛行機が飛んでいる時の空気感な。
「秒速5センチメートル」
ある男の子と女の子の出会いから別れまでを三話にわたって。小学生にしては大人びた会話を…。これは前にも見たことがあったので多少の懐かしさを込めて観ていたんですが、やっぱり面白いなあ。
一話目の中学生になった二人の間に横たわる地理的な距離感と、時間的な距離感の攻め方。雪あるある。電車のアナウンスや電光掲示板の表示が憎いよね。自分の幼さと、無力さを更に追い詰めるような時間の過ぎ方。手紙が飛んでいく所はそんな所に入れてんじゃないよ…と思いもしたけど、それもまた彼の幼さなのかなとも。会いたいだけで物事は全て上手くいってくれるわけじゃない。そしてやっと会えたけども、とそこで初めて感じた心の距離感が残酷ですな。
二話目はわー宇宙関係だー。新海さんは好きなんだろうか。高校生になって背負う影の多さったらないな。と思うと、あの時彼以上に距離を感じていたのは女の子の方だったのかも。彼はそれでも忘れられなかった、ということか。同級生の女の子視点で内情がわかってくるような。
三話目になって自覚ってところかなあ。ここでの音楽に合わせたカットの連続が映画館で観るとまた綺麗なんですよねー。空気を描いているような感じ。
線路が二人の距離、かつてそれを縮めるために使った電車が今度は断つために走る、のか?でも断つというよりは再出発の意味合いが強いような気もする。
綺麗でした。
「言の葉の庭」
冒頭の池が実写かよと思ったんですが、どうなの。CGかな?池に垂れ下がる木の枝とか綺麗すぎるだろ…あと雨が水たまりに落ちた時の王冠も動きが丁寧すぎるだろ…大画面で見てたら綺麗な映像の暴力でした。いえ、褒めてます。のっけから綺麗すぎる背景や小物にぶん殴られた感じ。
だから、じゃないとは思うんだけど、これは前作二つとはちょっと違う感じがする。まあ主人公二人の年齢が高めっていうのもあるんだけど、前二つに感じていた距離感がここでは随分近いんだなあと思いました。主人公二人然り、その周りに対しても。だからちょっと「大人」になった作品というか。前二つは少年時代の作品のような若さというか危うさというか恥ずかしさというか。階段の先にこれが出来ましたよ、って印象でした。
とかく映像が綺麗でなあ…新宿御苑ってこんなに綺麗でしたっけと思いました。雨の日に見れて嬉しかった。
「君の名は。」
で、更に先の階段で出来ましたよ、な。ただし好きなものを突っ込んでみたいな(笑)事前情報で上の三作見てると更に面白いと聞いていたのですが、これがそうかなーあれがそうかなーと考えを巡らすのもまた楽しかったです。宇宙好きだもんなー電車好きだなー雨好きだなーこの古典の先生の名前と声優さんってもしかしてさーとか。
久しぶりにアニメ観て泣いた。切なくてもあるし、ひたむきな二人の一生懸命な姿にもあるし。最初の日常が穏やかすぎたから、中盤での変調にはそういうことかー!!!それであの冒頭!ってなる。そんで最後の方でまた冒頭を思い出して涙出るんですよ。
入れ替わることで自分が見えて来る。その過程で周りが見えてくる。そういう成長も経つつSFも入れつつ恋愛も入れつつ火薬も入れつつ、切なさも入れつつ。
「雲の〜」に感じていた距離感をここでも感じました。ただこっちは更に遠い。繋がっているかもしれないけれど、それがわからない。わからないことがもどかしい。どうしてわからないのか。
焦りや悲しみにも似たそれが最後にすれ違う瞬間でまた涙出るんですよ。
これ良かったー。場面の一つ一つが強烈で(背景が綺麗だというのもあるけど)、どこにも無駄がない。それが全部ちょうどいい速度でやってくるから、どれも大切な場面になる。
全体的に光の描写が変態的に細かいなと思いました。どういう目で見ればそういうのが描けるんだろうと。
極彩色の夢というか、見えない色を見て描いて誇張してってやるから、新宿で観た帰り道もいつもと違って見えました。
というわけで、「君の名は。」は新宿で観るとにやりと出来ます。