スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

AB型コンプレックス

年の元旦はめずらしく本当の休日だった。せっかくだから去年できなかったことがしたくて、元日から初詣に出掛けることにした。神様のところから離れると、甘酒の香りが人混みのほうへと私をいざなった。私は甘酒が飲めないのだが、不思議と今年は酒粕の香りが魅力的に感じられた。
帰り道、同行してくれた友人が雰囲気のあるこじんまりとした神社に私を案内してくれた。人知れず緑の中にそびえる神様の社を、友人は好きだと言った。秘密を分けてもらうことは悪いことばかりではないらしい。
引いたおみくじによると、今年はAB型の人と親しくするとよいという。母に見せたらきっとやめておけと言われるだろうなと思った。私はAB型の人がわりと好きなのだが母はそうでもない。ちなみにそんな母の血液型はAB型だ。どうやら彼女はAB型の男性が苦手なようだ。なお、私が引いたおみくじは恋みくじである。
宗教と政治と血液型の話は公然とすべきものではないと知っているが、AB型のインパクトが強くて他の助言はあまり記憶にない。

調子が上がってきたのでもう一件行こうという軽いのりで遠くの神社へも行くことになった。行ったはよいが、大変な混み具合に私と友人は辟易した。結局参道にある屋台だけを冷やかして、近場で晩御飯を食べて返ることにした。罰は二人で受けるつもりだ。

昼間あきれるほど寝たのに帰りの車で私はもう眠たくなっていた。だから友人に送ってもらって、助手席で呑気に船を漕げたのは幸いなことだった。田舎の夜道は怖い。ふだん慣れきってしまっているから忘れがちになるが、田舎の夜は怖いのだ。進むことも立ち止まることも怖い。そこに何が存在しているのかを把握することさえも怖い。こわいね、と言いながらそっと目が冴えた。

家まで歩くときはいつも、池のとなりを通るようにしている。池は怖い。昼はぞっとするほど静かに佇んでいて、夜はブラックホールのように口を開けて待っている。私はここにむかし人が落ちたことも知っていて、池のほとりをぐるりと回れば墓地に着くことも知っている。けれどそこを通りたくなるのだ。通るたび夜の怖さを思い出して、駆け足で家に戻る。何度も学習しているし、これからもするのだと思う。

年が明けた夜に買っておいた装苑を読んだ。
一年ぶりの「音楽とファッションとエモーション」特集である。

昨年のほうが良かったと個人的には思うのだが(林檎さんの存在が大きい)今年もパンチが効いていて新年一冊目として背中をどんと押してくれる本だ。



年末に読んだ占いコーナーに、どきりとする年賀状が届くと書いていたのでポストを覗く私はいつになく緊張していた。
葉書はいずれも平和な内容だった。忘れた頃に届いた通知を見て携帯電話の画面を開くと、あけましておめでとう、の言葉の後に嬉しい言葉が続いていた。あたり。


前の記事へ 次の記事へ