( 昨日視点 )
今日は朝の7時からバイトだった(その為5時に起床)。朝日は低血圧の者にとって非常に厳しい。それを元にあたしは奴を「サイコキラー」と呼んでいる。まあ、結論的に何が言いたいかと言うと、今、とてつもなく怠いのだ。
「ねぇ、これどう?」
可愛い彼女がインテリ系の彼氏に問い掛ける。バイト先はパンカフェでよくカップルがお茶しに来る為、こういう光景は珍しくない。が、正直妬ましい。チクショウ。
「あ、いいんじゃない?」
よくも悪くもありません、と言う表情(つまり適当)に彼氏が頷けば彼女サンは喜びながらパンをトレーに置く。この光景を何回か繰り返した後、そのカップルはパンを買って出て行った。
(ああ、羨ましいなあ…普通の男女のカップルがこんなにも羨ましい…)
不意に思った言葉。
別に同性の恋人を持っている事に不満もない。勿論、後ろめたい事も(あくまで性別に関して)。じゃあ何がそんなに、と問われれば矢張り周りの目。女と女が一緒に居れば友達なのに、女と男が一緒に居れば恋人と感じ取れる(あたしも例外ではなく)ソレが羨ましい。
(やっぱ恋人ですって背中に書いてなくとも思っちゃうのは女と男=恋愛関係って固定してるからだろうなあ…あたしの脳内で)
だけどただそれだけが原因で思った訳ではない。全てを悟るには気が引けるものの、ゆくゆくは知らなければならないのだ。しかしその時は今ではない。
だから
放課後、駅の裏にある公園のベンチに座ってあたし達は夢中でアイスを貪っていた。果たしてこの口周りがベトベトになるだけの行為を青春と呼べるだろうか。
「てか、お前のタイプとか知らないんだけど」
「タイプー?…ンー…特にないなあ…」
「ふーん」
折角の二人きり(いつもは四人で帰る)だと言う事もあり、彼女とあまり話した事のない(寧ろ初めて)の会話に挑戦したところ、
「あ…、でもキュンとしたら好きになるかな」
衝撃的な返答が返ってきた。
「ふー…ん?」
「うん?」
「え、はは、なに、キュンと…ときめいたらってこと?」
「ンー…惚れやすい、のかな。ホイホイついてっちゃいそう」
いや、待て。
なんだその厨二病的な…あれか、「お前はオレが捕まえといてやるぜスイーツハニー(笑)(笑)」的なあれか。それを言って欲しいのか。そんな安売りな言葉でいいのか。いつからそんな安い女…いやいや、これは一つのロマンかもしれん。案ずるな鴨川。思考フル回転中のあたしから"アナタの言葉を待っていますよ"オーラを醸し出している彼女の方には到底向ける筈もなく、
「……ふ、ふーん…」
食べ尽くしたアイスの底を眺め続けるしかなかった。
よくよく考えれば自分はレズビアンではない。ビアンモドキ。所謂エセ同性愛者。
「深刻だ」
『何が?』
「前、異性ムリとか言ってたけどあれウソ。イケる」
『へぇ、いい事じゃん』
何がきっかけかと聞かれれば前に彼女と語り合った同性愛の話題。不意に自分自身のそう言う面を見直した(丸一日掛かった)結果が自分は同性愛者ではなく両性愛者、つまりバイ。何たること。
『…因みにその事だけで電話してきたの?』
「うん」
『それだけ?』
「うん」
『…マジかよ』
マジだ。
呆れた様に喋る彼女にはもはや分かるまいこの深刻さ。ショックとコラボしてやがる。
自覚するのは早いけど受け入れるには