遠く、果てしない夢を見て



目が覚めても きっと

側に居なくても
視線の先に――――――


「起きたか」


安堵の声なのかそれともやっと、起きてくれたかという印象だったのか

ぼやけてて分からない。


でもいつもの姿がじわじわと視界がはっきりしてくる。



あ〜…そうだ、誕生日のケーキのレシピ探ししてたんだっけ。

ゾロは「無理すんな」と言うけれど。

何せ二日前に左手を負傷。船医には
「利き手じゃないけど、絶対無理はしちゃ駄目」

なんてゾロの目の前で言われてしまったものだから。

…絶対引き下がらないけど。



「あ、今何時?」
慌ただしく目の前に積んだ本と書きかけの紙とペンを片付ける手に
一回り大きな手が覆う

「…もうすぐ日付変わる。」

そう言って静かに触れた左腕が
熱くて

「じゃあ、今からずっとハッピーバースディの歌歌おうかな」
「…それはやめろ」


あまりにも嫌がる素振りかなかったから

「んーじゃあ、」


窓から映る月を
静かな海を見て

ゾロを見て

「何をしたらいい?」




私、こんなんだから
せめてゾロが生まれたこの日を
祝いたくて。
いつも貰ってばかり。



「今が在ればそれでいいんだけどな、俺は」




大きく心を乱す。
これ以上を望まないゾロは

「野望は上限ないくらいに上を目指してるのにね」



「お前が居ればそれでいい。」









そんな日付が変わる頃の静かなサニー号の上でのやりとり。










2013*11*10 一日早いけど誕生日おめでとうゾロ!!