スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

家路につく



日付が変わって一昨日の出来事。
大学から帰って鍋でも作るかと準備をしていた時、ひとつの着信が。母親か宅急便かと思いディスプレイを覗けば見慣れない電話番号。だけど私はすぐに分かった。そう、シノさんだ。

ことが起きたのは一昨日の夕方、日が傾き始めた頃だった。私はある電話番号を押してしまった。電話帳の整理も兼ねて、だったがほぼ故意に近い間違い。いまだ残しておいた彼女の電話番号、メールドレス。気がついた時にはすでに通話中の文字と数字の5。慌てて切ったけど多分残ってると思いながらも残ってないと繰り返しながら時が流れ冒頭に戻る。

「もしも、し」
「あー先ほどお電話いただいた者ですが」
「あ、はい」
「…間違い電話ですか?」
「あ、いえ、あの、シノ、さん」
「……え、なんで」
「いや、あの」
「間違い電話?」
「そ、だけど」
「あ、そう。じゃあ」
「待って!」

淡々と喋る彼女は私の知らない彼女だった。

「……なに」
「あの、あの時は、別れ話になった時、すごく酷いこと言ったよね。…本当にごめん。」
「……」
「私あれからすごく後悔してて本当最低だなって、もう本当…ごめんなさい」
「…ん、いいよ。もう気にしてないから」
「……本当に?」
「うん、…久しぶりだね。元気にしてた?」

ここから私の知る彼女になり、気遣う声や笑い方、話し方があの時のままの彼女で本当に、本当に嬉しかった。私は別れ際に彼女をとても傷付ける言葉を吐き散らしていったので、それがひどく心残りだった。未練だと思っていた感情が実は後悔だったということに気付けたのも和解したお陰だ。

それから彼女が電車に乗るまでの7分と少しの間他愛のない話や世間話をして電話は終わった。多分これから先彼女と逢うことも電話が掛かってくることも掛けることもないだろう。私はそっと電話帳から彼女の宛先を消し、心のなかに彼女との思い出を大切に仕舞い込んだ。

私は彼女と付き合えて幸せだった。

本当に、幸せだったんだ。
前の記事へ 次の記事へ