強い、強い風に吹かれて



「…悪くねェな」

「悪くないけど…」


思わず目を瞑りたくなるような所謂春一番というのを体験中な二人が
メリー号の縁に座って風に耐えている。


「…これ、意味あるのかな」

「それを言うなよ…」


思わずこぼれた一言にゾロがうんざりした顔で返す。



本当は嬉しい、幸せなんだけどね、
と内心思ってみる。
強いて言えば、春一番なのだから

主役が欲しいの。



「…こんだけ強い風なら花弁一枚連れてきてくんねェかな」

「ん?ゾロ何か言った?」


隣にいながらもこの風で呟くものだから分からない。

「お前に」

「なーにー?」


桜、見せてェんだけどな。




以前チョッパーから聞いた事があった。
桃色の可愛らしい花。
私はお目にかかった事がなく、とても興味があった。

いつかゾロと見てみたいな、と。



ふわり、桃色の花弁へ想いを乗せる
風任せだけど、色んな希望を乗せて――――






「あ」

ほのかに香った知らない匂いが
視界に揺れた花弁達が


私とゾロの表情を
ふわり、変えてくれる




「こ、これって…」
「あぁ、」


お互い求めていた花弁に夢中で表情が分からない

でも、見逃せない。

何処かで桜が満開なのだろうか、ふわりと幾つもの花弁が目の前を流れて水面に落ちる。




瞳の中まで桜色


「見れたな…」

「そうだね、初めて見た。」



こんな初めて、ふわふわ。

幸せだなぁ、と思えた。




「次は満開の桜の木を見ような」


その一言が私の心を春色に染めてくれる。





















2013*03*20
春が近付いてきましたね(*^^*)