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【ONE PIECE】お題/ゾロ/切甘

ウソップから花火を貰った記憶が蘇る―――






あの後、ゾロが腕を離してくれず、なかなか恥ずかしい事となってしまった。

涙の理由を尋ねられ、やっとまともにゾロの顔を見た時は、ぽかん
としたらしくない顔が瞳に映る。

思わず笑ってしまい、クルー達には涙は笑い涙で知られずに済んだのだけど――――


狙撃主だけ、には気づかれてしまったみたい。
姉の事はゾロだけにしか分からないと思っていたのに。


サニー号の縁に腰掛けてまた残っている線香花火の束を見つめる。

鮮やかに蘇る記憶


「う、また泣きそう…」

そう呟いた私の背後に
「姉さんの事、か?」

「…ウソップ」


口にしなきゃ良かったと後悔を顔に出した姿が下から見える。

「まぁ、そうなんだけど…別の事もあって」
「別の?」

よっ、と私の横へ登って座るウソップは
自分の思っていた事と違っていたから気になったみたいで。


「以前、雨の日にこうして花火に火を付けた事があったの。」

「雨の日?」
何故?といった顔で私の横顔を見つめる
線香花火の束が海の手前にはらり、と落ち

「…姉さんの命日で、姉さん花火好きだったから」
「…それを」

続けた言葉に疑う事なく、
「うん、見てたらしくて。ゾロ」

「…そっか」




ウソップから貰った花火、せめて何処かで見ていてくれたら、と願った
のに―――









「オイ」
「「わっ!」」


暗い雰囲気を漂わせていたのが見ていられなくて
いつもよりトーンの低い声が後ろから。



「「…ゾロ」」
「もういいだろう、その話は」

修行後のいつもの格好でタオルを拭いながらぶっきらぼうに言い放つ。


「…気になっちまってな、ゾロ、悪い、借りた」


私の側を離れ言いながら去っていくウソップ。


「ウソップには悪いけど、つまらない花火、私の我儘で最後まで付き合わせちゃったね」
束の線香花火を袋に仕舞う私に

「それは違うだろう」

ほら、と上にいる私に手を伸ばし下に降りた私の手を強く握って。

「姉さんの為だったんだろ?」


「ん―――そうだけどさ、雨の日は良くなかったよね」

去ったウソップの方角を見て
「ウソップにも悪い事したなぁ」

と呟いたら




「―――俺は」

ふっ、といつもの空気と共に強く 抱き締められた



「構わねェけどな、いつだってお前なら」

「…ありがとう」








―――――ほら、太陽がいつものように照らす

姉の事はいつだって切り離せない、けれど。


「姉さんばっかじゃなくて、俺達の事忘れてんなよ」


抱き締めた腕が静かに離れて髪に触れて、

クルー達の熱い視線とからかう声は今は忘れて。






今だけは――――――
この優しい温度を感じていたい。

















【最後まで付き合わせてしまったね】
2013*02*12
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