ちょい腐向けです。
前の文章とはまた別話です。前の続きはまた後日。
静かな放課後。窓からは春のうららかな日差しが差し込む。
委員会の当番で一人図書室で本の整理を行っていた長次は伸びをする。
こんな日はほとんどの生徒は外で活発に活動するため、図書室の利用客は少ない。今日はゆっくり読書に耽られると、喜々として(ただし、無表情)本棚に向かった時。
「長次!借りてた本、返しにきたぞ!」
「…」
ばん、と大きな音で戸を開け、大声を出しながら文次郎が図書室に入ってくる。
毎回毎回図書館の禁忌を全く気にしたふりもなくドカドカ入ってくるこの男に、さすがの図書委員長も縄標を投げるのを諦めた。
「いやー、一晩で五冊も読むの大変だったぜ!」
どさ、と返却台に本を置く。
「…溜めておくお前が悪い…」
「まあ、そう言うな」
はぁ、とため息をつき、文次郎が本を置いた返却台の前に座り、返却処理にとりかかるために文次郎の貸出カードを手に取る。
「…」
なんだ、これは。
「…文次郎…」
「あ?どうした?」
静かな怒りを発しながら名前を呼ぶも、当の本人は次の借りる本を探すべく図書室を暢気にうろついている。
「…返却期限…」
ずい、と文次郎の目の前に貸出カードをつきつける。
「期限?…あぁ、三ヶ月前だな」
「…三ヶ月、も、前だ」
「まあまあ、いいじゃねえかよ、こう、ちゃんと返却に来てるんだから」
「…良くない。規則は守れ」
「わかったよ、次は守るよ!」
「…もう何百回も聞いた」「だー!もう、うるさいな、もういいだろ!」
全く反省の色を見せない文次郎に呆れ返る。
「…罰則も考えなくてはいけないな」
「はぁ?なんでだよ!?」「反省の色がないからだ」「だから次は…」
「だからそれは何百回も聞いた」
「ぐぅ…」
カエルを轢き殺したような声を出して文次郎は押し黙ってしまった。
珍しく俯き伏せ目がちな文次郎に、少しやり過ぎたかと長次が思った矢先、がばと顔を上げ、ニィ、と笑い。
「…っ!」
文次郎の腕が長次の首に回り、唇が長次の唇にやわらかく触れる。
「…!?」
「へへ、延滞料」
これで許してと言わんばかりにニカ、と歯を見せ笑う。
…この男、全く反省していない。
「…足りない…」
「へ?」
とぼけた文次郎の後頭部をがしりと押さえ付け、今度は長次から唇を重ねる。
ただし、文次郎からのそれとは異なり、舌を差し込み、濃厚なものをする。
「んっ…ちょ…ぅ…んんっ」
逃げようとする文次郎の頭をさらに強く押さえ付け、深く舌を絡ませる。
舌だけではなく、歯列から上顎も口内を隈なく犯すと、次第に文次郎の抵抗も弱まる。
「ん…ぅ…ん」
腰にきたのか、本棚を背にズルズルとしゃがみこみ、長次も追うように腰を屈める。
ただ長次の舌に翻弄されている文次郎にはもう先程までの元気はない。
どれくらいそうしていたか、ようやっと長次が文次郎から離れる。
「ぷはっ!!…はぁっ、はっ…」
やっと解放され、顔を真っ赤にしながら酸素を吸い込む。
「はっ…ぁ…ちょ…じ、なに…」
「…これで調度」
「は?」
「…五冊分の…延滞料…」
「はぁ!?」
呆けてる文次郎の唇を親指で撫で、今度は長次がニィと笑う番。
してやられた…!
状況がやっと読み込めた文次郎が、怒りと羞恥と悔しさで顔を真っ赤にする。
「こんにちは〜本を返しに来ました〜」
静かな図書室に暢気な下級生の声が響く。
長次は腰を上げ、返却台に向かおうとする。
ちょ、俺はこのままかよ…
まだ腰に力が入らない文次郎はその立ち上がる長次の袖をくぃと引っ張り、真っ赤なまま長次にささやく。
「…長次…」
「?」
「今夜空けとけ。今日借りる本の分お延滞料、先に払ってやるよ」
「・・・っぷ」
なんでこいつは素直に人のことを誘えないのか。
でもそんな所が、可愛いな、と思ってしまう自分はもう末期なのかもしれないな。
などと自嘲気味に考える。
「楽しみにしている…」
手短に囁き、下級生の待つ返却台に向かう。
今夜はどうやって鳴かしてやろうか、などと考えていると顔が緩んでしまうのを必死で押さえていることは、たぶん誰もわからない。
了